元魔王様と天使族の襲来 8

 ライエルによって放たれる光剣を次々に回避するが際限無く光剣は飛んでくる。


「威勢が良いのは口だけかい?もっと攻めてきなよ!」


 光剣の数と勢いが更に増す。

回避を続けるのにも限界があるそうだ。


「抜刀術・断界!」


「おっとっと、凄い威力だね。でも当たらないと意味ないよ。」


 向かってくる光剣を斬り落としつつライエルにも攻撃を加えたが、軌道線上から避けられてしまった。

既にジルの事を普通の人族とは思っておらず、油断や慢心が減ってきている。


「お前の攻撃も当たってはいないがな。」


「君がうろちょろ動き回ってくれるからね。」


 わざと斬られた時以外に直撃は受けていないのでダメージは無いが、こちらもダメージを与えられない。


「攻撃力も動きも人族とは思えないくらいに良いね。でも接近戦に持ち込めば勝てるなんて甘い考えは捨てた方がいいよ。」


 今まさに距離を詰めようと動くジルに向けて言う。


「近距離でも遠距離でも僕の攻撃方法は変わらないよ。近い程避けるのが難しくなって、遠ければ君の攻撃が届かない。僕の射程は凄いからね。」


「厄介な力だな。」


 自分に向けて振るわれる光剣を銀月で弾き、飛んでくる光剣を回避する。

光剣を自在に操るライエルの戦闘スタイルは非常に厄介だ。


 ライエルはジルとの距離に関係無く、光剣を飛ばす攻撃方法を多用してくる。

近接戦闘であれば高速で射出される光剣の対処が難しくなり、遠距離であればこちらの攻撃方法が限られる。


 ジルにも魔法による遠距離攻撃手段があるが、とにかくライエルの聖痕の力は発動が早い。

火力も上級魔法以上は確実にあるので遠距離で対抗するとなれば上位の魔法の連続使用が求められる事になる。

しかし残る魔力量的にもその選択肢は難しい。


「聖痕は選ばれし天使の特権みたいな力だからね。破格な能力ばかりなのさ。」


「随分と情報をくれるんだな。」


 ライエルは戦いながら知らない情報を幾つか教えてくれる。

それを敵対するジルに教えるのは種族的に不利になる行いだが、ライエルは気にしている様子も無い。


「これから死ぬんだからどれだけ話しても構わないよ。僕に手こずっている様じゃナンバーズを倒すのは難しいからね。二人揃えば確実に君を殺せるだろうさ。」


「ナンバーズとは先程の序列8位とか言うやつか?」


「そんな事も知らないのかい?ナンバーズは人族には有名な筈なんだけどね。それと質問の答えならイエスだよ。」


 人族にとっては遥か雲の上の存在であり関わる事も恐れ多い者達なのだが、そんな事を転生して日が浅いジルが知っている訳も無い。


「ならば少なくとも8人はいるか。」


「構成人数は秘密だけど、10人以上はいるかな。ちなみに3席以上は僕とも別格の強さだから、君なんて瞬殺だろうね。」


「ほう、そんな天使族がいるのか。中々厄介そうだ。」


 ライエルも相当な実力者だがそれを上回るとなると、現在の世界的に見ても上位の実力者と言う事になりそうだ。


「この僕が一度も勝てていないからね。ずるい能力だよ。」


「お前も充分に面倒だけどな。」


「その言葉そっくり返すよ。ここまで粘る人族がいるなんてね。こんなの冒険者のSランク達と遜色無いじゃないか。」


 ライエルレベルの天使族達が唯一警戒する者達だ。

さすがは人外の化け物や国家戦力と呼ばれるSランクである。


「我はDランクだぞ?」


「Dランク?確か冒険者のランクで言うと下の方だった様な?って言うかこの強さでそんなランク帯な訳無いじゃないか。ランク詐欺もいいとこだよ。」


 ついに天使にもランク詐欺と言われてしまった。

実際その通りなので反論する事も無い。


「おっ?魔力が無くなってきたか?」


 話しながらも壮絶な戦いを繰り広げているのだが、ライエルが放ってくる光剣の数や勢いが弱まってきた。

聖痕の発動にも魔力を必要としているので、連続使用で魔力量が大幅に減少しているのかもしれない。


「節約してるだけさ。余力の確保なら充分にあるしね。」


 表情も変わらず隙を見せる様な事は無いので本音かは分からない。

だがライエルの攻撃力が落ちたと言う事は攻めやすくなったと言う事だ。


「ならばその余力も吐き出させてやろう。」


「動きが加速した!?」


 既に全身を魔装していたがその魔力を増やす事でジルの動きが更に良くなった。

必然的にライエルの魔装に回す魔力量も増える事になる。


「そろそろ終わらせるぞ。」


「正直予想外だったよ。人族がこんなに戦えるなんてさ!」


 ジルの持つ銀月とライエルの持つ光剣が何度目かも分からない衝突で激しい火花を散らした。

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