元魔王様と従魔の成長 7
騎士団長や副団長を含む実力者達がジル一人にまるで相手にならず倒されてしまい、騎士団員達は驚愕していた。
ジルの実力を知らない者達はここまで一方的な試合展開を予想は出来無かっただろう。
「はいはい、怪我人はこっちに連れて来なさい。」
遠くでそう声を上げている女性がおり、その聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはグランキエーゼがいた。
訓練によって傷付いた者達を神聖魔法で回復させている。
「まさかこんなところで会うとはな。」
「あれ?ジルさんじゃない。貴方も怪我をしたの?」
神聖魔法を使いながらグランキエーゼが首を傾げている。
「我がそう簡単にすると思うか?怪我人はあっちの騎士達だ。」
「あらら、随分と派手にやってるわね。」
ジルが指差した場所に倒れている騎士団長達を見てグランキエーゼが呟く。
王国騎士団の騎士団長はそれなりに有名であり、グランキエーゼも知っていたので倒れているのに驚いていた。
「あの者達の治療も頼むぞ。」
「任せておいて、治療の為に呼ばれているんだから。」
「ギルドから声が掛かったのか?」
「そうよ、訓練で怪我人が大勢出るだろうからってね。」
治療であればポーションや光魔法でも行えるが、本職の神聖魔法には劣る。
どうせなら適性の高い神聖魔法で治療してもらった方が治りも早い。
「と言うかジルさんに改めてお礼を言いたかったのよ。この前は色々とありがとね。」
「その後司祭はどうなったんだ?」
「本国の大司祭様から追放処分を受けて司祭の座は下ろされたわ。新しい司祭が派遣されてくるまでは私が代理を務める予定よ。」
ユテラは司祭の地位を剥奪されただけで無く、聖女グランキエーゼを殺害しようとした罪で犯罪奴隷になったらしい。
これを機会に王都の教会の暴利な治療費も改善されて民達に喜ばれていると言う。
今回ギルドから依頼があったのも値段改正がなされたからだ。
以前までの金額であればどれだけ取られるか分からなかったので、ギルドとしても非常に助かっていた。
「超級神聖魔法を使えるなら代わりは務められそうだな。」
「と言ってもパーフェクトヒールしか使えないけどね。せめてディスペルは早めに習得しないと司祭代理は務まらないわ。」
ディスペルとはエルフの里のハイエルフであるエルティアが使っていた呪いを消し去る神聖魔法だ。
「確かに呪いは外傷を治すパーフェクトヒールでは治せないからな。」
パーフェクトヒールとディスペルでは治せるものが違う。
なのでこの二つを扱える様になれば、大抵のものは治す事が出来る。
「だからディスペルの訓練も早速始めているわ。」
「魔導の真髄のスキルを与えたから、毎日詠唱していれば直ぐに扱える様になるだろう。」
魔法の習得を手助けするスキルをジルがグランキエーゼに与えた。
そのおかげでパーフェクトヒールも直ぐに習得する事が出来た。
ディスペルを扱える様になるのも近いだろう。
「本当にあのスキルは有り難かったわ。あの時は使える様になった喜びで言えなかったけど、貴方には借りが出来ちゃったわね。」
「代わりにエレノラの治療をしてもらったではないか。」
「あれは伯爵様の依頼でしょ?貴方個人の借りとは違うわ。」
どうやら魔導の真髄のスキルを与えてくれたジルに恩を感じており、何か返したいと考えている様だ。
「ならば神聖魔法を極めておけ。いずれ頼るかもしれん。」
「極めるって極級神聖魔法を使える様になれって事?中々無茶を言うわね。」
やっと超級神聖魔法を一つ使える様になったところなのだ。
それなのに更に難易度の高い魔法を習得するとなると、また暫く時間が掛かるだろう。
「無茶では無い。それだけの適性を持ってはいるのだろう?それに習得速度を上げるスキルも持っているのだから可能な事だ。」
「まあ、努力はするわよ。ちなみにその言い回しだと、極級神聖魔法を頼る予定があるのかしら?」
極級魔法とは全ての魔法に共通して破格の力を持った魔法である。
神聖魔法もそれは同じで、普通であれば使う機会が滅多に無い魔法だ。
それを使うとなるとグランキエーゼも少し警戒してしまう。
「それは分からんな。だが我は神聖魔法の適性を持っていないから、知り合いに使い手がいてくれると有り難いとは思っている。」
自分が使えない魔法なので使いたくなった時は他人に頼るしかない。
使える者が多くいればその分助かる。
「ホッコちゃんも適性は持っていたわよね?」
「使い手は多いに越した事は無いと言う事だ。極級神聖魔法は全て破格の力だからな。」
「そこに至れば私も戦う力を得られる訳だしね。」
グランキエーゼも早く習得したいとは思っていた。
極級神聖魔法は神聖魔法の中で唯一の攻撃的な魔法があったりする。
それを習得出来れば戦う術を持たないグランキエーゼも戦う力を手に出来る。
「戦う力が欲しかったのか?」
「この前の司祭みたいなのを実力行使で排除出来るじゃない?」
「そんな力で排除しようとするな。王都が大損害を受けるだろうが。」
物騒な事を口にするグランキエーゼを注意してから別れて、ホッコと騎士の戦いを見学する事にした。
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