55章
元魔王様と従魔の成長 1
エレノラの治療を終えて数日、そろそろセダンに帰還する為に物資の買い出しや最後の王都観光等をして各々が過ごしていた。
そしてジルとホッコはグランキエーゼの超級神聖魔法の訓練の時をきっかけに毎日魔力量を上げる為に魔法を使って訓練をしていた。
「…ふぁー。」
ジルが快適な眠りから目を覚ます。
今日も快眠で絶好調である。
それは今寝ていたスリープシープの素材が使われたベッドのおかげだ。
早速スリープシープの素材を使ったベッドを依頼して作ってもらったのだが、これがとんでもなく寝心地が良い。
素材は多めにトゥーリから譲ってもらっているので浮島にいる皆にも渡せば喜んでもらえるだろう。
「むにゃむにゃ。」
隣りでは従魔であるホッコが幸せそうな顔で眠っている。
見た目は獣人の女の子なので一緒に寝るのはどうなのかと思っているのだが、従魔だから主人の直ぐ近くにいて当然だとホッコが主張しているのでそのままにしている。
「ん?」
今日もホッコの魔力量の訓練をするかと思って見ていると、捲れた掛け布団から除く尻尾に目が止まる。
見慣れた二つの尻尾は置いておくとして、まだ他の二つに比べると小さいが、確かに三本目の尻尾が生えていた。
「ついに生えたか。」
ジルは満足そうに呟く。
ここのところ魔力量を高める訓練をしていたのはこの為であった。
ホッコはディバースフォクスと言う魔物なのだが、この魔物は尻尾の数だけ魔法の適性を持っている魔物である。
そして成長するに連れて尻尾の数を増やしていき、魔法の適性数も増えていく。
その成長と言うのが魔力量の増加だ。
一定数魔力量が増えるごとに魔法適性が発現していき尻尾も増える。
出会ってからそれなりに経つので、そろそろ魔力量も増えて尻尾が生えるのではないかと思っていたのだ。
「さて、何の魔法が増えているか。」
「う…ん、主様?」
「おはようホッコ。」
「…おはようなの。くぁ~。」
万能鑑定を使おうとしたタイミングでホッコが目を覚ます。
そして挨拶した後に大きな欠伸をしている。
連日の魔法訓練で少し疲れていて寝不足なのかもしれない。
「ホッコ、尻尾を見てみろ。」
「…尻尾なの?」
ホッコが目を擦りながらジルの言う通り自分の尻尾に目を向ける。
そして尻尾をフリフリと動かすと大きく揺れる二つの尻尾と小さく揺れ動く一つの尻尾が目に入る。
「…尻尾が三つ。っ!?尻尾が増えてるの!」
ホッコが大きく目を見開いて驚きながら言う。
そして生えたての尻尾を指でちょんちょんと突っついている。
ディバースフォクスが生まれた時に持つ尻尾は一つなので尻尾が増えるのは久しぶりの経験だろう。
「主様主様、尻尾が増えているの!つまり新しく魔法を覚えたの!」
「ああ、そう言う事になるな。めでたい事だ。」
「嬉しいの!」
ホッコは新しく魔法の適性が増えた事に喜ぶ。
これで更に出来る事が増える。
適性が増える程ディバースフォクスと言う魔物は強くなっていくのだ。
「現段階でも派生魔法を二つも持っている。次に得られる魔法次第では成長したディバースフォクスとしてAランクに位置付けられてもおかしくないな。」
氷結魔法と神聖魔法を持っているだけでもディバースフォクスとして本来のランクよりも高いBランクと判断されるだろう。
そこに更に強い魔法が加われば更にランクが上がってもおかしくない。
と言ってもホッコは変化のスキルを得て人化する事が出来る様になった。
それにより普通のディバースフォクスとは大きく異なる成長を遂げている。
それにより既にAランク並の強さを持っていたりもする。
「どんな魔法でも嬉しいの!でも欲しい魔法があるから、それならもっと嬉しいの!」
「ほう、どんな魔法が欲しいんだ?」
「主様が使っている魔法を使ってみたいの!そう言う魔法だったら嬉しいの!」
どうやらジルとお揃いの魔法が欲しいらしい。
神聖魔法は適性が無く、氷結魔法はあまり使っていない。
なので普段からジルが多用している火魔法や結界魔法なんかが欲しいのかもしれない。
「まあ、なんにせよホッコの力になってくれる事には変わらない。では万能鑑定で視てみるとしよう。」
「ドキドキなの!」
ジルが魔法適性を調べる為に万能鑑定のスキルを使う。
それをホッコが期待する様な目で見てきている。
「ほう、当たりだな。新しく獲得した適性は雷霆魔法だ。」
「雷霆魔法やったの!強そうなの!」
ホッコが新しく手に入れた適性は派生魔法の一つ、雷霆魔法であった。
これで派生魔法を三つも手に入れた事になる。
三つともかなり強力な魔法適性である。
「雷霆魔法は近接戦闘にも活かせるからな。人化した状態での戦闘が更に強化されるぞ。」
「楽しみなの!早速試したいの!」
「ならば今日は雷霆魔法の特訓といくか。」
新しい魔法適性を試す為にジルとホッコは魔物狩りに出発した。
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