元魔王様と最強のメイド達 6

 魔族の憑依から解放されたハガンを見るナキナからは、様々な感情が見受けられる。

今はそのままにしておく事にした。


「さて、こちらの問題を片付けるとするか。」


 ジルの目の前には、魔族の支配下にあったオーガ達がいる。

メイドゴーレム達がずっと睨みを効かせてくれていたので、ナキナの邪魔にならず大人しくさせられていた。


「オーガは比較的危険な魔物です。殲滅を提案します。」


「近くに鬼人族の集落がある事を考えると、その方がよろしいかと思いますね。」


 殲滅を提案するタイプBに続いてタイプCも意見は同じ様だ。

ここで逃してしまえば、統率個体がいる事からも厄介な事になるのは目に見えている。

回復した鬼人族達の方を見ると全員が激しく頷いていた。


「と言う事だオーガ達よ。今はテイムも考えてはいないのでな。恨むなら元主人を恨むといい。」


「ゴガアアア!」


 ジルの言葉を理解出来たのか、それともメイドゴーレム達の圧が消えたからか、オーガキングは咆哮を上げてオーガ達に攻撃の指示を出す。

そして我先にとオーガキング自らがジルに向かってくる。


「マスター、お任せを!」


「クラッシュ!」


 ジルの前にハンマーを持ったタイプBがオーガキングを迎え討とうと意気揚々と出てくる。

だが向かってくるオーガ達の先頭を走るオーガキングが、突然巨大な二つの手によって潰された。


 巨大な手が開くと血肉が吹き出したグロい見た目のオーガキングが、手の圧力によって平べったく潰されて死んでいた。


「タイプC、私の邪魔をするとは良い度胸です。」


 そう言ってタイプBがマスターであるジルの隣りにメイドの様に付き添っているタイプCを睨む。

今のはタイプCの装備である連動外装の巨大な両手によって起こった事だ。


 タイプCは解析兼支援型機械人形と言うだけあり、メイドゴーレム達の中では戦闘にあまり特化していない。

それでも高ランクの魔物であるオーガキングを軽々と倒せるくらいの性能は有しているのだ。


「私もこの程度であれば戦闘でマスターのお役に立てると思いまして。残りも私に任せてくださってもいいですよ?」


 連動外装の手をグッパッと握ったり開いたりしながら言う。

オーガを軽々と掴める程の大きさなので、簡単に握り潰す事が可能だろう。


「冗談でしょう。マスターに元々私が任せられていた事です。もう一体たりとも渡しはしません。『換装!』」


 タイプBは換装の機能を使い、ハンマーを仕舞って大鎌を取り出す。

そして大鎌を魔装して更に凶悪な武器にしていく。


「グリムセバー!」


 魔装した大鎌を目の前のオーガ達に向けて一閃する。

それだけで全てのオーガの身体が真っ二つに断ち切られた。

更に余波で後ろにある森の木々が沢山切られて、ドサドサと音を立てて次々に倒れている。


「マスター、任務完了です。」


 タイプBがやり切ったと言った様子で振り返りながら言う。


「明らかに過剰だった気もするが、二人共ご苦労だった。」


 結果的にオーガ達は全て倒せたので問題無しとしておく。

鬼人族達の大きく見開かれた目や開いて塞がらない口を見ればやり過ぎたのは一目瞭然だ。


「ジル様、ライムに食べさせてあげたいのです!」


 シキがオーガの死体を指差しながら言う。

ライムは魔物を吸収して自身の力に変え、無限に進化するエボリューションスライムである。

オーガ達を吸収させて強くしたいのだろう。


「そうだな。二人共いいか?」


 一応倒したのはメイドゴーレム達なので、二人に確認を取る。


「尋ねられるまでもありません。」


「我々の得た物は全てマスターの物ですから。」


 そう言って二人は問題無いと頷く。

ジルが喜んでくれさえすれば、それが自分達にとっての最大限の喜びとも言えるのである。


「いいらしいぞシキ。」


「ありがとうなのです!」


 シキは喜びながらライムを引き連れていく。

ライムも戦いで怪我をしていた様だが、ポーションで回復してもらったので元気そうだ。


「待たせたのう。」


 ナキナが気持ちの整理を終えて戻ってきた。


「もういいのか?」


「うむ。それにしても派手にやったもんじゃ。」


 大量のオーガの死体と切り倒された木々を見ながら言う。


「もしかして何か問題あるか?」


「いや、むしろオーガを討伐してもらい感謝しておる。妾達にとってはそれなりに強敵じゃからな。」


 ナキナ以外は複数人で挑まなければ安全に勝てないくらいなので、オーガを殲滅してくれたのは鬼人族的には大助かりである。

ついでに木々は集落の建築に使わせてもらうとの事で、そちらも感謝された。


「なら集落に戻るとするか。」


 魔族を取り逃したとは言え、キクナの予知の件は防ぐ事が出来た。

完全な勝利とは言えないがやれる事はやれた。


「そうじゃな。お婆様にも事の顛末を伝えねばならんじゃろう。それと、すまんがハガンを収納して運ぶ事は可能かのう?」


 ナキナは横たわるハガンに目を向けて言う。


「ああ、大丈夫だ。」


 無限倉庫には生きている者は入れられないので収納する事は可能だ。


「ならば集落まで頼むのじゃ。しっかり埋葬してやりたいからのう。」


「分かった。」


 ジルはナキナの頼みでハガンを収納した。

そして戦いを終えた一向は集落に帰還する事にした。

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