【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

元魔王様と従魔の成長 6

　隙が出来たソートにジルが追撃を仕掛けようと思った瞬間に背後から団長が襲い掛かってきた。

「グランドスラッシュ！」

「フレイムエンチャント！」

　風切り音を鳴らしながら迫る大剣を火魔法で強化した銀月で受け止める。

熱気と衝撃が辺りに広がる。

大剣の重さもあるが騎士団長の力も凄まじい。

「団長と副団長を名乗るだけはあるか。」

　この二人だけは騎士団の中でも別格だと感じる。

逆に騎士団員達はそんな二人と平然とやり合っているジルに驚愕していた。

「いきなり二人にされるとは、さすがの実力だ。だが我々は簡単には倒されんぞ！初級重力魔法、ヘビー！」

　斬り結んでいる大剣を魔法で重くして押し込んでくる。

ジルも全身を魔装して受けているがかなりの重さに足が少しずつ地面に埋まっていく。

「中級風魔法、ウインドランス！」

　騎士団長がジルを動けなくさせているところにソートが風魔法の槍を放ってくる。

団長が足止め副団長が攻撃と良い連携をしてきた。

「これしきの重さ！」

「なんと！？」

　ジルが力任せに大剣を弾くと団長は驚いていた。

魔法で重くした大剣が弾かれるとは予想外だった様子だ。

そしてジルは風の槍を避ける為に大きくその場でジャンプする。

「逃がしません！」

　ソートが放った風の槍を真上にいるジルに向けて軌道を変える。

「魔法の軌道を操れるとは中々やるではないか。」

　ジルが火魔法で強化されている銀月で向かってくる風の槍を両断する。

そこで魔法の効果が切れる。

「チャンスです団長！」

「ああ！」

　二人が上空で身動きの取れないジルに手を向ける。

「上級風魔法、ストームブラスト！」

「上級土魔法、ロックキャノン！」

　荒れ狂う暴風と巨大な岩の塊が二人の手から放たれる。

さすがは騎士団の団長と副団長、上級魔法の詠唱破棄も習得している様だ。

　ジルは迫る魔法に対抗する為に銀月を鞘に仕舞って魔装する。

そして空中にいながら居合いの構えを取る。

「抜刀術・断界！」

　空中で放たれた居合いによって魔力の斬撃が二つの魔法を一瞬で両断し、その下にいる二人に迫る。

「きゃあ！？」

「中級土魔法、ストーンウォール！」

　ソートは魔装した剣を盾代わりにして防ぐが威力に押されて吹き飛ばされながら倒れた。

団長は咄嗟に石の壁を出して防御壁にするがそれすらもジルの斬撃が両断する。

「ぐっ！？」

　多少は威力を殺せたが斬撃を大剣で受けて後退させられる。

そして石の壁を出すのと斬撃を受けるのに意識を割かれた団長はジルの姿を見失ってしまった。

「ど、どこに！？」

「後ろだ。」

「かはっ！？」

　団長が見失った隙に背後に移動していたジルは無防備な背中を銀月で斬る。

「操剣！」

　団長が斬られて倒れると同時にソートが剣を飛ばしてきたが、ジルはそれを軽々と避ける。

「なっ！？」

「気絶していないのは気付いている。」

　ソートが斬撃を受けて飛ばされてから倒れたが気絶しているフリをしていたのは分かっていた。

それに気付いていたジルは奇襲を警戒していたので不覚を取ったりはしなかった。

「はぁはぁ、ここまで実力に開きがあるのですね。ですが騎士団長のしぶとさも相当ですよ。」

　ソートが言い終わると同時にジルの両足が掴まれる。

見るとジルに斬られた団長が這いつくばりながら足を掴んでいた。

「ほう、意識を刈り取れていなかったか。」

「…簡単に気絶する様では騎士団長は務まらんさ。」

　団長の方は手応えから意識を奪えたと思っていたが予想が外れていた。

それでもかなり苦しそうなので相当なダメージは負っているだろう。

「いきます、操剣！」

　ソートの周りに二つの剣が浮かび上がり、切先をジルへと向けながら放たれる。

「とっておきです！上級雷霆魔法、ソニック！」

　雷霆魔法による強化で両足が帯電する。

風魔法の派生である雷霆魔法にも適性があり、こちらも上級魔法の詠唱破棄を習得していた。

先に放った剣を追い越す程の速度でジルへ迫って斬り掛かってくる。

「中々タイムリーな魔法を使ってくれる。」

　ジルは魔装して向上した身体能力を活かしてソートの攻撃を全て回避しつつ反撃を与える。

ソニックは一瞬の速度を高める魔法なのでジルの攻撃を受ける頃には電気は霧散していた。

「…そ、そんな。」

　ソートはジルの攻撃を受けて悔しそうに地面に倒れる。

今度こそ意識を刈り取られた。

「悪いが少し早くなったくらいでは負けてやれんな。」

「ぐはっ！？」

　ソートの意識を刈り取った後に騎士団長にも銀月を振り下ろして今度こそ意識を刈り取る。

相手が全員意識を失ったのでジルの勝利となった。