元魔王様と異世界の料理 5

 フライドポテトを食べて同様の感想を述べた後、直ぐにジルは二つ目三つめと食べていき、シキもパクパクと食べ進めていく。

そしてリュカは一口目を食べて固まっていた。


「こんなに簡単に作れたのに、凄く美味しい…。幾らでも食べられそう…。」


 あっという間に作った料理がこんなにも美味しくなるとは思わずとても驚いていた。

高価な調味料である塩の存在も大きいが衝撃を受ける美味しさであった。


「別に幾らでも食べていいぞ。感想も聞きたかったが、その様子では聞くまでも無いな。」


「うん!凄く美味しいよジルさん!」


 リュカもジル同様に次々と食べ進めていく。

シンプルな料理だが一つ食べると直ぐに次が食べたくなるのがフライドポテトだ。

文字通り三人の手が止まらない。


「あっという間に無くなっちゃったのです。」


 リュカの休憩時間を待っていたので、昼食からはそれなりに時間が経っている。

なのでちょうど小腹が空いていた事もあり、直ぐにフライドポテトは無くなってしまった。


「リュカ、追加を頼めるか?」


「任せて、直ぐ作るから!」


 シンプルな料理なので、リュカも一度で覚えた様だ。

追加のフライドポテトを直ぐに作り上げる。

だがそれも直ぐに無くなり、その後も作っては食べを繰り返していく。


 当然そんな事を繰り返していれば塩も大量に消費する訳で、結局高価で使う事を躊躇っていた塩が入った壺の中身は全部無くなってしまった。


「ふぅ、満足だ。」


「満腹なのです。」


 異世界の料理であるフライドポテトを存分に食べて大満足のジルとシキ。


「フライドポテト…。なんて恐ろしい料理なの…。」


 ジルとシキの二人とは対照的にリュカはプルプルと震えていた。

あまりの美味しさに食べる手が止まらずにパクパクと大量に食べてしまったのだ。


「太っちゃう…。」


 飯時でもないのに大量のフライドポテトを食べてしまい、しかも普段からは考えられない程の塩分を一度に沢山摂取してしまった。

そして初めての揚げ物料理と言う事でリュカは知らなかったが、揚げ物は油を大量に含んでいる分カロリーが高い。


 看板娘と言われるリュカは可愛いだけで無くスタイルもかなりいい。

しかしそんなリュカのお腹が普段よりも少しだけ膨らんでいる様に感じられる。


「このままじゃ、お母さんみたいになっちゃう~!」


 女将のふくよかな体型を想像して、自分もこのままでは同じ運命を辿ってしまうとリュカは頭を抱える。


「失礼な子だね。」


「痛っ!?」


 突然頭に痛みが走り、リュカは涙目になりながら後ろを振り向く。

すると買い物を終えた女将が帰ってきたところだった。

拳を握っているところを見ると、先程のリュカの失礼な発言が聞こえたのだろう。


「ん?随分と芋の皮があるね。料理に使ったのかい?」


 厨房に置かれた芋の皮に気が付いた女将が言う。

何皿もフライドポテトを作ったので、芋の皮も大量に量産されたのだ。


「ああ、新作の料理を作ってもらってたんだ。」


「その様子だと成功したみたいだね、…ん?」


 女将はテーブルの上に置かれた塩の入った小さな壺に気が付く。

蓋が開けられており、近付いて持ち上げ覗いてみる。

当然フライドポテトに全て使ったので、中身は空っぽだ。


「ちょっとリュカ!塩が無くなってるじゃないか!?」


 買い出しにいっていて状況が分かっていない女将がリュカに言う。


「ああ、うん。料理に使ったの。」


「それなりに入ってたのに全部かい!?」


 小さな壺と言ってもまだ何日分かの食事処で出す料理に使う分はあった。

だが帰ってきてみれば、それが全て無くなっているのだ。

女将が驚くのも仕方が無いだろう。


「落ち着け女将、指示したのは我だ。それに塩なら買って返す。」


 自分の指示なのにリュカが怒られるのは申し訳無いので、女将に落ち着く様に言う。


「そ、そうだったのかい。それならいいんだけど、夕食に間に合うかい?」


 ジルの言葉を聞いて少しは落ち着いた様だ。

これから夕食の準備があるので当然塩は必要になってくる。


「今から我が買ってこよう。」


 迷惑は掛けられないので、準備に間に合う様に買ってくるつもりだ。


「それならいいんだけどね。それにしてもあれだけの塩を全部使うって、どんな料理なんだい?美味しかったのかい?」


 女将も料理を毎日の様にするので気になっている様だ。


「うん!お母さんも絶対気にいるよ!」


 リュカはフライドポテトの美味しさを思い出しながら激しく肯定する。


「そんなにかい?」


「一皿取っておいたから食べてみるか?」


 女将も興味を示しているので、無限倉庫のスキルでフライドポテトの乗った皿を取り出す。

後から食べる用として避難させていた物だ。


「ジルさん、いつの間に。」


「いいのかい?」


 そう聞いてくる女将だが、表情から早く食べたいと言う感情が伝わってくる。


「ああ、我らは沢山食べたから、女将も食べてみるといい。」


 そう言って皿を渡してやる。

ジル達が絶賛する新しい芋料理に期待しながら、女将はフライドポテトを一つ食べる。


「っ!?」


 フライドポテトの美味しさに女将の目が大きく見開かれる。

そしてジル達同様、皿の上からフライドポテトが無くなるのに時間は掛からなかった。

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