元魔王様と孤児救済の魔物狩り 7
目的であるグレートバッファローの討伐を終えたジル達は、解体作業も終わったので王都に戻る。
なんとか日が落ちる前に辿り着く事が出来て門限にも間に合った。
「あれだけのグレートバッファローを全て日帰りで持ち帰れるとは思わなかったわ。」
「収納スキル持ちは羨ましいね。」
美酒の宴や孤児達がグレートバッファローを次々に無限倉庫に収納していくジルを見て驚いていた。
何かしらの持ち帰る手段は用意してあると思っていたが、解体した大量の肉や素材を全て収納出来るとは思わなかったのだろう。
「この後は換金っすか?」
「そうだな、魔石や素材は全て売り払うつもりだ。」
肉は美味しいらしいので売るつもりは無い。
余っても時間経過の無い無限倉庫があるので腐らせる心配も無い。
「相当な金額になりそうよね。」
解体したグレートバッファローは、魔石、角、革、骨と売れる部位が多い。
高ランクの魔物はその全身が素材として価値があるので今回は大金である。
ギルドに到着すると冒険者が依頼の報告で増える時間帯となっており受付が混んでいる。
それでも受付の数が多いので冒険者を次々にさばいていく。
「あら、お戻りですか。」
「ああ、依頼の手続きを頼む。」
ユメノにDランクの依頼書にあった納品物を渡す。
「あっ、ちゃんとやってきてくれたんですね。」
「依頼を受けたんだから当然だろう?」
「まだやるんですかその茶番。それでグレートバッファローは狩れたんですか?」
依頼の手続きをしながらユメノが尋ねてくる。
そちらの方が気になっている様子だ。
「ああ、依頼中に襲われたからな。やむなく迎撃した形だ。」
ジルの言葉に離れた場所で聞いていた美酒の宴の三人がなんとも言えない顔をしていたが、ホッコが襲われたのを助けていたのは事実だ。
それでもやむなくと言うよりは、肉を一番に考えて嬉々として狩っていた様にしか見えなかった。
「何はともあれ皆さんが無事なら良かったです。はい、こちらが依頼の報酬ですね。」
「続いて素材の買い取りを頼みたいんだがいいか?」
報酬を受け取るがメインはこちらだ。
「グレートバッファローの素材ですか?」
「ああ、解体は終わっている。」
「分かりました、それでは倉庫に移動しましょうか。」
大人数でぞろぞろと移動するのもあれなので、素材を持っているジルだけがユメノと倉庫に向かう。
セダンのギルドの倉庫と比べると何倍もの大きさの倉庫となっており、大量の素材や解体作業が行われている。
「こちらにお願いします。」
「分かった。」
空いているスペースにグレートバッファローの素材を取り出していく。
「えっ?ちょ、ちょっと待って下さい!?」
「どうした?」
「どうしたって、一体どれだけ狩ってきたんですか!?」
次々に取り出されるグレートバッファローの素材に思わずユメノの声が大きくなる。
明らかに数体の規模を超える量の素材が取り出されているのにジルが止める様子が無い。
「数十体はいるぞ。群れで襲ってきたからな。」
「群れのグレートバッファロー…。それを平然と倒して持ってくるとは…。」
ユメノは驚きながらもセダンのギルドで優遇されている理由が分かった気がした。
優秀な冒険者であればギルドが手放さない為に優遇措置を取る事はあるが、その大半はSランクの冒険者となる。
そしてセダンのギルドはジルが人外の強さを持つSランクに並ぶと判断したのだ。
出会って間も無いユメノも今回のジルの成果でその一端に触れて、普通の冒険者では無いと分かった。
「これで全部だな。」
「こんなに狩ってくるのは予想外過ぎました。査定に時間が掛かってしまいますけど、今日中にはお渡し出来ると思います。」
早速手の空いている査定員を複数呼び寄せて素材の査定作業を頼んでいる。
全て同じ魔物ではあるが、その量に全員が驚いていた。
「ならその間に肉を食べさせてやりたいのだが、どこか良い店を知らないか?」
「そういえば子供達にお腹一杯食べさせてあげると言っていましたね。うーん、この時間は持ち込んでも調理してくれるかどうか。」
「それもそうか。」
夕方は飲食店も忙しくなってくる。
肉を持ち込んで調理を頼んでも急に引き受けてくれるかは分からない。
「もしよろしければ私がやりましょうか?」
「ユメノが?」
「簡単な串焼きくらいしかお出し出来ませんけど。ギルドには素材と一緒に肉を持ち込まれる方も多いので、簡単な料理をする場所も設けられているんですよ。」
保存の効かない肉は冒険者達が打ち上げついでに食べたり、ギルドの職員が売れ残りを調理して食べたりするので、自分達で料理出来る様にと王都のギルド内に作られたのだ。
「串焼きで構わないから頼めるか?」
「はい、受け付けは人が多いですから一人くらい抜けても問題ありませんしね。」
「それは助かるな。礼と言う訳じゃないがユメノも一緒に食べるといい。」
「いいんですか!?」
キラキラとした視線をジルに向けてきている。
グレートバッファローの肉は美味しいらしいが高ランクなのであまり出回らないか、出回っても高いのかもしれない。
それを料理するだけで食べられるとなれば断る選択肢は無い。
「ああ、茶番に付き合わせてしまったからな。」
「実力不足で無いのなら、止める理由もありませんからね。それでは早速準備をしてきますから、皆さんを連れてきて下さい。調理場所は戻る途中にあるので。」
「分かった。」
ジルは腹を空かしている孤児達を呼びに受付に戻った。
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