59章
元魔王様とスライムテイム 1
温泉石や勇者の武器を入手したジルはその後温泉を満喫した。
全員が大満足した翌日、町を出発して再びセダンの街を目指す。
特に問題も無く1週間程馬車は順調に進んだ。
「そろそろ私が言っていた村が見えてくる筈だよ。今日はその近くで野営かな。」
「そう言えば何か面白い事が起きてるとか言ってたわね。」
「結局内容は聞いていなかったな。」
ラブリートと同じくトゥーリも帰りの道中で立ち寄りたい場所があると言っていた。
王都でその村についての情報を聞いたらしいのだが、ジル達は後のお楽しみと言われてまだ内容を聞いていなかった。
「もう直ぐ到着するし話しておこうか。実はその村に近い渓谷でスライムが大量発生しているらしいんだ。」
「それの何が面白いの?」
「そのスライムなんだけど、種類がとにかく多いらしいよ。珍しいスライムから危険なスライムまで色々いて、中には滅多に見れない希少なスライムまでいるって話しさ。」
スライムは種類が多い魔物であり、まだまだ未発見の種も多いのではないかと言われている。
そんなスライムが大量発生しているので注目が集まっているのだろう。
「なので各地からスライムの研究者、捕獲に長けた冒険者、テイマー志望が多く集まっているらしいです。」
「スライム種は全体的に攻撃力が低いから、ちょっとしたお祭り騒ぎだね。村も人が沢山来てて賑わっているらしいよ。」
魔物の中でも比較的に弱い部類だからこそ、お祭り騒ぎで済んでいる。
これが他の魔物であれば村が滅ぼされる危機と大騒ぎだっただろう。
「そこに寄ってどうするんだ?」
「希少なスライムでも捕まえて売るのかしら?」
もし希少なスライムでも見つけられれば、研究者にかなりの高値で売れるかもしれない。
「ちっちっちっ、お金稼ぎが目的では無いよ。その渓谷ではスライム種が大量発生している代わりに他の魔物が全然見当たらないらしいんだ。そしてスライム種は魔物の中でも弱い部類。」
「つまりトゥーリ様はテイムを希望されているのです。スライム種しかいなければテイムはそれなりに安全に行えると説得されまして。」
キュールネが困った様な表情で言う。
弱いと言っても魔物は魔物だ。
貴族の当主であるトゥーリに危険な事をしてほしくないのだろう。
「私が命に変えてもお守り致します。」
「嬉しいけどエレノラも命は大事にね?」
キュールネと違ってトゥーリのテイムを応援しているエレノラが言う。
どんな危険があっても必ず守ってみせると宣言している。
「スライム種をテイムしたいから付き添えと言う事か。」
この一行には最強の冒険者が二人も揃っている。
スライム程度どんなものが出てきても不覚はとらない。
「この旅でジル君にたっぷりと見せつけてもらったからね。もう我慢は出来無いのさ。」
ホッコの事を言っているのだろう。
見せつけたつもりは無いがこの度で従魔の良さに改めて気付いたのだろう。
「ホッコなら今も愛でさせてやっているではないか。」
現在も魔物の姿でトゥーリの膝の上でホッコは撫でられている。
馬車での移動中は定期的にそうやってトゥーリの癒し担当となっているのだ。
「セダンに到着したら終わっちゃうでしょ?私も従魔が欲しい!」
「領主が従魔をね。」
「私は少なからず危険なので反対したいのですが、従魔が常に側にいれば多少は安全だと言う意見も理解出来まして。」
スライムと言っても様々な種類がいる。
中には特殊な力を持ったスライムもいるのでテイム出来ればトゥーリを守ってくれるかもしれない。
「私はトゥーリ様のしたい事をさせてあげたいです。」
「さすがはエレノラだ。ちなみにシズクは中立だったね。そこで最強の護衛が二人もいる今なら安全だからって説得してキュールネに納得してもらったんだ。」
「お二人が同行して下さるのならばと言う条件で許可しました。」
キュールネとしては確実に安全な状況下で無ければ許可は出せないと言ったところなのだろう。
「と言う訳でお願い!」
トゥーリが両手を合わせて拝む様に頼んでくる。
「やれやれ仕方無いな。まあ、希少なスライムとやらにも多少興味はあるからな。」
「私もいいわよ。良さそうな子がいたら一緒にテイムしてみようかしら。」
ジルもラブリートもトゥーリのお願いを了承する。
ラブリートに至ってはテイムも考えている様だ。
「ラブリートがスライムをテイム?」
「私も従魔に興味はあるのよ?戦闘よりはサポート面でだけどね。」
純粋な戦闘においては既に申し分無い力を持っているので従魔が役に立てる事は無いだろう。
なのでそれをサポート出来る力を持つスライムがいればテイムしたいらしい。
「国家戦力をサポート出来る様な優秀なスライムがいるか?」
「希少なスライムってのに期待しているわ。」
現地に着いてみなければ分からないがラブリートが希望するスライムももしかしたらいるかもしれない。
「私もついにテイマーになれるんだ。」
テンションが上がるトゥーリを乗せた馬車は件の村に到着した。
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