元魔王様と従魔の成長 2

 王都近辺の魔物が生息する森にやってきたジルとホッコは、早速魔物と戦闘をしていた。


「ショックボルトなの!」


 ホッコが初級雷霆魔法を放ってオークを麻痺させる。

実力の低い相手や油断している相手にしか効果が無い魔法だが、オークくらいなら一時的に行動を縛れる。


「てやーなの!」


 麻痺して動けないオークに剣を振り下ろして倒す。


「ウルフも行ったぞ。」


「エレキトラップなの!」


 ジルの言葉で後ろから迫っていたウルフに気付いたホッコは地面に手を置く。

そして地面に電気を発する罠を仕掛けると真っ直ぐ迫ってきていたウルフが罠に掛かる。


「隙ありなの!」


 動きが止まった隙に剣で倒す。


「いい感じだな。初級魔法しかまだ使えないが上手く扱えてるぞ。」


「主様が教えてくれるおかげなの!」


 雷霆魔法の適性を得たばかりだが、魔法を扱う事に秀でている魔物なので成長が早い。


「これなら直ぐにでも中級や上級も使える様になるかもな。」


「本当なの?」


「ディバースフォクスの魔法適性は極級に至れるくらい高いからな。習得速度も相応に早い。」


 三本目の尻尾が二つの尻尾と変わらないくらいに大きくなった頃には適性も最高クラスのものとなっている筈だ。

所持している適性を全て極級魔法まで使える様になる才能をホッコは持っている。


「だからと言って訓練はしないと駄目だぞ?何もしないで成長はしないからな。」


「分かってるの!もっともっと倒して訓練なの!」


 その後も出会う魔物を片っ端から雷霆魔法を使って倒していく。


「たっくさん倒したの!」


「初級魔法とは言え、この辺りの魔物は相手にもならないか。もう少し奥に入って強い魔物を探すか?」


「賛成なの!」


 ランクの低い魔物であれば初級雷霆魔法でも余裕で対処出来る。

それでは少し物足りなかったのでジルの意見に喜んで従う。


「ふむ、オーガか。少し厳しいか?」


「やってみるの!」


 初級雷霆魔法では厳しいかと思ったが、ホッコはものは試しとばかりに前に出る。


「勝負なの!」


「グオオオオ!」


 ホッコが剣を構えてそう言うと、オーガが雄叫びを上げて向かってくる。


「ショックボルトなの!」


 相手を麻痺させる魔法を放つがオーガに当たると同時に霧散してしまう。


「効いてないの!?」


「グオオオオ!」


「危ないの!?」


 オーガの振るう拳を避けつつ距離を取る。

ショックボルトが効かなかったので他の魔法に切り替える。


「エレキトラップなの!」


 地面に手を置いて電気を発する罠を仕掛ける。

オーガが真っ直ぐ向かってくるので罠に掛かって身体に電気が流れるが、威力が低いので全く気にせず突き進んでくる。


「これも効かないの!?」


「やはりオーガは少し早かったか。普通の初級雷霆魔法よりも火力はあるが所詮は初級魔法だしな。」


 ホッコは雷霆魔法が効かないので剣で対処している。

オーガは近接戦闘に長けているので中々良い勝負となっており、このままだと長引きそうだ。


「ショックボルト!」


「グオ!?」


 ジルの放った魔法を受けてオーガの動きが止まる。

麻痺によって行動が制限された。


「ホッコ、今だ。」


「てりゃーなの!」


 その隙を見逃さずホッコがオーガを斬って倒す。


「主様のショックボルトは強いの。」


「まあ、魔力量や適性の問題だな。適性はホッコも負けていないくらい高いから、いずれ強い状態で使える様になるだろう。」


「楽しみなの。」


 ホッコの魔法は今の段階でも一般的な威力と比べると高い方ではある。

ジルの威力が規格外なだけなのだ。


「しかしこの辺りだとホッコの使える雷霆魔法は効かないか。戻るか?」


「それなら主様の雷霆魔法を見てみたいの!」


「我のを?」


 ホッコに丁度良い相手を探すかと考えているとジルの雷霆魔法を見たいと言ってきた。


「雷霆魔法は詳しくないからいっぱい知りたいの!」


「成る程、ならば中級や上級の雷霆魔法を少し見せるとするか。」


 近い将来使える様になる魔法を見せて勉強させるのも悪くないと考えてジルは周囲の魔物で実際に試して見せる事にした。


「ハイオーガなの。」


「単体相手でお勧めはこれだ。中級雷霆魔法、ライトニング!」


 ジルの手から放たれた雷がハイオーガの身体にぶつかると全身に広がって動きを止める。


「痺れてるの!」


「ショックボルトより速いし相手を麻痺させやすい。射程は短いが当たれば強力だ。」


 そう解説しながらハイオーガを銀月で斬り倒す。


「ゴブリンの群れなの。」


「集団相手ならこれだ。上級雷霆魔法、ディスチャージ!」


 わざとゴブリン達に近付いて魔法を使用する。

周囲に放った雷が纏めてゴブリン達を焼き焦がす。


「黒焦げなの!」


「全方位攻撃だから仲間が近くにいる時は気を付けるんだぞ?」


 銀月で仕留めるまでもなく全てのゴブリンが地に伏せていた。


「ジェットバードなの。」


「速い相手には速度を高める魔法だ。上級雷霆魔法、ソニック!」


 両足に電気を纏ったジルが超高速で移動して、素早い魔物に一瞬で追い付き斬り倒す。


「速くて見えなかったの!?」


「一時的に速度を大幅に高める魔法だ。効果時間は短いから気を付けるんだぞ。」


 直ぐに電気は霧散してしまったが、その一瞬で勝負を決められれば問題無い。


「トロールなの。主様、最後は強いのが見たいの!」


「任せておけ。超級雷霆魔法、レールガン!」


 地面から拾った石を魔装して強度を上げ、凄まじい電気で両手を帯電させながらトロールに向かって石を撃ち出す。

放たれた石は轟音を響かせて雷の軌跡を残しつつトロールの身体を消し飛ばして彼方に飛んでいく。


「上半身が無くなっちゃったの!」


「過剰攻撃だったな。」


「沢山雷霆魔法が見れて満足なの!見てたらもっと戦いたくなっちゃったの!」


 早く自分も同じ様な雷霆魔法を使ってみたくてうずうずしている。


「それならギルドにでも行ってみるか?」


「依頼を受けるの?」


「いや、対人戦も経験させようと思ってな。」


 せっかくの機会なので雷霆魔法を使った対人戦をホッコに経験させる事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る