魔法生命体達と浮島防衛戦 10

 浮島へと攻めてきた天使達を殲滅し終わった皇真達は浮島の中へと集まっていた。


「全員無事な様で何よりだ。」


 人的被害は一切無く、天使達との戦いの被害と言えば浮島を包む結界が多少損傷したのとタイプCの連動外装が破壊された事くらいだろう。

結界の方はジルが展開し直せば済む話しだし、連動外装も修復機能があるので時間経過で直るので実質被害無しだ。


「浮島もジル様の結界のおかげで助かったのです。」


 結界があったから耐えられたが、破壊されていたら中に侵入されて被害は拡大していただろう。

展開し続けると微量ではあるが常に魔力消費が発生する結界魔法ではあるが、こう言った非常時の保険になるので怠る事は出来無いのだ。


「天使達ですが聖痕持ちは全て排除済みです。眠って落下した天使達も大半は落下死、かろうじて生き残っていた天使も全て止めを刺してあります。」


「戦場が魔の森の上なので残骸は魔物が勝手に処理してくれるでしょう。」


「久しぶりに魔法を思い切り使えて大満足でした!」


 地上に降りて天使達の確認をしてきてくれたメイドゴーレム達が報告してくれる。

一人だけ戦いに関する報告だったが、全員が無事に切り抜けられて何よりだ。


「浮島を守ってくれて助かったぞ。また我が留守にしていて同じ様な事があれば頼む。」


「「お任せ下さい。」」


「その時も魔法使いまくります!」


 頼もしい返事にジルも安心である。

さすがは前世の自分を殺す為に作ったメイドゴーレム達だ。


「ジル様達の方も無事で良かったのです。」


「実は少し油断してな。我一人なら危うかった。」


 聖痕の力はこの世界に無い力だったので、知らない内に病気に掛けられているとは思わなかった。

事前に分かっていれば対策のしようもあったが、こればかりは油断していたと言われても仕方無い。


「と言う事はその新しいメイドのおかげなのです?」


 ジルの横に立っているメイドゴーレムを見てシキが尋ねる。


「ああ、紹介しよう。最後のメイドゴーレムであるタイプAだ。」


「同じ機械人形達以外は初めましてだな。俺は重武装決戦型機械人形のタイプAだ。今回は不甲斐ないマスターを俺の力で守ってやったって訳だ。」


 タイプAが手を腰に当てて得意気に語る。

実際充分な活躍をしてくれた。

タイプAだけは今の自分で御せるか不安だったので出すか迷っていたのだが、言う通りに動いてくれて助かった。


「タイプA、不敬ですよ。」


「タイプA、訂正しなさい。」


 タイプAの発言にタイプBとタイプCが苦言を呈する。

しかし言われたタイプAは溜め息吐き改める気は無さそうだ。


「俺は事実を言ってんだよ。相変わらず頭の固い連中だ。そう思わないかタイプD?」


 メイドゴーレムの中で比較的自分に感覚が近いと思っているタイプDに尋ねる。


「それには同感ですけどマスターを悪く言うのは駄目です!」


「けっ、マスター大好き人形共め。」


 タイプAが鬱陶しそうな視線を向けながら言う。

と言っても口ではそう言っているタイプAがとても仲間想いな性格をしている事を皆は知っている。

だからこそジルの事もしっかり助けてくれた。


「ジル様、あのメイドは大丈夫なのです?」


 他のメイドゴーレム達と違い過ぎるタイプAにシキが尋ねてくる。


「あれで平常運転だ。タイプBとタイプCの様に本気で喧嘩している訳でも無い。それに強さの面なら文句無しだぞ。」


「口が悪いから怖いと思ったのですけど、それなら頼りになりそうなのです。」


 荒々しい口調から誤解されやすいだろうとは思っていたが、付き合っていく内にタイプAの人柄は分かっていくと思うので問題無いだろう。


「初めましてなの!」


 ホッコがタイプAに近付いて挨拶している。


「ん?なんだこの狐娘は?」


「ホッコはホッコなの!」


「ホッコは我の従魔だ。」


「ほう、マスターに従魔がいるのか。これから俺も浮島で暮らすから宜しくな。」


「宜しくなの!」


 タイプAはホッコがジルの従魔と聞いて興味を持った様で、差し出された手を握って握手に応じている。

ホッコも新しいメイドゴーレムであるタイプAに興味津々である。


「マスターマスター、さらっと言ってますけどタイプAも浮島で暮らすって本当ですか?」


 肩をちょんちょんと突きながらタイプDが尋ねてくる。

まだ言っていなかったので全員今初めて聞いた。


「ああ、事実だぞ。お前達が暮らしているのにまさか仕舞わないだろうなと脅されてな。」


「はい!こんな危険な兵器を野放しにするなんて断固反対です!」


 ジルが返答するとタイプDがビシッと手を上げて言う。

口には出していないがお前が言うなと誰もが思っていた。


「んだと?」


 その発言を聞いたタイプAは手の関節をパキポキと鳴らしながらタイプDに迫る。


「ぼ、暴力反対です!」


「タイプDの言いたい事も分かるがタイプAは意外と思慮深い一面もある。無闇矢鱈に武器は使わないだろう。」


 タイプAから凄まれて自分の背中に逃げ隠れているタイプDにジルが言う。


「そう言う事だ。どこかの魔法馬鹿と一緒にするな。」


「な、何ですって!その喧嘩買いましょう!」


 タイプDが魔杖を構えながら背中から出てくる。

魔法の力さえあればタイプAにだって負けはしない。


「タイプD、既に天使族との戦いは終わった。杖の使用は禁止する。」


「そ、そんな~。」


 ジルに没収された杖を見ながらタイプDがガックリと肩を落とす。

緊急事態だから認めたのであって終われば当然元に戻る。

普段使いするには危険過ぎる。


「って事で改めて宜しく頼むぜ。」


 タイプDに興味を無くしたタイプAが浮島の面々を見回して言う。

頼りになる味方が浮島の住人に加わった。

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