元魔王様と天使族の襲来 4.5

 時は少し遡り、見渡す限り森の中である魔の森の奥地の上空を移動する集団がいた。


「はぁ~、なんでこの僕がこんなところまで来ないといけないんだろうね〜。」


 そう文句を言うのは綺麗な翼を持ち絶世の美少年と言える者であった。

種族的に言えば天使族と言われる者だ。


「たかだか上級天使の一人と連絡が取れなくなったくらいでさ、僕を使ってまで調査するなんて大袈裟だよ。」


 自分よりも格下の身分の者の為に動かされている現状に天使族の少年は不満気な様子だ。


「バイセルとか言う街で貴族と交流を深めてお金集めだっけ?そんなせこい真似しなくても、協力的な人族の王に頼めば直ぐなのにね。そうは思わないかい?」


 共に飛んでいる天使族の者達に話し掛ける。


「「「「「ライエル様の仰る通りです。」」」」」


 周囲にいた天使族達が口々に同じ台詞を言う。

それを聞いてライエルと呼ばれた天使の少年は溜め息を吐く。


「君達中級天使や下級天使は相変わらず返答が機械的でつまらないね。そう考えると上級天使は話し相手くらいには必要なのかもしれないか。」


 飛びながらライエルが納得する様に言う。


「それにしてもは連絡もせずに何をしているのかな?もし殺されてたりすれば少しは面白い事になりそうなんだけどね。」


 人族と協力関係になってから色々と好き勝手に動いている天使もいるので、恨みを持っている者達は多いかもしれないが、種族的に強い天使族に喧嘩を売る様な輩は少ない。

それこそ敵対種族である魔族くらいだろう。

ちなみにだよだよ君と言うのは口癖からそう呼んでいる。


「ん?」


 かなり離れた場所で大きな魔力の動きを認識する。

誰かが魔法を使おうとしている様だ。


「かなり強力な魔法だね。こんな森の中で何をしているのかな?」


 ライエルがそう呟いた直後に轟音が辺りに響く。

轟音の原因は魔法によるものだ。

木々を押し除けて同じくらいの高さがある鋭い岩が、地面を埋め尽くす様に存在している。


「わーお、凄い威力だ。適性が無いから土は詳しく無いけど超級か極級かな?一体誰がやったのかな?」


 少しだけ興味を持ったライエルは魔法の発動場所に近付いていく。

消息を絶った上級天使の調査の為にバイセルの街に向かっていたのだが興味優先とする。


 同行する天使達もそれについて意見する事は無く、黙ってライエルの後ろを飛んで付いていく。

ライエルは自分達よりも遥かに格上の存在なので、付き従うのが当然の事なのだ。


「おや?おやおやおや?これはこれは偶然だね。」


 ライエルの表情が現場に近付くに連れて笑顔になっていく。


「臭う臭うよ、とーっても臭いね。が凄く感じられるよ。」


 鼻をピクピクと動かしてライエルが上機嫌に呟く。


「つまらない遠出かと思ったけど、これは楽しめそうだ。」


 ライエルは現場の上空に到着すると、地面にいる魔法を発動させたと思われる者達を見下ろしながら邪悪な笑みを浮かべた。

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