元魔王様と災厄の対策 4
四人で食事をして時間を潰していると、ギルドの中に冒険者が増えてきた。
「そろそろ時間なので会議室に移動してもらっても大丈夫ですか?」
わざわざ酒場にミラが呼びにきてくれた。
ギルド側としても戦いの鍵を握る様な人物ばかりなので、この四人を外して会議は始められない。
「それじゃあ移動しましょうか。」
ラブリートに言われてジル達も席を立つ。
他にも会議参加者と思われる冒険者が大勢ギルド内を移動し始める。
「ラブリートさんは後から入る事になってますから少し待機して下さいね。」
「そうだったわね。皆は先に行っててちょうだい。」
「分かった。」
ミラに案内されて三人は会議室へと向かう。
「こちらです。」
「ほう、中々多いな。」
「こいつら全員が高ランク冒険者って事か。よくこんなに集まったな。」
「数人は強そう。」
他の街からやってきた冒険者が多いので知らない者ばかりだ。
それでも実力者ばかりであり、スタンピードでは良い戦力になってくれそうだ。
「お好きな席にどうぞ。」
ミラに促されて空いている同じ場所に三人で座る。
「始まるまでまだ時間掛かるのか?」
「そうですね、もう少しすれば全員集まると思いますよ。私は冒険者の案内をしてくるので失礼しますね。」
他の冒険者を呼びにいく為にミラが会議室から出ていく。
「ジル。」
「ああ、気付いている。随分と嫌われている様だな。」
先程のランク至上主義者であるギルメンテも席に付いており、敵意を向けられているのを感じる。
ラブリートとの食事を断られたのはジル達のせいだとでも思っていそうだ。
「ランク止めてなけりゃ並んでるとは思うけどな。」
実力的に言えば、ここの三人は間違い無くAランククラスだ。
意図的にランクを止めていなければギルメンテに目を付けられる事も無かっただろう。
「目に見える物が全てなんだろうよ、放っておけ。」
これ以上気にしても意味が無いので放っておくのが一番だ。
「おや?あんたらも参加してたのかい?久しぶりだね。」
「君達の実力を考えれば当然かもしれないけどね。」
そう言ってジル達に二人組の冒険者が話し掛けてくる。
セダンの街で活動しているAランクパーティー、鋼鉄のアイネとアダンである。
「鋼鉄か。特殊個体の討伐時以来だな。」
前に魔の森で出現したAランクの特殊個体を倒した時に現場で遭遇した。
格上相手に二人で長時間耐えていたので、その実力はジルも認めている。
「あの時は本当に助かったよ。あんたらが来てくれなかったら、あたし達は死んでたかもしれないからね。」
鋼鉄の二人は知らぬ間に毒に侵されており、ジルとアレンが駆け付けていなければ、その毒で倒れていたかもしれなかった。
「気にする必要は無いぜ。俺達も稼がせてもらったからな。」
寧ろ二人に倒されていたら困ってしまうのでアレンとしては有り難かった。
「実質Sランクの討伐だからね。報酬が多いのも当然だよ。」
「おかげで懐事情が一気に潤ったからな。Sランク様々だぜ。」
その時のお金のおかげで孤児院を救う事も出来た。
今ではあの時の困窮が嘘の様にお腹一杯食べさせてやれているらしい。
それだけSランクの魔物の稼ぎは良い。
「そのSランクに直近酷い目に遭わされていたみたいだね。」
「そうだったね、大丈夫だったのかい?」
アイネが思い出した様にアレンの身体を心配している。
「ああ、今はもう殆ど回復している。実戦も問題ねえ。」
「僕達も他のAランク特殊個体と戦ったけど、相当な被害がでたよ。それを一人で倒しちゃうんだから、アレン君もかなり規格外だよね。」
鋼鉄の二人もSランククラスの魔物との戦闘に参加していたので、アレンが手痛い目に合った事はギルド員から聞いていた。
呪いの武具の力があるとは言え、単独撃破は凄まじい功績である。
「大半は武器のおかげってのもあるけどな。」
「優秀な武器なのかもしれないけど、生かすも殺すも使い手次第さ。」
「良い事言ってくれるじゃねえか。」
特にアレンが使っているのは危険な武器だ。
使い方によっては使用者も死ぬ可能性があるので、アレンは相当上手く扱えている部類だろう。
「それだけあんたらには期待してるし頼りにしてるって事だよ。それでも無理だけはしないでほしいけどね。」
同じセダンの街で暮らす冒険者として、知り合いが死んだと言う情報はなるべく耳にしたくない。
無茶な行動はあまりしてほしくは無いのである。
「無理をせずに突破出来る程、今回の戦いはあまくないかもしれないぞ?」
「これ程の戦力がいてもかい?」
会議室の中を見回しながら尋ねる。
セダンの街以外からも集められた高ランク冒険者達が大勢集合している。
これだけの戦力が集まる機会なんて滅多に無いだろう。
「本番のスタンピードではSランククラスがどれ程出てくるか分からないからな。気を引き締めておいた方がいいだろう。」
鋼鉄の二人は少し前に大勢のAランク冒険者で挑んだ特殊個体との戦いを思い出す。
ランクが一つ違うだけで討伐するのにかなりの被害を出してしまった。
それだけSランクと言うのは規格外なのだ。
そんな魔物がスタンピードにも出てくる可能性は大いにある。
鋼鉄の二人もその事を理解して気持ちが引き締まったのか、表情が真剣なものとなっていた。
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