元魔王様と絶品魚料理 8
「しっかりとした受け答え、とても魔法道具とは思えませんね。」
「はい、人族と言われても違和感を感じません。」
「生きてるみたいだよね!」
ブリジットとサリーの言葉にルルネットが同意する様に頷いて言う。
こんなに円滑なやり取りが可能なゴーレムを三人は見た事が無い。
本当に生きているのではないかと思わせられる。
「魔石を核として動いているからな。魔法道具ではあるが生き物の様でもある。そう考えると魔法道具と呼ぶのは変か?」
メイドゴーレム達は造られた存在ではあるが、しっかりと自我を持っている。
魔法道具ではあるが道具と呼ぶのは少し違和感がある。
「よし、魔法生命体。これからはそう呼ぶ事にしよう。」
「「マスターの呼びたい様に呼んで下さい。」」
ジルの言葉にメイドゴーレム達も異論は無さそうだ。
「これは魔法道具の可能性を飛躍的に高める存在なのではないですか?一体どなたがお造りになられたのでしょう?」
ブリジットが興味深そうな視線を送りながら尋ねてくる。
メイドゴーレム達は魔王時代に造られたが、その技術は当時よりもずっと先、今でも追い付いていない。
だからこそシキによって封印項目に分けられていた。
「元
「そして元
ここにくる前に打ち合わせをしておいたのでそう言う事になっている。
「と言う事だ。ブリジット、悪いが詮索は無しだ。我の魔法同様他言無用で頼むぞ。」
ジルがブリジット達に打ち明けたのは、元々同じ精霊と契約していて人柄も分かっているし、信用出来ると言う事で既に魔法についても教えているからだ。
魔法生命体と言う存在が新たにバレても言いふらしたりはしないだろう。
そしてここに連れてきた理由は他にもある。
「分かりました、それではこの話しはここまでにしておきましょう。二人もいいですね?」
ルルネットとサリーに尋ねているが有無を言わさず従わせてくれるだろう。
魔法同様あの約束を違えるつもりはブリジットには無いのだ。
「まあ別にいいけど、何で突然連れてきたの?」
ルルネットが疑問に思って尋ねてくる。
それにはブリジットも同感と言った様子だ。
「せっかく貴族の屋敷に住んでいるからこの機会を利用しようと思ってな。」
「利用?」
「ここには本物のメイドがいるだろう?メイドの見た目はしているがそんな事を詳しく教える知識は無かったからな。」
これが連れてきた理由であった。
魔王時代に身の回りの作業を手伝わせる事はあったがメイドの仕事かと言われると違う。
せっかく本物のメイドがいるなら教えてもらうチャンスだ。
本人達もジルの役に立てる事を身に付けられるのであればとやる気だった。
「成る程ね。それならサリーに習うといいわ。私の専属メイドは優秀だからね。」
「助かる。」
「お嬢様…。」
ルルネットの言葉にサリーが口元に手を当てて感激している。
「お任せ下さい!お嬢様のご期待に応えてみせます!」
「頼んだわよ。」
主人の期待に応える様に自信満々にサリーが宣言する。
「他にも当家のメイドにご質問があれば自由にして下さって構いませんよ。」
「さすがはブリジットだ、話しが分かる。礼と言う訳では無いが訓練相手としては申し分無いから、やりたい時に言うといい。」
メイドゴーレム達の為にメイドを貸してくれるのであれば、お礼としてこちらも戦闘訓練くらい付き合わせてやれる。
「戦闘が出来るのですか!?」
「私は近接戦闘型機械人形ですから、訓練の相手はお任せ下さい。」
タイプBは本来の役割りである戦闘の手伝いなので自信満々な様子で言う。
「私は解析兼支援型機械人形ですが、多少の手合わせならば可能です。」
タイプCの本来の役割りでは無いが、実力的には高ランク冒険者と遜色ないので充分役に立てるだろう。
「それなら早速やりましょうよ!」
ルルネットが戦いたそうな視線をメイドゴーレム達に向けて言う。
新しい玩具を買ってもらった子供の様な無邪気な表情だ。
「「サリー様、メイドのご教授をお願いします。」」
「あれぇ?」
ルルネットを華麗にスルーしたメイドゴーレム達がサリーに頭を下げている。
二人にとってはジルの役に立てる事を学ぶのが最優先なのだ。
サリーが戸惑っているとブリジットが頷いてくれる。
「そ、それでは屋敷に向かいましょうか。」
「「はい。マスター、失礼します。」」
サリーの後に続いてメイドゴーレム達が屋敷に向かった。
ルルネットの戦意を向ける先が消える。
せっかく新たな強者達を見つけたのにお預けをくらってしまい少し悲しそうだ。
「ルルネット、私が代わりに相手をしてあげますから元気を出して下さい。」
「えー、お姉様と?いつでも出来るのに?」
ルルネットはブリジットの言葉に不満気な様子だ。
せっかくなら新しい強者と戦ってみたかった。
同じトレンフルに住んでいるブリジットであればいつでも訓練の機会があるので今でなくてもと思ったのだろう。
「いいから付いてきなさい。」
ブリジットは笑顔のままルルネットを引き連れて訓練場へ向かった。
ジル達は屋敷に戻ったが直ぐ後にルルネットの絶叫 が屋敷まで響いてくる事になる。
ルルネットの漏らした不満気な言葉がブリジットの気に障ったのか、いつもより厳しい訓練となっているのかもしれない。
訓練が終わって戻ってきたルルネットはいつもより 遥かに疲れており、産まれたての子鹿の様に足をプルプルとさせているのだった。
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