元魔王様と旅の報告 5

 龍聖剣の自慢はまだまだ終わらない。

せっかくなので自分の剣の凄さをもっと知ってほしい。


「龍聖剣はそれだけじゃないの!魔法を強くしてくれるスキルもあるの!」


 ホッコの魔法を全体的に強化する為に付加された魔法効果上昇のスキル。

龍爪に並ぶこの武器のメインスキルだ。


「おおお、それは良スキルなのです。ホッコとの相性ばっちりなのです。」


「魔法を主体として戦う魔物じゃからのう。それだけでも重宝しそうじゃ。」


 ホッコはディバースフォクスと言う魔物だ。

尻尾の数だけ高い魔法適性を持っていて、最上位の魔法まで使用出来る様になる。

魔法主体で戦う魔物なので、魔法効果上昇のスキルが全ての魔法に適応される事で大幅に強化されるのだ。


「このスキルのおかげで新しく使える様になった魔法の威力も上がったの!」


「新しい魔法?」


「ナキナ、ホッコの尻尾を見てみるのです。小さいけど三本目が生えているのです。」


「本当じゃ、小さくて気付かんかった。」


 王都へ旅立つ前には無かった三本目の尻尾に二人が気が付く。

まだ生えたばかりで小さい尻尾ではあるが三つ目の魔法適性はしっかり獲得出来ている。


「ディバースフォクスは尻尾が生える度に新たな魔法の適性を獲得するのです。それら全てに恩恵を与えるスキルとなるとその価値は計り知れないのです。」


 今後もホッコの尻尾は増えていき魔法の適性も同じ様に増えていく事になる。

龍聖剣はホッコにぴったりな武器なのだ。


「わざわざ注文してそのスキルを付加してもらったからな。素材が豪華になり過ぎてしまったが、狙ったスキルを付加した魔法武具を作れるのは有り難い。」


 自信満々に言うだけの事はあった。

これ程の魔法武具は今のジルには作れないので助かった。

今後も破格の魔法武具を作りたくなった際にはドメスを頼らせてもらおうと思った。


「成る程、その人族のスキルは色々と便利そうなのです。」


「素材さえあればだけどな。要求が高くなれば求められる素材の価値も跳ね上がる。」


 龍聖剣でも相当高価な素材を要求された。

これ以上となると何を要求されるか分かったものではない。


「ところでホッコ殿は何の魔法を手に入れたんじゃ?」


 新たな魔法適性が気になってナキナが尋ねる。

自分は使えなくても仲間の魔法は知りたい。


「雷霆魔法なの!」


「また派生魔法なのです?当たりを引きまくりなのです。」


「雷霆魔法はジル殿が使うところをたまに見るが威力が凄まじいからのう。」


「魔法の中でもトップクラスの火力を持っているからな。分かりやすく強力な魔法だ。」


 魔力量の多いジルが使用したからと言うのもあるが、頑丈なダンジョンの床すらも軽々と貫通させる威力を持つ雷霆魔法はかなり攻撃的な魔法だ。

使いこなせる様になれば戦闘の幅が大きく広がるだろう。


「今は初級魔法までしか使えないの。それでも龍聖剣のおかげで実戦でも使えてるの。」


 龍聖剣を持っている時と持っていない時では明らかに威力に差が出る。

格上の相手をする時にはとても助かる。


「それは良い事じゃな。妾とも模擬戦をしてもらいたいくらいじゃ。」


 人型としての戦闘経験が少ないホッコでも龍聖剣があればナキナと良い勝負が出来そうだ。


「やりたいの!」


「でも龍爪は無しじゃからな?絶対じゃぞ?」


「分かっているの。」


 念を押すようにナキナがホッコに言う。

フリでは無くて本当に使われると困るのだ。


「ちなみにだが龍爪と魔法効果上昇の他にも、風刃、修復、敏捷補正のスキルもあるからな。」


「そんなに付加されてたのです!?」


「五つのスキルじゃと!?国宝物じゃぞ!?」


 二人が龍聖剣を見て驚愕している。

それを見た持ち主のホッコは満足そうな表情をしている。

龍聖剣の凄さを分かってもらえてご満悦だ。


「素材が良かったらしいぞ。」


「一体どんな素材を使ったんじゃ…。」


「そんなに見てもあげないの。」


「別に取り上げたりはせん。妾も自分の武器は持っておるからのう。それに龍聖剣はホッコ殿が使うのが一番じゃろう。」


 魔法適性を持たないナキナではその性能を充分に活かす事は難しい。

龍聖剣はホッコ専用装備だ。


「ホッコの為にと作ってもらった物だからな。」


「ならば早速模擬戦といかぬか?」


「受けて立つの!」


「模擬戦をするのは構わないがあまり派手に暴れ過ぎるなよ。やるなら魔の森の方でやれ。」


 あの場所は魔力の濃い地帯なので多少暴れて森が荒れても、早い時間で元に戻るので気にせず暴れられるのだ。


「了解じゃ。では行ってくる。」


「ナキナ、早く行くの!」


「分かっておる。」


 ジルとシキに見送られて二人は魔の森の方に走っていった。

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