58章
元魔王様と温泉の町 1
王都最後の晩餐となるので今日は普段よりも更に豪勢な食事が用意された。
ジルもホッコも食べ過ぎてしまい、お腹をパンパンに膨らませてソファーで休んでいる。
「さて、いよいよ明日はセダンに向けて出発するけど皆準備は問題無いね?」
トゥーリが見回して尋ねると、王都を目指す時のメンバーにエレノラを加えて、皆がその言葉に頷く。
奴隷として購入されたエレノラは今後トゥーリの護衛を務めるのでセダンの街に共に付いていく事になる。
「正直もう少し滞在したかったのだけれど仕方無いわよね。」
「まだ足りないのかい?」
残念そうに呟くラブリートに驚きながらトゥーリが尋ねる。
「化粧品のお店が沢山あるんだもの、しょうがないじゃない。」
暇な時間は全て王都の街にある化粧品店を巡っていたラブリートなのだが、それでもまだ足りなかったらしい。
「我の無限倉庫にあれだけ詰め込んでまだ買う気なのか?」
Sランク冒険者の財力は凄まじく、購入した美容関係の商品が馬車数台分はあったのでジルの無限倉庫で運ぶ事になった。
「国の中心部である王都が一番品揃えが良くて質の良い物を取り扱っているんですもの。この機会に大量に仕入れる以外の選択肢は無いわ。」
「それでもかなり買えたみたいだし今回は諦めてね。あまり領地を長期間離れてもいられないからさ。」
「分かってるわよ。」
ラブリートとしても残念なだけでこれ以上滞在してまで買い漁るつもりは無い。
また必要になれば王都に来ればいい。
ラブリートなら魔装して走れば移動時間を大幅に短縮出来る筈だ。
「ジル君達も満足出来たみたいで良かったよ。」
「それなりに楽しめたぞ。最後にでかい収穫もあったしな。」
「大満足なの。」
二人が満足そうに頷く。
最初は暇に殺されるのではないかと思っていたが、色々と暇潰しになる事が多かったので退屈する事無く過ごせた。
「収穫ってその剣の事だよね?素人目にもとんでもない物だって分かるよ。」
「こんな短期間でよく仕入れられるものよね。」
ホッコが大事そうに抱えている剣を見てトゥーリとラブリートが言う。
戦闘の素人と玄人、どちらから見ても直ぐにとんでもない物だと分かるらしい。
「取り敢えず皆問題無さそうだし、明日出発で良さそうだね。ハニービー達もいる事だし少し進行速度を落としつつセダンを目指す事にしよう。」
今はシズルが庭で飛ぶハニービー達のお世話をしてくれている。
ジルに庇護を求めてきたのと元々有効的な魔物なのでこちらを害する様な行動は一切していない。
なので安心して連れていける。
「それじゃあ私は明日も朝が早いからもう眠るとしようかな。君達もあまり夜更かしはしないようにね。」
「「皆さん、お先に失礼します。」」
トゥーリが立ち上がるとキュールネとエレノラも頭を下げて退出した。
明日屋敷を出る前に色々と最後の引き継ぎ作業をするらしいので皆よりも早く起きる必要があると言っていた。
「私も今日は全力で王都を駆け回って疲れてるし先に寝るわね。おやすみ二人共。」
ラブリートも珍しく疲労が見られる。
先に休むと言って出ていった。
「ジル様、今大丈夫です?」
ジル達も寝ようかと思っているとシキから意思疎通による連絡がきた。
「シキか。オークション前から連絡が無くなったがどうだった?」
「申し訳無いのです。忙しくて連絡が遅れたのです。それと無事にダンジョンコアの欠片は手に入れたのです。」
「入札出来たか、良かったな。」
無限倉庫に稼いだお金は入れておいたがそれ以降連絡が無かった。
しっかりお金が減っていたので何かしらには使ったと分かったが、無事に手に入った様で何よりである。
「ジル様がお金を集めてくれたおかげなのです。それで手に入れたダンジョンコアの欠片を使って色々している内に時間が過ぎていたのです。」
「まあ、予想通りではあったから問題無いぞ。」
知識の精霊であるシキの事なので、手に入った珍しいダンジョンコアの欠片や異世界の知識による未知の実験と気になる事が多くて夢中になっていたのは容易に想像出来た。
「それはいいとして前回確認し忘れたが特に浮島で問題は起こっていないか?」
「色々と報告したい事は増えたのです。でも問題は起こっていないので安心してほしいのです。」
「そうか、ならば到着した時の楽しみとしておこう。」
こちらも暫く会っていない間に色々と伝えたい事が溜まっている。
セダンに戻った時にお互いに報告合戦が開かれるだろう。
「そうしてほしいのです。それでどれくらいで帰ってくる予定なのです?」
「明日王都を出発する予定だ。セダンに到着するのはまだ1月以上掛かるな。」
「了解なのです。皆にもそう伝えておくのです。」
浮島にはシキの他にもジル達の帰りを待っている者達がいる。
元気にしていれば何よりだ。
「我がいない間は頼んだぞ。」
「お任せなのです。ジル様の帰りを皆とのんびり待っているのです。また何かあったら連絡するのです。」
「分かった、ではな。」
「おやすみなさいなのです。」
シキとの意思疎通を終える。
真契約を結んだシキとしか出来無いが遠距離での会話は便利である。
「さて、我らもそろそろ寝るか。」
「…むにゃむにゃなの。」
意思疎通で会話している間に隣りにいたホッコは眠ってしまった様だ。
ジルはホッコを抱き抱えて寝室に向かい眠りに着いた。
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