元魔王様と結晶石泥棒 4
巨大なワームの死体が地面に横たわる。
リュシエルが剣を使って戦闘を続けてやっと倒す事が出来た。
「ふぅ、このワームは中々にしぶといのですね。」
汗を拭いながらリュシエルが一息吐く。
身体が大きいので剣で斬り付けても簡単に倒れてくれなかった。
「種によって様々だからな。だが訓練し始めて日が浅い割りには上出来だ。」
「魔法も剣もお見事でした。」
「それでもまだまだです。私の目標は遥か高みですからね。」
リュシエルがジルの事を見ながら言う。
目指すべき目標は追い掛けるのが大変な程に遠いのだ。
「おーい、大結晶石が出たぞー。」
丁度魔物を倒し終えたタイミングでダナンがそう叫んで知らせてくれる。
三人でダナンの下に戻ると普通の結晶石の何倍も大きい鉱石が地面に置かれていた。
「ほう、これはでかいな。」
「大結晶石の大きさとしては申し分無いな。かなりの価値となるだろう。」
採掘したダナンも満足そうだ。
これだけの大結晶石が手に入るならまだまだ採掘したい。
「公爵家に持ちこまれた物よりも大きそうですね。」
「この辺りは採掘の穴場なのかもしれませんね。」
「まだ誰の手も付いて無いからな。一番乗りの特権だ。」
ジルが無限倉庫に大結晶石を収納して保管しておく。
貴重な鉱石なので運搬にもかなり気を使うのだが、ジルのスキルがあればそれも問題無い。
「それじゃあ二つ目といくか。」
「やはりドワーフは手際が良いな。」
「採掘も本職みたいなものだからな。ん?」
ダナンが採掘しようとすると上からパラパラと砂利が落ちてくる。
この上はジルの重力魔法で自分達が降りてきた場所だ。
「砂利が落ちてきたな。誰か上にいるのか?」
「調べてやろう。」
ジルが空間把握を使用して上の様子を確かめる。
「便利ですね。魔法適性が多いのは羨ましいです。」
リュシエルも少なくはないがジルの魔法適性の量と比較してしまうと少なく感じる。
誰でも様々な魔法を使ってみたいと思うものだ。
「その中でも時空間魔法の使い手はかなり希少ですからね。」
「ジルは劣化魔法も見事に使いこなしてましたし、魔法の適性が相当高いのでしょうね。」
「劣化魔法、ここでもか。」
リュシエルの言った言葉を聞いてジルが呟く。
人族の世界に広まった間違った知識はシャルルメルトでも浸透しているらしい。
「どうかされましたか?」
「いや、実技だけで無く講義もしてやらねばと思っただけだ。まあ、それは戻ってからと言う事にして、上の状況が分かったぞ。」
「他の採掘者か?」
「ああ、下に向けて掘り進めている連中がいる。」
崖際に階段を作ろうとしている様だ。
本職では無いので荒いやり方だ。
「声を掛けておくか。おーい、下にいるからあまり石を落とすなよー。」
採掘中に上から石なんかが降ってくると危ないのでダナンが上に向かって注意しておく。
「どうやって降りたんだー?」
「下に向かう階段は無いわよねー?」
上の者達が尋ねてくる。
渓谷の下に降りる為の階段を掘ろうとしているのに既に下に人がいる事に驚いただろう。
「言ってもいいのか?」
一応ジルの魔法に関する事なのでダナンが確認してくる。
「ふむ、セダンでは無いとは言えわざわざ教えて話しが広まるのも面倒だな。」
「でしたら別の人が使える事にしてはどうですか?」
「それだ、ライムがいたではないか。」
足元でプルプルと揺れていたライムを見る。
特殊個体と言う事になっているライムなので、尋ねられてもそれで乗り切れる筈だ。
「ライムの力で昇り降りした事にすればいい。実際に出来そうだしな。そうすれば我に注目が来る事も無い。」
「そう返事をするがライムはいいのか?」
いいよとでも言う様にプルプルと揺れている。
主人であるシキが別行動中なので今はジルの指示に従う。
「従魔の力だー。それで降ろしてもらったー。」
「そいつは羨ましいなー。石は落とさない様に気を付けるー。」
階段が無いのであれば自分達で掘るしか無い。
気を付けて作業してくれる事になった。
「これで安心して採掘出来そうだな。」
「そうでもないみたいだ。」
ダナンの言葉にジルが上を見上げる。
空間把握を使っていたので上で一人の男が足を踏み外したのが見えた。
「うわあああー!?」
男が悲鳴を上げながら落下してくる。
「まさか落ちてきている!?」
「た、大変です!」
リュシエルとアンレローゼが慌てている。
この高さから落ちたら大怪我は避けられない。
「ライム、助けられるか?無理なら我が魔法を使うが。」
ライムが任せてと言う様にプルプルと揺れる。
そして魔物から得たと思われるスキルを使用して糸を吐き出す。
糸を網の様にして落ちてくる者を受け止める様だ。
「死ぬうううううー!って、あれ?」
落下してきた男性はライムの作った糸網に救われて地面に激突しなくて済んだ。
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