魔王様と魂廻の儀 5

「分かったよ!じゃあ着いてきてね!」


 死神は門に向かって歩き出した。

白装束達が死神と魔王の為に魂の列を少し移動させて道を作ってくれている。


 魔王も死神の後に続いて行き門を潜ると、転移したのか突然建物の中に移動した。


 それから暫く歩いたが、魂の色分け作業、魂の浄化作業、魂の色による転生後の境遇や能力を振り分ける作業と様々な部屋を見る事が出来た。


 だが神界と言っても神らしい姿は見かけない。

色の付いた魂か白装束ばかりである。


「さあ着いたよ!」


 そうこうしている内に目的の場所に辿り着いた様だ。

キラキラと輝く豪華な扉の上には、魂廻の儀専用・特殊転生部屋と書かれている。


 魔王として転生する前にも意識ある状態で訪れたので見覚えがある。

死神が先導して扉を開けて中に入る。


「遅い!」


 魔王も死神に続いて中に入ろうとすると、中から怒声が聞こえてくる。


「そんな事言われても、これでも真っ直ぐ来たんだよ?本当は寄り道して色々案内したかったのにさ!」


「まったく、我々は異常事態で騒いでおったのに呑気な事を言いおって。早く席に着け、死神以外は全員揃っているのだ。」


 死神は不満そうにしながらも空いている席に向かう。

異常事態と言うのは魔王が神を召喚した件だろう。

前例が無い事なので、神界も慌ただしかった様だ。


「魔王よ、入ってくるとよい。」


 怒声が聞こえたので立ち止まっていたら、神に招かれたので中に入る。

部屋の中は前回とあまり変わっていない様だ。


 中に入った魔王を囲む様に半円型のテーブルが置かれており、七人の神々がそれぞれ座っている。


 先程死神を怒っていたのは、テーブルの中心に座っている神。

全ての始まりの神でもある創世神であった。


 七人の神々はそれぞれ人族に近しい見た目をしている。

しかしその力はどれも規格外であり、魔王と同等以上の者ばかりだろう。


 地上では現在そんな存在はいなくなってしまったので、魔王にとっては珍しく囲まれているだけで緊張してくる。


「久しいな魔王よ。これ程の力を身に付けるとは思わなかったがな。」


 白髪の老人を思わせる見た目の創世神が呆れた様に言う。

自分達の加護による力も大きいが、魔王の成長については全くの予想外だったのだ。


 その実力はここにいる神々にも匹敵し、召喚魔法で神までも呼び出せる様になるとは、誰も予想出来無かった。


「いきなり召喚されちゃうんだもん、ビックリしたよね!」


「笑い事では無いのですよ死神。あの後私は苦労したのですから。」


 楽しそうに笑っている死神に文句を言っているのは、時間と空間を司る神である時空神だ。

豊満な身体と綺麗な容姿は、正に女神と言う言葉が似合う見た目をしている。


「時空神のおかげで、対策は出来たしな。これで死神の様に呼び出される心配も無くなっただろ。」


 他の神々よりも二回り程大きい偉丈夫の男の見た目をしているのは、戦いを司る神である戦神だ。

戦神が言うには召喚魔法の対策を何かしら時空神が取ってくれた様である。


 神が地上に召喚されるなんて言う事は、前例が無い事だったので今後は無いかもしれないが対策はしておくに限るのだろう。


「自らの干渉が出来無いとは言っても、地上に神々が行くとどんな影響があるか分からないからね。」


 サラサラとした金髪と整った容姿を持つイケメンは、魔力を司る神である魔神だ。


「さて、わしを含めた五人には見覚えがある筈だな?」


「遠い昔の記憶ではあるが当然覚えている。」


 創世神の問い掛けに頷きながら答える。

こんなインパクトのある出来事は、時間が経ってもそう簡単に忘れはしないだろう。


 創世神が言った様に五人の神に見覚えはあるのだが、残りの二人に会うのは初めてだ。

前回魔王に転生する為にこの部屋を訪れた時は、五人の神々しかいなかったからだ。


「今回の転生に協力してもらう為に来てもらったのだ。」


「私はそんな気はしないが、初めましてだな魔王。よく見て楽しませてもらっていたよ。私は破壊神だ。」


 スレンダーボディの快活とした雰囲気のある女性は、破壊を司る神である破壊神の様だ。

創世神とは真逆の力を有している神である。


「…奪神。」


 深々と被られたフードにより口元しか見えないが、ポツリと呟かれた声から女性である事が分かる。


「彼女は収奪を司る神だよ。恥ずかしがり屋さんだから、気を付けてあげてね。」


 魔神が奪神について捕捉説明をしてくれる。

見た目と性格からは想像出来無い力を有している様だ。


「さて、魔王よ。死神からも言われたと思うが、人族への転生で間違い無いな?」


 創世神が念押しする様に聞いてくる。

同胞になる選択もあるのだから、間違いが無い為の確認だろう。


「実質それしか選択肢がない様なのでな。」


 そもそも死にたいと思った理由が孤独で暇な現状からの解放なので、娯楽の少ない神界での神様活動なんてやりたいとは思えなかった。

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