元魔王様と王城襲撃 8
「ジル君、黒いフードとローブってもしかして。」
トゥーリも思い当たった様だ。
スタンピードの時に黒いフードの集団が介入してきた件については報告済みであり、それは当然セダンの街の領主であるトゥーリの下にも話しが通っている。
「思い浮かんでいる奴らと同じだと思うぞ。」
「あー、ジルちゃんがスタンピードの時に会った怪しい連中ね?」
直接会った訳では無いがラブリートも覚えていた様だ。
正体を探る為にトゥーリも独自で聞き込みを行ったらしいので、高ランク冒険者であるラブリートにも何か知らないかと尋ねたのかもしれない。
「そう言えばセダン伯爵領からその者達の報告も入っていたな。」
国を脅かす程の災厄なので、スタンピードの件はトゥーリから王都へと報告を入れている。
その際に一緒に一応報告されていた。
「はい、先日起こったスタンピードを人為的に引き起こしたのではないかと言う疑いが掛かっています。」
「災厄を人為的にか。」
「にわかには信じられませんね。」
大規模な魔物の暴走なんて人の手でコントロール出来るとは思えない。
「報告を受けた私も最初は半信半疑でしたが、それがジル君と聞けば疑いはありません。」
普通の冒険者なら聞き流したかもしれない。
しかしジルがそんな嘘を付いてもメリットは無く、色々とやり取りをしている内にジルと言う一人の人をトゥーリは信用している。
「ジルがそう思う根拠は何なんだ?」
「黒フードの関係者と思われる者を捕縛した。その者がスタンピードを人為的に引き起こしたと思わせる様な事を言っていたのだ。」
白衣を着た男と魔の森の研究施設の様な場所で話した時に言っていた。
そして黒フード達と同じくジルの事をイレギュラーと言っていたので、関連性はあると考えられる。
「関係者を捕えただと!?大手柄ではないか!」
「盛り上がっているところ悪いがもう死んでいるぞ。おそらく口封じだろうな。」
「そ、そうか。」
エトワールは興奮して立ち上がっていたが残念そうに座り直す。
「申し訳ありません。見張りもいたのですが相当な実力者だったらしく。」
「あの集団は凄まじい実力を持っていると報告を受けているから仕方あるまい。王家に仕えている優秀な諜報部隊でさえ、手を焼いているのだからな。」
国王が深い溜め息を吐きながら言う。
自慢の諜報部隊でも相手を調べられないなんて滅多に無い事だった。
「それでも何かしらの情報は掴んでいるのか?」
ジルが尋ねるとエトワールが国王の方を見る。
話してもいいのかと判断を委ねている様だ。
「ここまで話しているのだ、教えても構わないだろう。諜報部隊の報告では強化薬の出所を探っていた際に服用した関係者から三回、黒フードと取り引きをしたと言う情報を聞き出している。」
「その内の一回は接敵もしている。だが簡単に逃げられてしまったらしい。諜報部隊は実力で言えばAランク冒険者に匹敵する実力者ばかりなのだがな。」
エトワールが悔しそうに呟く。
元凶が分かっても手掛かりが殆ど掴めず、歯痒い思いをしているのだ。
「接敵した者の特徴は教えてもらえるか?」
「一人は珍しい陣形魔法の使い手だった。とにかく動きが素早く、攻撃は擦りもしなかったそうだ。」
「もう一人は
「成る程な、有益な情報だった。」
陣形魔法の男については知っていたがエルフかダークエルフの仲間がいると言う新しい情報が得られた。
「そちらも影に付いて知っている事を話してくれないか?」
「ええ、ジル君から提供された情報しかありませんが。」
トゥーリがスタンピードの時に黒フードと戦闘したジルの報告を王族達に伝える。
複数の魔法や魔法生命体については端折って報告しているので、真実とは多少異なる部分もある。
「凄腕のテイマーに逃走に長けた者か。」
「付け加えておくとスタンピードとは別の件でも黒フードと戦闘をしている。その時は他者の身体に乗り移る魔族もいたな。」
ナキナが住んでいた鬼人族の里での話しだ。
鬼人族の者に乗り移って里に忍び込んでいた魔族がいたのだ。
ナキナの手によって倒されたが、その魂までは滅ぼせていないだろう。
「そんな者まで…。」
「随分と厄介な集団の様だな。」
強化薬の流出は国に危険を齎すので絶対に止めなければならない。
しかし厄介な者が多くて対応出来る者が限られそうだ。
「ジルちゃんの感覚でどのくらいの強さなの?」
直接戦闘した事が無いラブリートが尋ねてくる。
「個々人で得意分野が分かれているからおおよそになるが、Aランク以上Sランク未満と言ったところか。」
「それだと集団なら私でも苦戦しちゃうかもしれないわね。」
国家戦力とも言われるラブリートの発言に王族達は冷や汗を流していた。
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