元魔王様と愛弟子の訪問 10
レイアとテスラがいない間の出来事に関してを手短に共有した。
暫くは浮島でのんびり過ごすらしいので細かな補足や紹介は徐々に行う事にする。
「それでは次は私達の報告ですね。」
「パンデモニウムで別れた後に邪神教の拠点潰しをしていたんだったな?」
「そうです。レギオンハートに渡された情報通り大量にありましたよ。」
テスラがうんざりした様な表情で言う。
軽い気持ちで行った事だがこんなに時間が掛かったと言う事はその苦労も相当なものだったのだろう。
「ですが殆どが邪神教の下部組織の様な場所ばかりでした。大した実力者もおらず一方的に蹂躙する事が多かったですね。」
「だから強化薬や呪いの短剣までは辿り着けなかったんですよね。製造元も潰しておきたかったんですけど。」
出回っている強化薬や呪いの短剣は邪神教にとっても重要度の高い物なのだろう。
レギオンハートが調べた情報の場所には無かったらしい。
二人は悔しがっているが、そう簡単に見つかれば苦労はない。
「重要な施設の情報はそう簡単に出ないだろう。邪神教を弱体化させただけでも充分ではないか?」
「それです、弱体化に関しては大幅に出来たと思いますよ。基本的に下っ端ばかりでしたけど私もレイアも噂の黒フードとは戦いましたから。」
「ほう、接触出来たのか。」
黒フードは邪神教でも立場のある者達の筈だ。
厄介な実力者ばかりなので倒せたのならば非常に大きな功績である。
「私の方は魔物を多数従える女性です。テスラの方はエルフ族でしたね?」
「そうね、かなり強かったわ。」
魔物を従える女性の方とは魔の森で会っている。
高ランクの従魔を複数持っている様で厄介な相手だ。
「片方はエルフ族か。」
「どうかされましたか?」
エルフ族と聞いて考える素振りを見せるジルにレイアが首を傾げる。
「前にエルフの里を訪れた時に強力な呪いや魔物と出会ってどこから侵入したのか不思議だったのだ。邪神教ではないかと疑っていたのだが真実味を帯びてきたと思ってな。」
「そのエルフ族が手引きした可能性があると言う事ですか。」
エルフの里にはエルフの協力なくしては入れない。
ジルが入る時もエルロッドやエルミネルが同行して道を開いてくれたから入る事が出来たのだ。
「でも安心して下さい。そのエルフはしっかり仕留めておきました。」
「さすがだな。確かにそれは邪神教の弱体化となりそうだ。」
ジル達はその一件の犯人が邪神教だと断定出来ていないが、テスラの活躍によりエルフの里に危害が加わる可能性は消された。
「強化薬を使ってきたので少し焦りましたけどね。弓や魔法の威力が相当跳ね上がっていたので危なかったです。最後は私を巻き込む自爆までしてきましたよ。」
「よく勝てたな?」
強化薬は命を削る代わりに一時的に自身を大幅に強化する丸薬だ。
元々の実力が高い黒フードの者が服用したとしたらレイアやテスラでも手に負えない可能性すらありそうだ。
「ジル様からたっぷり吸っていたおかげです。後でまたお願いしますね?」
そう言ってテスラがウインクしてくる。
ジルから吸精して高まった力のおかげで勝てたらしい。
生前には及ばないもののレイアもテスラもトレンフルで出会った時よりは遥かに力を取り戻している。
「久々だから倒れるまで吸われそうだな。魔王酒を使うのならば構わないぞ。」
「ですよね~。」
残念そうにテスラが言うが魔王酒無しではジルの身が持たない。
頻度も多くなっているのでこれは妥協してもらわなければならない事なのだ。
「それでレイアの方はどうだった?」
「申し訳ありません。私の方は黒フードの排除までは力及ばず。」
「気にする事は無い。」
本当に申し訳無さそうに頭を下げてくるレイア。
しかし相手は高ランクの魔物を多数従えているので魔物で手一杯になっても仕方無い。
無事に帰ってきてくれただけでも良かった。
「ですが従魔は数十体は倒しましたので戦力は削った筈です。中にはSランクの魔物もいましたので。」
「それはかなり大変だっただろう。それだけの魔物を倒せただけでも充分だ。」
申し訳無さそうにしつつも相手の戦力は大幅に削っていた様だ。
邪神教は倒せなかったとしても充分過ぎる活躍である。
「ありがとうございます。レギオンハートの従魔に比べるとかなり劣っていましたが、それでも高ランクの魔物ばかりでしたから苦労しました。そして私の方は少しばかり情報も得る事が出来ました。」
「聞かせてもらおう。」
「黒フードの女性を殺すには至らなかったのですが、攻撃は与える事が出来ました。その時に多数の所持品をばら撒きまして、撤退に追い込んだ後に確保してきました。」
そう言って魔法道具の鞄からレイアが邪神教の女性が落とした物を取り出して並べた。
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