元魔王様とシキの従魔 6
狩る事にはしたがコカトリス討伐はBランクの依頼なのでDランクのジルが受ける事は出来無い。
受ける事が出来る依頼は、自分のランクよりも低い依頼だけだからだ。
なので二人はコカトリスの依頼をそのままにして、再びDランクの依頼ボードに戻る。
「えーっと、このオークの討伐依頼が一番近そうなのです。」
「分かった。」
シキの言う通りにDランクの依頼ボードから依頼書を取る。
二人がしようとしているのは、コカトリスに一番近いDランクの依頼を受けて、ついでに狩ると言う何ともグレーな方法だった。
「ミラよ、この依頼を頼む。」
受付に向かい、担当としていつも利用しているミラに依頼書を渡す。
「…ジルさん、全部聞こえていたんですけど?」
ミラはそう言ってジト目を向けてくる。
依頼ボードは受付からも見える位置にあるので、ミラには全部聞こえていた。
「ん?何の事だ?」
「Bランクの依頼ボードの前にいましたよね?コカトリスとかブロム山脈とか言ってましたよね?」
とぼけるジルを問い詰める様にミラが言う。
「ただ見ていただけだ。我ではBランクの依頼は受けられないだろう?」
そう言ってオークの討伐依頼書を指差す。
持ってきているのは自分の現ランクと同じDランクの依頼なので当然受けられる。
「…この依頼書の場所、ブロム山脈に近そうですが?」
それを狙って持ってきたので当たり前である。
さすがに危険なBランクの依頼場所からは少し離れているが、それでも場所はそれなりに近い。
「そうなのか?我はオークを討伐したい気分なだけだ。」
「…コカトリスも倒しにいくんですよね?」
少し圧を感じるミラの問い掛け。
白状しろと言う言葉が込められていそうである。
「率先して倒すつもりは無いが、オーク討伐の最中に現れれば迎撃するだろうな。」
依頼を受けていなければ討伐してはいけないと言う決まりは無い。
自分の命の危機となれば、逃げるか戦うかのどちらか選ぶ必要がある。
そして相手が高ランクの魔物であっても、勝てる見込みがあるのならジルは戦う。
それに金にもなるし珍しいスキルも得られるとなれば、見逃すと言う選択肢を選ぶ事は無い。
「はぁ、普通であれば絶対に容認出来無い事なのですがジルさんですからね。何故急にコカトリスなのか分かりませんけど。」
ミラはそう言って諦める様に溜め息を吐く。
これが普通のDランク冒険者であれば、死にに行くだけだから辞めろと全力で止めるところだ。
それが無理ならばギルド員や高ランク冒険者を密かに付けて、ピンチの時に護衛をしてもらう形をとる。
しかし今回の相手はジルだ。
その高い戦闘能力や実績をミラは知っている。
現段階でもギルドのトップクラスの冒険者達と戦闘能力だけならば大差無いと判断出来るので、コカトリスに遅れを取る事も無いと感じさせる。
「ちなみにコカトリスの買い取りは高いのか?」
「討伐する気満々じゃないですか!」
その後ミラは注意や愚痴を言いつつもコカトリスの相場についてはしっかりと教えてくれた。
さすがは高ランクの魔物、買い取り額はそれなりに高かった。
ライムに変化吸収をさせる為に丸々渡すつもりなので素材が余るか分からないが、余ったらギルドに持ってこようと思ってギルドを後にする。
早速コカトリス目当てでオークの討伐依頼を受けたジル達はブロム山脈へと向かい、数十分と経たないうちに到着した。
「まさかこんなに早く着くとは思わなかったのです。」
「前世なら転移のスキルで一瞬だったのだがな。」
転生するにあたってスキルの大半は消えてしまった。
その中には便利なスキルも数多くあり、転移のスキルもその一つであった。
世界中どこであろうと一瞬で移動出来ると言うチートスキルだ。
しかし今は転移のスキルを所持していないので、魔法を使った速い移動手段を試してみた。
先ず自分達を結界魔法を使い結界で包む。
次に重力魔法で結界毎ジル達を空中に浮かせる。
最後にブロム山脈とは反対方向に風魔法をぶっ放せば、結界が空中を爆速で移動すると言う感じだ。
その結果、セダンの街からブロム山脈まで馬車で数日も掛かる距離を数十分と言う異例の早さで到着してしまった。
「生息域は山脈の奥地と書いていたな。」
「そうなのです。どんどん進むのです!」
二人ともライムが強化されるのを早く見たいと言った様子だ。
危険な山の中をどんどん進んでいく。
「一応我からあまり離れるなよ。どんな魔物が潜んでいるか分からないからな。」
そこらの魔物に遅れは取らないが警戒はしておく。
自分なら何かされても大抵問題無いが、最弱コンビはそうもいかない。
「了解なのです!」
シキと同じ様にライムもプルプルと揺れて了承していそうだ。
コカトリスについては大まかな生息域しか知らないので、ブロム山脈を奥へ奥へと突き進んでいく。
すると突然ジルが動きを止めた。
「ん?どうしたのです?」
「前方に魔物だ。少し遠いみたいだがな。」
肉眼で把握出来てはいないが、魔物の気配を感じ取った。
「確かにいるのです。オークなのです。」
シキは精霊眼の力を使って遠くを視た。
豚の頭を持つ人型の魔物が群れで行動している。
「オークか、丁度いいな。」
ジルは地面に落ちている石ころを拾い、気配のする方へ投げる。
石ころは風切り音を残して森の中を突っ切り、一体のオークの頭を消し飛ばした。
「命中なのです!」
突然仲間の一体の頭が無くなった事に周りの仲間達が騒いでいる。
そして何かが飛んできたのはかろうじて見えたのか、こちらに向かってきて襲い掛かってきた。
しかしDランクの討伐依頼対象程度にジルが手こずる筈も無く、数秒でジルが返り討ちにした。
オークの群れは直ぐに肉塊となったので、これで依頼達成である。
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