元魔王様とスライムテイム 11.5
スライムが大量発生する様になった渓谷。
その場所を遠方から魔法道具で監視していた男がいた。
「はぁ~、つくづく貴方は私と縁がありますねイレギュラー。」
フードを目深に被った全身黒一色の服装に覆われた男が溜め息を吐きながら呟く。
この場でとある実験を行なっていたところ、ジルが渓谷付近の村に現れて、先程実験中だった魔物を討伐していったのだ。
もはや何かの運命でもあるのではないかと言う程の遭遇率だ。
ジルによって潰された計画は数知れず、黒フードの男にとっては嫌な運命である。
「まあ、倒されてしまいましたがこれの効果は確かめられましたし良しとしましょうか。」
その手には真っ黒な短剣が握られている。
ジルが村に持ち帰って解体されたスライーターの体内に入っていた短剣と同じ物だ。
「強化されれば魔物を喰らい力を奪うスキルを得ると。長期的に育てられればかなり厄介な魔物に仕上がりそうですね。」
スライーターは黒フードの男が短剣によって生み出した強化された魔物だ。
数時間スライムを餌にさせただけで中々の強さを得ていた。
龍聖剣が無ければホッコでも対処は難しかっただろう。
「それにイレギュラーと対峙させられたのも悪くはありませんでしたね。元々イレギュラーの為に準備した物ですし。」
前に邪神教の集まりの際にジルを野放しにしておくのは危険であり、何かしらの手を打つ必要があると言う話しになった。
そして男が対策として用意したのがこの短剣だった。
自分達でジルと戦うのはかなりのリスクがあるので、強い魔物を生み出して代わりに戦ってもらおうと言う考えだ。
どれくらい使い物になるか分からなかったので実験していたところ、偶然ジルが渓谷にやってきたと言う訳だ。
「ですが回収されたのは痛かったですね。仕方無いのでしょうけど。」
スライーターは短剣ごと回収したかった。
ジルに持っていかれたのは誤算である。
取り返しに向かおうかとも考えたのだが、得意の陣形魔法が過去に封じられた事もあって、単独での勝機は薄いと判断して諦めた。
「魔物の制御は難しそうですし、もう少しデータを揃えてからベースとなる魔物を選定するとしましょうか。元が強ければ更に厄介な魔物になりそうですしね。」
この呪いの短剣を作るのはそれなりに時間が掛かるので、まだ数が揃えられていない。
計画を進行するのはまだ先の話しとなりそうだ。
「強化薬に呪いの短剣、まだまだ切り札は沢山欲しいところですね。」
どちらも量産体制に入っている。
人と魔物を強化する重要な魔法道具だ。
活動を続けていくにあたって必要となる場面は多くなる筈だ。
「邪神様、貴方の復活にはまだ掛かりそうです。ですが我々が必ず復活を成し遂げて見せます。その際には神の御業で…。」
もう渓谷に用は無くなったので黒フードの男はその場を立ち去った。
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