元魔王様とダンジョン探索 4
どちらともジルとのお出掛けを譲るつもりは無い様子だ。
「タイプC、貴方は紅茶の淹れ方だけで無く、他にもサリーに色々と習っておきなさい。魔物が蔓延るダンジョンでは戦闘型の私の出番です。」
「タイプB、貴方こそ模擬戦ばかりでメイドとしての修行が足りていないのでは?それにダンジョンには解析兼支援型の私の方が向いてます。」
どちらも譲るつもりは無い様子だ。
魔物が大量にいるダンジョンではその分戦闘の機会が増えるのでタイプBの言い分も分かる。
そして外とは違い珍しい魔物がいたり罠の類いもあるので、調べる事に長けているタイプCの言い分も分かる。
「ルルネット、お前が決めろ。」
「えっ!?私!?」
突然ジルに指名されて驚きながら自分を指差している。
言い合いをしていた二人もその言葉でルルネットを見る。
「お前の安全確保の為に連れていく護衛だからな。好きな方を選ぶと良い。」
「え、え~っと。」
ルルネットは悩む様に二人の事を見る。
「ルルネット様、近接戦闘には自信があります。私こそが貴方の護衛に相応しいです。」
「ルルネット様、ダンジョンの凡ゆる魔物を解析し支援出来る私の方が活躍致します。」
二人が詰め寄る様にアピールしていく。
子供を前に見た目大人の二人が詰め寄る光景は中々の圧を感じる。
「じ、じゃあタイプCの方にお願いしようかな。」
二人の圧に後退りながらルルネットが判断を下す。
それを聞いてタイプCは勝ち誇る様に胸を張り、タイプBはがっくりと肩を落とした。
「ちなみにどう言った理由で選んだんだ?」
「戦闘はジルや私も出来るからサポートのタイプCがいてくれたら助かるかなって。それにタイプC自体も私より強いし。」
タイプBは確かに戦闘に優れている。
だがダンジョンでは何が起こるか分からない。
戦闘能力だけで無く後方支援がいた方が良いと考えた様だ。
「と言う事だタイプB。諦めてメイドの技術でも磨いておいてくれ。」
「畏まりました。こうなればメイド力で差を付けてみせます。」
ジルに言葉を掛けられると直ぐにタイプBは立ち直った。
そしてタイプCよりも優れたメイドとなるべく、決意に満ちた目をしていた。
屋敷で報告も済んだのでルルネットを引き連れてジルはギルドに向かう。
ダンジョンに入る為の探索許可証を貰う為だ。
ダンジョンの入り口には魔法道具が設置されており、出入りした者を探索許可証で把握している。
これにより中々戻ってこない者がいたりした場合、捜索隊が派遣されたりする。
探索許可証はダンジョンに入れる実力があると認められれば誰でも手に入れる事が出来、冒険者はダンジョンに入るのならば死傷者を減らす為に取得する事が義務付けられている。
ギルドを訪れるとサザナギが用意してくれていたので直ぐに受け取る事が出来た。
その際にルルネットが同行している事に驚いており、ダンジョンに向かうのならばくれぐれも気を付ける様にと言われた。
ルルネットはこの街の領主の娘にして貴族なのだから、領民としてはまだ幼いルルネットを心配してしまうのだろう。
充分に気を付ける事を約束してギルドを後にする。
「さて、次は船だな。」
ダンジョンはトレンフルの街から海に少し進んだところの小島にある。
海には普通に魔物もいるので泳いで行くのは無しだ。
「でもクラーケンがいるんでしょ?誰も船なんて出してくれないと思うわよ?」
危険な魔物がいると分かっていてその場所に自分の船を出す者はいない。
そんな事をすればクラーケンに船を簡単に壊されてしまい大損となってしまう。
そんなリスクを誰も負いたいとは思わないだろう。
「手漕ぎボートとか借りれないのか?」
「そのくらいなら貸してくれるかもね。私が交渉してあげるわ!」
ダンジョンのある小島を目指す為に砂浜に到着すると近くの人にルルネットが声を掛けて頼んでくれた。
かなり驚いた声が聞こえてきたのでルルネットが貴族だと分かっているのだろう。
話しが終わるとルルネットが振り向いてピースサインをしてきた。
貴族効果か無事に借りられた様だ。
「ルルネット様、くれぐれもお気を付け下さいませ。」
手漕ぎボートを貸してくれた人が言ってくる。
クラーケンが出る事は知っているのでルルネットを心配しての言葉だろう。
「分かっているわ。それと戦いの余波があるかもしれないから、少しの間砂浜にはあまり人を近付けさせない方がいいかもしれないわよ。」
「分かりました。クラーケンの事は誰もが知っていますし、これからダンジョンに行こうとする者もいないでしょう。今日のところは航海中止として知らせを出しておきます。」
ぺこりと頭を下げて貸してくれた者が去っていった。
手漕ぎボートも手に入ったし、これでダンジョンのある小島に向かう事が出来る。
「それじゃあ出発しましょうか!」
「そうだな。さっさと漕いでくれ。」
「え?私が漕ぐの?」
漕ぐ役目を自分がやるとは思っておらず、ルルネットが自分を指差して尋ねてきた。
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