元魔王様と強制睡眠 8
スリープシープは無事に討伐出来たので村での昏睡事件は解決した。
「回収はどうするんだ?」
倒れたスリープシープを見ながら尋ねる。
目に見えない程の毛を吸い込んだだけで遅延で睡眠効果があると分かると不用意に近付きたくはない。
「ジル君の収納スキルって触れなくてもいける?」
「ある程度近付けばな。」
「だったら鼻と口を手で覆って息を止めながらなら大丈夫だよ。」
トゥーリに言われた通りにして収納を試みる。
初めてなので少し不安だったが無事に無限倉庫の中に収納する事が出来た。
「回収出来たぞ。」
「ご苦労様、それは私が依頼とは別料金で買い取らせてもらうね。金額には期待していいよ。」
トゥーリは状態の良いスリープシープが手に入ってご満悦だ。
「あら、さすがはトゥーリちゃん太っ腹ね。」
「そうなのか?」
「こう言う護衛依頼って元々の依頼料が高い分、道中で手に入れた素材や道具類の所有権が一応依頼主にもあるのよ。だから完全に冒険者の物って訳でも無いし、権力のある強欲な依頼主とかだと無理矢理奪われる事もあって揉めるのよね。」
なのでトゥーリの様な依頼主の方が珍しいと言う。
ラブリートも長く冒険者をやってきているのでそう言った経験があるのだろう。
「当然の事ながら私はそんな不毛な争いはしないよ。しっかりと買い取った上で君達が欲しいのであれば、護衛のお礼として必要数分渡すくらいはするつもりだしね。」
トゥーリからすれば護衛をしてくれる冒険者の機嫌を損ねて護衛に支障をきたす方が問題だと考えている。
それにジルやラブリートとそんなくだらない事で揉めたくは無い。
「そう聞くと良い依頼主に感じるな。」
「こんなに譲歩してくれる貴族の方が珍しいわよ?」
「うんうん、実はこれまでの君との取り引き関係も随分と君に有利な感じで進めてきてはいるんだからね。ジル君はもう少し私に感謝しても罰は当たらないと思うよ。」
ジルとの取り引きはトゥーリにも利があるがジルの得た物の方が大きい。
基本的にそうなる様にトゥーリが取り引きしてくれていた。
それも優秀な冒険者であるジルとの縁を繋ぐ為だ。
「とにかく討伐は終わったし村人達を起こしていこうか。」
「ちょっと待て。」
「どうしたんだい?」
ポーションで村人を起こそうと歩き出していたトゥーリをジルが止める。
「あの魔物見えるか?」
「魔物?ああ、スライムか。それがどうしたんだい?」
ジルの指差す方には一匹のスライムがいる。
そんなに害は無く村人でも倒せるくらい弱いのでわざわざ倒す必要も無い魔物だ。
「動いていないのは寝ているからだと思わないか?」
「スリープシープに眠らされたって事かしら?そうだとしてそれがどうかしたの?」
「村の周囲に同じ様なスライムが見える。」
そう言われて見回してみると確かにかなりの広範囲に動かないスライムが散っている。
スリープシープに眠らされている可能性はある。
「こんなに広範囲にスリープシープは動くのか?」
「っ!?まさか複数体いるって事かい?」
「確かに眠っている魔物が多いわね。さっきのスリープシープを探している時も随分と村から離れた場所にも動かないスライムがいた気がするわ。」
全員で手分けをしてスリープシープを探している時に眠っている魔物も多く見つけていた。
しかし移動速度が遅いスリープシープは、一体でそんなに広範囲を眠らせる事は出来無い。
「あまり気にしていなかったけど、村に来る道中にも動かない不自然なスライムが何体かいた気がするね。これはジル君の予想が当たっていそうだね。」
記憶を遡ると眠って倒れていた人以外にも動かない魔物がいた気がする。
そう考えるとかなりの広範囲に眠らされている者がいる事になる。
「探すか?」
「勿論だよ。スリープシープは幾らいても困らないからね。」
ジルの提案に当然だと言わんばかりにトゥーリが頷く。
珍しい魔物なので沢山確保出来るに越した事は無い。
それから手分けして村の周辺だけで無く広範囲を探し回る。
眠っている魔物を追えば、それがスリープシープの通り道になるので辿っていく。
するとトゥーリとラブリートがそれぞれスリープシープを一体ずつ発見した。
村からそれなりに離れていたので先程は見つけられなかった様だ。
「まさか更に二体もいたなんて。これは予想外の収入だよ。」
ジルが追加で倒したスリープシープを見てトゥーリが満面の笑みだ。
まさか王都に向かう道中でこんな拾い物があるとは思ってもいなかった。
「報酬には期待しているぞ。」
「任せておいてよ。充分な数が確保出来たから殿下に献上しても自分達で使う分は余裕で確保出来そうだ。」
「スリープシープのベッド楽しみだわ。」
三人はそれぞれスリープシープのおかげで大変上機嫌であった。
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