元魔王様と強制睡眠 10
トゥーリにゴブリンの件を話すと手っ取り早く片付けて出発しようと言う事になり、ジルとラブリートは村人に案内されてゴブリンが住み着いている場所に向かう。
その間の護衛に関してはシズルとキュールネに任せてきた。
「お二人共、あの辺りです。」
村人が指差した場所には川が流れており、近くには洞窟もある。
「川辺の近くにある洞窟か。住みやすそうな場所を選んでるな。」
「ゴブリンは繁殖しやすい場所を拠点に選ぶのよね。」
人型の魔物なので人族と同じ様な行動を取る事が多い。
繁殖行為も攫った人族を利用する事が多いので、生かす為に水の確保は重要となる。
なので住処と水が同時に手に入るこの場所に落ち着いたのだろう。
「川辺は自分達も水を汲みにくるので困っているんです。毎回危険な想いをしているので。」
水場に危険な魔物が住み着いてしまうと戦闘力の乏しい村人は苦労するだろう。
生命線でもある水が奪われるのは村の危機である。
「子供達もいるんだしさっさと殲滅しちゃいましょ。」
「そうだな、と言うか今更だが我は必要だったか?」
ゴブリンなんてラブリート一人でも余裕過ぎてお釣りがくる。
上位種や統率個体が出ても全て一撃で殴り倒せるだろう。
「一応ゴブリンがお宝を蓄えているかもしれないでしょ。魔石だって数が増えれば嵩張るんだから。」
「つまり荷物持ちか。」
無限倉庫を持つジルがいればどれだけ戦利品を手に入れても一度で全て持ち運び出来る。
ラブリートはそれを期待しているのだろう。
「戦闘もしてくれてもいいわよ?ジルちゃんの火魔法なら直ぐに片付きそうだし。」
「お宝が燃えてしまう可能性もあるし、我が出る幕は無いだろう。」
火力だけは高いので手加減が難しい。
ラブリートに戦ってもらった方が安全で早い。
「私達はここで待っていればいいでしょうか?」
「外で他の魔物に襲われないとも限らないし一緒でいいわよ。」
「我とラブリートが前後に分かれれば問題無いしな。」
村人を挟む形で洞窟の中を進んでいく。
それなりに長く広い洞窟の様だ。
「あら?」
「どうした?」
「ゴブリンがいたのだけれど寝ているわね。」
「寝ているだと?」
先頭の様子を見にいくと確かに通路に倒れているゴブリン達が寝息を立てている。
足音を立てて近付いても起きないところを見ると普通に寝ている訳では無く、スリープシープによって眠らされた可能性がありそうだ。
「これはつい先程見掛けた光景だな。」
「そうね、村から近いし洞窟にも来てたんでしょう。」
「あの、お二人共どう言う事でしょう?」
「ゴブリン達は貴方達と同じく魔物に眠らされていたって事よ。だから一発で倒せるなら仕留め放題ね。」
無防備な状態であれば村人達でも倒す事が出来る。
「この状況なら村人達に譲ってもいいんじゃないか?魔石も一応金にはなる。」
「それもそうね。私達に無償で依頼するのは気が引けていたみたいだし。」
「はい、私達にやらせて下さい。」
ジルとラブリートがそう話していると村人達が全員手を上げている。
ここまできて手柄を譲る形になるが相手はゴブリンなので二人共気にならない。
「槍で頭を貫きなさいね。失敗しても私が倒してあげるわ。」
ラブリートの指示通りに村人達がゴブリンを次々に仕留めていく。
そうしながら進んでいくと洞窟の一番奥に一体だけ大きな個体がいるのを見つける。
「ミナちゃんが言ってたのはゴブリンジェネラルの事だったみたいね。」
「統率個体も一緒に眠っているな。」
大きないびきをしながら無防備な身体を晒している。
統率個体であってもスリープシープの睡眠効果には抗えなかった様だ。
ちなみに洞窟の奥にはゴブリンジェネラルと数匹のゴブリンがいるだけでお宝は無かった。
「このデカいゴブリンも同じ倒し方でいいんでしょうか?」
「普通のゴブリンに比べると耐久力が高いから貴方達の攻撃では難しいかもしれないわ。一応思い切り突き刺してみてちょうだい。」
「分かりました。はあっ!」
村人の一人が槍で頭を突き刺す。
だが戦闘に慣れていない村人の槍は先端が少し埋まる程度で貫くまでには至らない。
そしてそんな痛みを受ければスリープシープに受けた眠りも解ける。
「ギャギャア!」
「うるさいわよ。」
痛みで起きたゴブリンジェネラルが村人に襲い掛かろうとしたが、近くにいたラブリートがその頭にデコピンをすると頭が消し飛んだ。
たったそれだけでゴブリンジェネラルは地面に倒れる。
「これで討伐完了ね。それじゃあ戻りましょうか。」
「そうだな。」
ジルはラブリートの実力を知っていたので驚かなかったが、村人達はデコピンによってゴブリンジェネラルの頭が無くなった事に空いた口が塞がらなかった。
無事にゴブリン達を殲滅したジル達が村に戻ると村人総出で迎えられ口々にお礼を言われる。
スリープシープの力で魔物達は眠っていたので殆ど何もしていないのだが村に平穏が戻ったのでよしとする。
別れを惜しまれながらもジル達は村を後にした。
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