元魔王様とダンジョンのボス部屋 6

 自分の強さを証明する様に立派な魔石を落としてくれた。

ランク付けするとなれば間違い無くAランク以上にはなるだろう。


 そして刀の方だが万能鑑定を使うと忍刀と言う名前の魔法道具だった。

見た目は普通の刀と遜色無いが、忍術のスキルを持つ者が所持すればスキルや身体能力が強化されるらしい。


 条件が中々に厳しいが普通の刀としても使用出来るし、忍術のスキル持ちが手に入れれば正に鬼に金棒と言った強さを手に入れられるだろう。

ここまでをタイプCが代わりに語ってくれた。


「ふむふむ、スキル持ちには高値で売れそうね。そんなスキル持っている人聞いた事無いけど。」


 ルルネットが言う通りそれが難点であった。

忍術のスキルを持っている者はジルもあまり聞いた事が無い。


 それこそゴブリンニンジャか魔王時代に面識のあった異世界の勇者くらいである。

何か異世界由来の特殊なスキルなのかもしれない。


 ちなみにスキル収納本と言う魔法道具をジルは所持しており、倒した相手からスキルを入手出来る効果を持っている。

それを先程のゴブリンニンジャに使用しなかったのはダンジョンの魔物に効果が無いのを前世で実証済みだからだ。


 ダンジョンの魔物は外と仕様が異なるのか、テイム同様スキル収納本も機能しない。

もし可能なら高難易度のダンジョンでスキルを集め放題だったのだが、そう上手くはいかない。


「いつか使い道があればいいと思ってスキルの肥やしにでもしておこう。」


「それじゃあ15階層も突破したし次よ次!」


 ルルネットが入り口とは反対側に進む。

扉がボス部屋をクリアした事で開き、下に降りる階段が見えていた。

その階段を降りて16階層へと進む。

降り立つと雰囲気がガラリと変わった様な感じがする。


「なんか魔力が濃いわね。」


「ダンジョンとはそう言うものだ。階層を降りる程に魔力が空間に満ちていて、出現する魔物も強くなっていく。」


 ボス部屋から出て階層を下った事で魔力濃度がより高くなった。

この階層からは魔物も更に強くなるので油断出来無い。


「っ!早速お出迎えよ!」


 ルルネットの感知スキルに反応があったので皆に警告する。

通路の角を曲がってきたのは身体を持たない鎧であった。


「リビングアーマー、Cランクの魔物です。耐久はBランク相当はあるかと。」


 魔物についての情報を素早く的確にタイプCが報告する。


「ふむ、いきなりCランクの魔物か。やはりルルネットにはこの辺りで控えてもらうとしよう。」


「残念だけど仕方無いわね。」


 ボス部屋では高ランクのゴブリン種を相手にしていたが、それはホッコやタイプCと共闘したから戦えていただけだ。

今までみたいに単独で戦闘をするとなると少なく無い危険が付き纏う事になる。

安全を考えればそろそろ後方で待機しておくべきだろう。


「ホッコも待機だ。戦闘訓練は使える魔法が増えてからでも遅くは無いだろう。」


「クォン!」


 ホッコはジルの言葉に意義無しと鳴いている。

まだ持っている魔法が派生魔法の二つしかない。

もっと使える魔法が増えて手数を増やしてからでも遅くは無い。


 ホッコは戦闘の邪魔にならない様にジルの肩を飛び降りる。

そして近くで同じく後方待機を命じられたルルネットの腕の中にダイブした。


「ホッコから来てくれた!もふもふ~。」


 腕の中に飛び込んできてくれたホッコを抱いて幸せそうな表情を浮かべている。

契約は結ばなかったが嫌っている訳では無さそうだ。

ルルネットにもふもふされるのも嫌では無い様で、されるがままになっている。


「マスター、私が倒しましょうか?」


「いや、我がやろう。」


 タイプCの連動外装は先の戦闘で損壊して修復中だ。

素の戦闘能力でもこれくらいなら倒せそうだが先程ルルネット達を守ってもらったので少し休ませる事にする。


 ジルはリビングアーマーに無造作に近付き、手に持つ銀月を一閃する。

それだけで身体が真っ二つとなり、魔石をドロップして消失した。


「我やタイプCにとってはまだ物足りないか。」


「平然と高ランクの魔物を倒してるわね。」


「クォオ。」


 高ランクの魔物との戦闘をあっさりと終わらせるジルを見てルルネットとホッコは改めて底の知れない強さだと実感する。


「戦闘型ではありませんがAランクくらいまでならば相手に出来ます。」


 解析兼支援型であるタイプCだが戦闘が出来無いと言う事では無い。

連動外装による戦闘もあるが、魔法生命体として作られた身体自体もそれなりに強度がある。


 近接戦闘型であるタイプBと比べると戦闘面では見劣りしてしまうが、タイプCも身体の強度を活かしての近接戦闘は可能なのである。


「ふむ、ならば階層を一気に降りるとするか。」


「まーたズルするのね?」


「ズルでは無い、こう言う攻略方法もあると言う事だ。」


 ルルネットの言うズルとは階層の床をぶち抜いて降りていく方法の事だ。

本来階層を行き来するのに使う階段を使わずに、下に無理矢理下るのだ。

階段を探す手間も必要無いので時間短縮になる。


「でも魔力が減るからあまりやりたくないんじゃなかったの?」


 ダンジョンの壁、天井、床はかなりの強度があるので、それなりに強い魔法を使わなければ破壊する事は出来無い。

当然強力な魔法を使えばその分魔力消費も多くなる。


「あれは時間を掛けたからだ。一発で数階層をぶち抜けば大した魔力消費にはならん。」


「じゃあなんで昨日のは回数を分けてたの?」


「あれは近い上下階層に人がいると驚かせると思っての配慮だ。」


 数階層ぶち抜く様な魔法はかなりの威力を秘めている事になる。

そんな攻撃で数階層の天井と床が壊れればダンジョンが揺れたりダンジョン中に音が響いたりして驚かせてしまうかもしれない。


「現在下階層に魔物以外の反応はありません。上階層も近い場所には反応無しです。」


 既にジルも魔法によって把握していたがタイプCが口に出してルルネットの為に説明してくれた。

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