元魔王様と国宝級の武具 4
風の結晶石を作るのに必要な素材をジルから受け取ったドメスは、それらをテーブルの上に並べて両手をかざす。
「ではやるぞ。これらを糧に新たな物を生成する、混成のスキル発動!」
ドメスがスキルを使用すると、テーブルに置かれている素材が光り出す。
そして一箇所に集まる様に眩く光る素材達が移動して重なり合う。
全ての光りが重なると更に一際強い光りを発した。
徐々に光りは収まっていき、素材が全て無くなったテーブルの上には一つの緑色の玉が置かれていた。
「ほう、これが混成のスキルか。」
「キラキラした玉に変わったの!」
ジルが感心する様に呟き、ホッコが風の結晶石を見て喜んでいる。
スキルは無事に成功して剣に必要な素材を作り出せた様だ。
「ふっ、どうだ俺のスキルは。」
ドメスが得意気な表情で呟く。
「相変わらずとんでもないスキルですね。素材さえ揃えられればですけど。」
キュールネもドメスと以前から知り合いだったので混成のスキルが使われるところは何度か見ている。
風の結晶石の様な希少な物を生み出す事が出来る混成のスキルは確かに破格の性能だ。
と言ってもドメスが指定する素材が必要不可欠ではある。
「俺が希少な物を作ってやるんだから、それ相応の素材を客側が用意するのは当然の事だ。なのに毎回の様に文句を言ってくる我儘な客ばかりで嫌になる。」
混成のスキルは素材を掛け合わせて新たな物を生み出すスキルではあるが、作りたい物によって必要な素材が変わるので、何でも思い通りに作れる訳では無い。
さすがに希少鉱石を生み出すのに石や土が素材ではどうしようもないのだ。
「我は文句なんて言わないから安心していいぞ。破格の性能を持つスキルには相応の代償が必要だろう。」
「こう言う客ばかりだと有り難いんだけどな。俺を自由自在に希少鉱石や希少素材を生み出す存在と思っている奴が多くてうんざりしていたんだ。」
「成る程な。」
ドメスが溜め息を吐きながら言う。
確かに混成のスキルの噂話しだけを聞けば、そう思う者が現れても不思議は無い。
実際には作る物に相応しい素材が必要になるので、無限に金を生み出す便利なスキルと言う訳では無いのだ。
「もう剣を作れるの?」
「ああ、素材は全て揃ったからな。任せておけ。」
ジルから預かった素材に加えて、今作った風の結晶石をテーブルに並べる。
このテーブルに乗せられている物は、どれもこれもとんでもない金額になる素材ばかりだ。
これらを使って作る剣は非常に贅沢と言わざるを得ない。
「ワクワクなの!」
「どんな剣になるか楽しみだな。」
「国宝級なのは間違い無いでしょうね。」
ジルとホッコがどんな剣になるのかとテーブルに注目してドキドキしており、キュールネが国宝級の武具の誕生に違う意味でドキドキしていた。
「これだけの素材を使って作るのはさすがの俺も初めてだ。楽しみだな。」
そう言ってテーブルの素材に手をかざすドメス。
楽しみと言っているが先程よりもその表情は緊張している。
世界的に見ても価値のある素材ばかりなのでそれも当然だろう。
「それじゃあいくぞ。これらを糧に新たな物を生成する、混成のスキル発動!」
ドメスがスキルを使用すると先程と同じく全ての素材が光り出す。
「ぬお!?」
素材が光るのと同時にドメスが驚いた様な声を出す。
「どうかしたのですか?」
「ま、魔力が、めちゃくちゃ吸われてるんだ!」
そう言っている間にもドメスの手から大量の魔力が素材の方に流れていく。
先程とは違って明らかにスキルの魔力消費が大きい。
使う素材が最高峰の物ばかりなので、それが影響しているのかもしれない。
「ま、まずい。このままだと、魔力切れに。」
今までそんな経験は無かったのだが、初めて混成のスキルを使って魔力が枯渇しそうになっていた。
途中でスキルが中断されてしまっては混成中の素材がどうなってしまうか分からない。
「これ程の素材を無駄にする可能性があるのは見過ごせません。」
キュールネが腰に下げていた袋からポーションを取り出した。
ジルの無限倉庫の様な収納系の魔法道具だ。
「お、おいキュールネ、それをどうするつもりだ?」
「当然魔力を回復して差し上げるのです。魔力回復の効率の良い方法で。無事に仕事が成功するのですから感謝して下さいね?」
「や、やめ、ぐぼお!?」
キュールネがポーションを無理矢理ドメスの口に突っ込んで中身を強制的に流し込んでいく。
ドメスはポーションの不味さから抵抗する様に首を動かしているがAランク冒険者のキュールネに抑えられては成す術も無い。
結局ポーションの中身は全てドメスの体内に注がれた。
味覚を犠牲にして無くなりかけていた魔力が回復する。
そしてそんな拷問紛いな事をされても混成のスキルを無事に成功させたドメスにジルは思わず拍手を送っていた。
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