元魔王様とオークションでの再会 10
オークションに出品された奴隷の目玉商品が、まさかの知り合いであるナキナだった。
出品が会場で飛び交う中でステージ上にいるナキナは、絶望に染まった表情をしている。
奴隷となった自分が今後どうなるのかと考えれば、明るい未来なんて想像出来る訳が無い。
しかし奴隷となった自分にはどうする事も出来ず、ただ訪れる暗い未来を待つ事しか出来ない。
「お前達あそこの鬼人族の嬢ちゃんと知り合いなのか?」
二人の反応を見てダナンが尋ねてくる。
「ああ、前に知り合う機会があってな。もっともその頃は奴隷では無かったが。」
「なんで奴隷になってるです!?」
シキは訳が分からないと言った様子で頭を抱えている。
集落でナキナ達と別れてから数ヶ月くらいでそれ程時間が経っている訳では無い。
その期間でどうすればこんな境遇の変化が訪れるのか分からない。
「非合法な奴隷狩りにでも捕まったか?」
表向きには奴隷狩りは禁止されている行為だ。
しかしその裏でバレない様にやっている者は多い。
ジル達が鬼人族の集落に行くきっかけも人族の奴隷狩りだったので可能性はある。
「そんなヘマは犯さないのです。」
ナキナの実力を知っているシキがあり得ないと否定する。
確かにナキナがこそこそと奴隷狩りをする様な者に負ける姿は想像出来無い。
「それに一人だけこんな場所にいるのも謎だな。」
例え奴隷狩りにあったとしたらナキナ以外に鬼人族がいてもおかしく無い。
しかしオークションに出品されている鬼人族はナキナだけだ。
一人だけ奴隷狩りに合う状況もあるかもしれないが、ナキナに限っては難しいだろう。
あのナキナを捕まえるなら高ランク冒険者が複数人は必要となるし、非合法な奴隷狩りに高ランク冒険者達が何人も協力するとは思えない。
それにバイセルの街は鬼人族の集落からそれなりに離れた場所にある。
この街でナキナがオークションに出品されているのも謎である。
「それでどうするんだ?知り合いだと言っても力付くで取り返す様な真似はここでは難しいぞ。」
オークション会場には貴族や商人と言った者が多い。
争いや揉め事の対策として警備が厳重であり、ボディーガードや傭兵が多い。
と言ってもジルからすれば特に問題にならないのだが、無駄な騒ぎは起こしたく無い。
「オークションなのだから正攻法で取り返せばいいだろう。」
話している間も少しずつ入札額は伸びていき、既に300万G目前まで迫っていた。
ナキナを落札したいと思っている者は多そうだ。
「300万G!」
ジルが番号札を掲げながら入札を宣言する。
数万Gずつ上がっていたがついに大台となる額までジルが引き上げた。
さすがにここまでの額となると入札する者も減ってくる。
「さあ、43番様から大台の300万Gが出ました!他にいらっしゃいませんか!」
司会が会場を見回して言うとまだまだ勝負はこれからだとばかりに次々と番号札が掲げられる。
「301万G!」
「303万Gです!」
ジルの宣言を受けても引き下がらない者達はまだいる。
財力のある者達にとってはまだまだ戦える金額なのだろう。
そして昨日の若様もしっかり被せて入札してきている。
「400万G!」
「なんと43番様が一気に入札額を吊り上げました!他に入札は御座いますか!」
バイセルのオークションの奴隷での過去最高入札額は300万Gくらいなので進行役含めて知っている者達は密かに驚いていた。
既に大幅にその額を更新しているが、優秀な奴隷と言っても奴隷一人に払う値段としては破格だ。
さすがにこの値段ともなると会場中からあった入札もかなり減ってきたがそれでもまだ入札はある。
「ジル、そんなに高い入札して大丈夫なのか?オークションは終わったら即金だぞ?」
入札額をポンポンと吊り上げているジルにダナンが忠告する。
即金で支払われなければ罰金を課される事もあり、最悪は牢屋にぶち込まれる可能性もある。
金も無いのに入札すれば恐ろしい事になってしまうのだ。
「問題は無い。別の目的ではあったが、金は結構貯めているのだ。500万G!」
入札しながら問題無い事を告げる。
ダナンのおかげでミスリルインゴットを売却出来て、売り上げの金はたっぷり貰っている。
他にも依頼で稼いだ分やフライドポテトによる売り上げのマージンと稼ぎはあり、貴族の財力に並ぶ程に儲けていたりする。
「600万G!」
若様を加えて更に二つ程入札があったが、今のジルの入札で他二人は諦めた様だ。
既に奴隷の過去最高入札額の倍の値段にまで吊り上がっており、会場もその金額に盛り上がっている。
「601万Gだ!」
「わ、若様これ以上は!」
「持ってきた資金が尽きてしまいます!」
若様が引き下がってたまるかとばかりに入札宣言するが周りの騎士達は随分と焦っている。
小声ではあるがジル達の場所にまで言い合いが聞こえてくるくらいであった。
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