元魔王様とスライムテイム 8

 トゥーリに続いてラブリートもスライムのテイムに成功した。


「おめでとうラブちゃん。」


「おめでとうございます。」


「これで目的達成だな。」


「ええ、ありがとう。ラブラックちゃん、おいで。」


 ラブリートが声を掛けるとスライムとは思えない速さでラブラックが動いて肩に飛び乗る。

絶対に逆らってはいけない相手だと認識した様だ。


「これで私にも相棒が出来たわね。」


 嬉しそうに肩に乗るラブラックを撫でている。


「Sランク冒険者がスライムをテイムか。ギルドで話題になりそうだな。」


「スライムって従魔として一緒に過ごしやすいから結構人気があるのよ?それに闇魔法を使ってサポート出来るならかなり優秀だわ。」


 これでラブリートの戦力が更に高まったと言える。

ラブラックがどのくらい成長するかは分からないので今後に期待だ。


「これで渓谷にはもう用は無くなったな。」


「そうなんだけど一応最奥まで見にいってもいいかい?」


 ジルの言葉を聞いてトゥーリが引き返さずに奥まで見に行きたいと言ってくる。


「何故だ?まだスライムが欲しいのか?」


「違う違う、シロルだけで充分だよ。奥まで行きたいのはスライム大量発生の原因排除では無くて、危険なスライムがいないかの確認目的だね。」


「先程の様な危険なスライムが他にもいるかもしれませんからね。誰もがジル様やラブリート様の様に簡単に倒せる訳ではありません。」


 危険なスライムがいた場合村にいる者達では対処が出来無い可能性がある。

それならば安全確保の為に今倒しておこうと言う話しだ。


「領主様も大変ね。」


「ん?何故そこで領主が出てくるんだ?」


「はぁ、君は本当に私に興味が無いね。」


 ジルの発言にトゥーリが深い溜め息を吐いている。


「この渓谷や近くの村も一応セダン領に含まれているのですよ。この地を統治している貴族はトゥーリ様なのです。」


 ジルだけが知らなかったがこの一帯もセダン伯爵領に含まれるらしい。

危険を取り除きたいのは自領の民の安全の為だ。


「領地の中でも端にあるから滅多に訪れられないけどね。」


「成る程、自分の領地の脅威は取り払っておきたいと言う事か。」


「まあ、そう言う事だね。せっかく最強の冒険者が二人もいる事だしさ。」


 ジルとラブリートがいればどんな強敵がいても負ける事は無い。

先程プレデタースライムをラブリートが瞬殺したのを直接目にした事で戦闘に関する不安は一切無くなった。


「仕方無い、付き合ってやるか。」


「私達は護衛だものね。」


 ここで断ってキュールネと二人で行かせる訳にもいかないので、二人共了承してそのまま渓谷を進む。


「ここまでくると珍しいスライムしか見掛けんな。」


「スライム好きが訪れたら大歓喜でしょうね。」


 普通のスライムは存在せず、スライム種の中でも上位のスライムや希少種ばかりだ。


「そろそろ渓谷が終わる筈だけど。」


「トゥーリ様、壁が見えてきました。」


 渓谷の終着点となる行き止まりの壁が近付いてくる。


「おや?壁の近くに大きなスライムがいるね。」


 まるで渓谷のボスの様にそこに存在しているスライムがいた。


「あれは何のスライムかしら?」


「王冠を被ってるしキングスライムじゃないか?」


「多分合ってると思うよ。そしてその予想が正しければスライムの召喚をしていたのもキングスライムかもね。」


 魔物の上位種には同種の魔物を召喚する力を持つ個体もいる。

このキングスライムもその類いだ。


「どうするの?倒す?」


「危険な魔物は倒すと言っていたがあれはどうなんだ?」


 二人がトゥーリに確認を取る。

スライムの上位種ではあるが厄介な個体かと言われれば人それぞれだ。


「普通なら魔物を生み出し続ける存在だから無視は出来無いんだけど、キングスライムだと安全寄りではあるのかな?」


 スライムを生み出し続ける事にはなるが、あまり迷惑は掛かっていない。

それどころか村興しに一役買ってくれているくらいだ。


「直接交渉すればいいんじゃない?」


「確かにそうだな。我らに言葉が分からなくても向こうは理解しているだろうしな。」


「キングスライム、少しいいかしら?」


 ラブリートが早速近付いて声を掛ける。

するとそれにキングスライムが反応して周りの地面に魔法陣が浮かび上がる。

そして魔法陣からスライム種が生み出された。


「いきなり召喚か。穏便に話し合いを提案してやっているのにな。」


 ジルが火魔法を発動させてキングスライム以外のスライムを瞬時に燃やし尽くす。


「次はお前も燃やすぞ?されたくなければ大人しく話しを聞け。」


「今後召喚するスライムは危険なのを除外してもらえないかしら?ちなみにこの条件がのめないのなら…分かるわよね?」


 ジルが腰の銀月に手を掛けて、ラブリートが全身を魔装して迫力を増し、二人でキングスライムを脅しに掛かる。

それが効いたのか慌てた様にぴょんぴょん飛び跳ねている。


「どうやら分かってくれた様だな。」


「やっぱり話し合いって大事よね。」


「話し合い?脅していただけだった様な。」


 キングスライムをあっという間に舎弟とした二人にトゥーリが呆れた様に呟く。

キュールネは心底同意するとばかりにその言葉に何度も頷いていた。

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