元魔王様と天使族の襲来 2
ダナンから刀を受け取ったジルは浮島へと戻る。
浮島は出来たばかりなので建物を幾つか建築する必要があり、タイプBも伐採の手伝いをしてくれている。
「タイプB、少しいいか?」
「マスター、何か御用でしょうか?」
大鎌を振るうのを止めて振り向く。
その後ろでは大量の木が音を立てて倒れている。
「トレンフルにいた時のダンジョンでの競争を覚えているか?」
「リビングアーマーのドロップアイテムを集めた時の事でしたら記憶しています。」
その時はタイプBもジルから賞品を貰えると聞いて張り切っていた。
「その時の賞品を渡そうと思ってな。」
ジルが鞘に入った白焔を無限倉庫から取り出して差し出す。
するとタイプBが嬉しそうな表情を浮かべる。
「本当に頂いても宜しいのですか?」
「当然だ、タイプBの戦力強化は我にとっても有り難い事だからな。」
「マスターのお役に立てるように使いこなしてみせます。ありがとうございます。」
タイプBが深々と頭を下げてから刀を受け取る。
早速鞘から抜いて刀身を見ながらうっとりとした表情を浮かべている。
既に気に入ってくれた様だ。
「綺麗な刀ですね。」
「名は白焔と言う。我も手を加えて魔法道具にしておいたから相当な業物となっているぞ。」
高純度のミスリルとドラゴンの魔石と言う最高の素材同士から作られた刀だ。
売ればどれだけの値が付くか想像も出来無い。
「これならどんな魔物でも断ち切れそうです。タイプC、少し模擬戦をしませんか?」
新しい武器を得たので早く使いたくてしょうがない様子だ。
「私はシキ様に頼まれて建築中です。魔の森にでも行ってくればいいでしょう?」
タイプCが連動外装の両手で丸太を組み上げながら言う。
忙しい自分では無く魔物を狩ればいい。
「あんまり急がないから休憩ついでに模擬戦してもいいのです。」
シキは無限倉庫の封印指定した物の中から浮島に使えそうな物を選ぶのに忙しい。
かなりの量があるので少しくらい建物作りが遅れても問題無い。
「シキ様からの許可が得られましたね。」
「私は模擬戦よりも家作りの方が楽しいのですが。」
タイプCはあまり乗り気では無い様子だ。
元々の役割りも戦闘と言うよりは補助なのでそう感じるのかもしれない。
「ふっ、新たな武器を授かった私に負けるのが怖いのですか?」
「…いいでしょう、我が連動外装によって捻り潰してあげます。」
煽られたタイプCが手を握ると連動外装の手に持っていた丸太がバキバキと音を立てて握り潰された。
補助メインと言うだけで戦えない訳では無い。
タイプCも相当な戦闘能力を持っているのだ。
二人は少し離れた場所に移動して早速戦い始める。
どちらも実力が高いので戦いの余波でせっかく建てた建物が壊れないか少し不安ではある。
と言っても建てたのは二人なので、自分達で直してくれるだろう。
「これで賞品の件は残り一つだな。」
「クォン?」
ジルが肩に乗るホッコを見ると首を傾げている。
「人化のスキルが中々入手出来無くて悪いな。」
「クォン。」
ホッコは全然気にしていないと言った様子だ。
実はスタンピードで極級魔法を使って魔物を倒した時にスキル収納本を身に付けて人化のスキルの獲得を狙ったりはしていた。
しかしあれだけの魔物を倒しても出てはくれなかった。
「異世界通販で高いのを購入してもいいんだが、浮遊石で金を使い果たしたから無いんだよな。やはり魔物から得られると有り難いが。」
「クォンクォン。」
「ホッコ殿は急がないと言っているみたいじゃのう。」
ホッコの言葉をライムが通訳してナキナに伝えている。
「気持ちは有り難いんだがホッコだけをいつまでも待たせるのもな。明日はスキルを狙う機会があるからそれで駄目なら異世界通販のスキルを使う事にしよう。」
「明日何をするのじゃ?」
「レイアとテスラの二人と魔の森で依頼をする予定なんだ。そのついでに魔物を狩りまくってみようかと思ってな。」
元配下の二人はセダンの街で冒険者登録をしてから順調に成果を上げており、既にジルと同じDランクになっている。
二人もジルと同じでこれ以上ランクを上げるつもりは無い様なので、詐欺ランクと呼ばれる者達がまた増えた事になる。
「ほほう、金策にもなりそうじゃな。妾も素材の回収くらいなら手伝えるぞ?」
明日の予定は特に無いので、浮遊石で失った貯金の回復にナキナも協力を申し出る。
「それは有り難いな。ナキナには影丸に乗りながら倒した魔物の回収を頼むとしよう。人化のスキルを狙いたいからなるべく深く潜って様々な魔物を狩りたいしな。」
スキル収納本で人化のスキルを得られなかったとしても素材を大量に拾っておけば、それを売却したお金で人化のスキルを買える。
素材を素早く回収出来る人材は有り難い。
「人化のスキルが出るといいのう。」
「クォン!」
ホッコもスキルが手に入るかもしれないと聞いて上機嫌に鳴いていた。
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