元魔王様と帰還を待っていた者達 6
取り敢えず聞きたい話しは聞けたので応接室を出る。
「おお、丁度よかったわい。」
扉を開けるとギルドマスターであるエルロッドが待っていた。
「ギルドマスター、お待たせしてしまいましたか?」
「気にしなくてよいぞ。久々に同族と話せてわしも嬉しかったからのう。」
エルリアの護送は無事に終わった。
エルロッドの様子を見るに心良く歓迎してくれたみたいだ。
「エルリアはどうしたんだ?」
「同族のわしを見て安心したのか、今は眠っておる。心から休める場所も無かったじゃろうしな。」
周りは人族ばかりでいつ襲われてもおかしくはない、そんな状況では心から休むのは難しかっただろう。
「ではこのまま預けていいんだな?」
「うむ、わしが責任を持って預かろう。暫くはセダンの街で暮らす事になるが、準備が整い次第故郷に帰らせるつもりじゃ。」
エルリア一人では故郷まで帰れず、故郷の事は人族には教えられない。
そうなるとエルフ一人を故郷に帰すだけでも色々と準備が必要になるのだろう。
「それならエルリアの事は任せる。我は用事があるから帰らせてもらうぞ。」
「うむ、同胞の護衛を引き受けてくれて感謝するぞ。」
そう言ってエルロッドが自室に戻っていく。
エルリアの様子でも見にいったのだろう。
「それではジルさん、この後直ぐに向かって下さいね?」
「分かった分かった、トゥーリの屋敷にいけばいいんだろ。お前達は後は自由にしてくれ。」
ジルだけいれば事足りる様なので他の者達は自由行動とする。
旅の疲れを先にゆっくりと癒してくれればいい。
「それならそろそろお昼なのでミラも一緒に食べるのです。トレンフルの話しを沢山聞かせてあげるのです。」
「お土産も買ってきているからのう。ギルドの者達で分けてほしいのじゃ。」
「それはいいですね、是非ともご一緒に。働き通しで全然休めていなかったので。」
ジルを残して女性陣は酒場の方に向かっていく。
「ホッコもいってきていいんだぞ?」
「クォオ。」
ホッコは首を左右に振ってスリスリと甘えてくる。
ジルと一緒にトゥーリの下へいってくれるらしい。
「ならば向かうとするか。」
「クォン。」
ジル達はギルドを後にして領主の屋敷へと向かう。
屋敷へと到着すると門の向こうに旅の間世話になったシュミットの馬車が停められているのが見える。
「冒険者のジルさんですね、お待ちしてました。」
門に近付くと門番が直ぐに中へと通してくれる。
シュミットが先に報告してくれていた様だ。
以前とは違って揉め事も無く、トゥーリの下までスムーズに案内される。
「トゥーリ様、ジルさんが訪ねられています。」
「通しても構わないよ。」
中からトゥーリの返事が聞こえて扉が開かれる。
「おおお、ジル君が直ぐにきてくれるなんて予想外だったよ。」
久しぶりに見るトゥーリが驚いた表情で言う。
ミラに伝言を頼んでおきながら信用していなかった様子だ。
「急いでこいと言うから出向いてやったんだぞ。それに依頼の納品物も大量に持っているから早く渡したいしな。」
「先に出してもらった分は納品済みやで。量が多いからもう少し待ってから出した方がええと思うわ。」
屋敷の人達が忙しく動き回ってくれている。
納品した塩をセダンの街中に流していく作業があるのだろう。
フライドポテトの需要が落ちていないのであれば、今も街中で塩が必要とされている筈だ。
「取り敢えずシュミットにも言ったけどお疲れ様。依頼完了だね。」
トゥーリは依頼の完了証明書を渡してくれる。
まだ無限倉庫の中の物を見せていないのだが信用してくれているのだろう。
これで護衛依頼は終わりとなり、ギルドで報酬を受け取れる。
「長かったが我も充実した日々を過ごせたし満足だ。」
トレンフルでの日々は面白おかしく自由に過ごせたので良かった。
ある程度自由の効く依頼だったのでジルとしても満足である。
「そう?それなら良かったよ。またジル君が満足出来そうな長期依頼があったら頼む事にするね。」
「今回はたまたま目的地が一致していただけで本来は長期依頼を受けるつもりは無いからな?」
あまり頻繁に長時間拘束されるのは御免だ。
ギルドでの依頼は適度に時間を見つけてやるくらいが丁度良い。
「残念だけどしょうがないよね。まあ、依頼の件は一旦ここまでとしようか。」
「ほな、わいは先に失礼するで。暫く店を開けてたし様子を見たいんや。」
「うん、シュミットもありがとね。」
先に用事が済んだシュミットが部屋を出ていく。
「さて、ここからが本題だよ。」
そう言ってトゥーリが難しい表情をしている。
「本題?」
「うん、依頼も重要だけど本題の方で早く訪ねてほしかったくらいだからね。」
どうやら塩の買い付け依頼の他にもトゥーリから何か話しがあるみたいだ。
「話しは二つあるんだ。良い話しと悪い話し、どっちから聞きたい?」
トゥーリは指を二つ立ててジルにそう尋ねてきた。
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