元魔王様と愛弟子の訪問 5

 二人に一通り浮島を案内し終えたジル達は休憩中だ。

タイプCとサリーが用意してくれた紅茶やお菓子でティータイムを楽しむ。


「まさかこんな島を空に作っているなんて思わなかったわ。」


 ルルネットは今更ジルが何をしても驚かないと言っていたが、実際に浮島を見て回ると何を見ても終始驚きっぱなしだった。

魔の森の無い外周部分で下を見た時なんて悲鳴を上げていた。


「まるで一つの領地の様ですね。」


「住民は圧倒的に少ないけどな。」


 基本的に浮島で過ごしているのはジルの仲間だけなので数は少ない。

協力関係兼住人であるワーウルフはそれなりにいるが、それでも広さ的に見れば少なく感じる。


「どんどん人を増やしていくつもりなの?」


「どうだろうな。成り行き次第なんじゃないか?」


 今回の様に知り合いを招いたりする事も増えるかもしれないし無くなるかもしれない。

その時になってみなければ分からない。


「ふーん。」


「何か言いたそうだな?」


 ルルネットの目が少しジトっとしており声も何か含みがある様に感じる。


「べっつに~。女の子が多いな~って思っただけよ。」


「確かに魔物を除けば男性はジルさんだけですか。」


「偶然だ。」


 確かに男性はジルしかいない。

だが積極的に女性ばかりを仲間にしていると言う訳でも無いので本当に偶然の結果である。


「話しは変わりますがメイドがトレンフルで見た時よりも増えていましたね?」


 気を遣ってくれたのかブリジットが話題を変えてくれる。

先程案内した時に他の住人にも合わせていた。


「タイプAとタイプDだな。」


 トレンフルではタイプBとタイプCしか出していない。

なのでタイプAとタイプDとは今回が初対面だった。


「あの二人も強いの?」


「かなり強いぞ。戦闘狂姉妹でも満足させられるだろう。」


「誰が戦闘狂姉妹よ!」


 ジルの言葉に頬を膨らませているがそう言われても仕方無いだろう。

二人共交戦的な性格をしており実力も相当に高い。

貴族のお茶会よりも騎士との訓練や魔物討伐の方を好んでいるのが何よりの証拠だ。


「ですがお二人に興味があるのも事実ですね。最近は対人戦が物足りなく感じていたので良い刺激になりそうです。」


「後で戦ってみるといい。」


「そうさせてもらいます。」


 早速ブリジットの方はメイドゴーレム達と戦ってみたいと言っている。

相変わらず強い者を見ると勝負をしたくなる性格らしい。


「私はトレンフルで戦ったタイプBとまた模擬戦したいわね。あれから随分と強くなったんだから、今なら良い勝負が出来る筈よ。」


 文句を言っていたルルネットも再戦に燃えている様だ。

やはりこの二人は戦闘狂姉妹である。


「それは楽しみですね。」


「あっ!タイプB!」


 ティータイムをしている場所にタイプBもやってきた。


「タイプB、今暇よね?久しぶりに模擬戦よ!」


「突然ですね。ですが申し訳ありません。今少し取り込んでいまして。」


「えー。」


 再戦に燃えていたルルネットだが残念ながら断られてしまった。

何やら忙しいらしい。


「何かあったのか?」


「美咲様とタイプAから更なるダンジョン開発の為に魔物を狩ってきてほしいと頼まれました。マスターに攻略されたのが余程悔しかったのでしょう。」


「負けず嫌いな奴らだな。」


 以前挑戦させられた浮島の美咲のダンジョン。

攻略を前提として考えていないダンジョンを作ったと言っていたがタイプDと共に最下層のボスを倒す事が出来た。


 タイプA曰くアンドロイドγを突破出来る程の火力をタイプDが出せるのは想定外だったらしい。

そこから今度こそ絶対に攻略されないダンジョンを作ろうと二人で色々と試行錯誤しているのだ。


「と言う事でこれから魔の森で少し狩りをしてきます。」


「面白そうね!私も行くわ!」


「ルルネット様がですか?」


 魔物狩りに名乗りを上げたルルネットにタイプBは首を傾げる。

客人だと伝えられていたので雑用をやりたがるのが不思議なのだろう。


「セダンの魔の森には興味があったのよ!ダンジョン以外で沢山の魔物と戦える機会なんて滅多に無いもの!」


「成る程、そう言う理由ですか。マスター、どうしますか?」


「もう私も一人でしっかり戦えるわ!心配は無用よ!」


 マスターであるジルの意見を求めてくるタイプB。

それを見たルルネットはもう立派に一人で戦えるのだと主張してくる。


「ならば今の弟子の実力を把握する為に我も付いていくとしよう。どれだけ成長したのか見せてもらうぞ?」


「いいわ!ジルの驚く顔が楽しみね!」


 元々ルルネットは自分がどれだけ成長したのかをジルに見せたかった。

なので強い魔物相手に披露出来るのなら好都合である。


「それでは私も食後の運動を兼ねてお供します。魔の森に関しては私も興味がありますから。」


「それじゃあ皆で魔の森で魔物狩りよ!」


 戦闘狂姉妹を引き連れてジル達は浮島の魔の森へと向かった。

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