元魔王様とナキナの従魔 11
「だから私達の分までもてなされてちょうだい。」
「本当にいいのか?」
報告なら自分達が代わりに行く事も出来る。
わざわざ行かせるのは申し訳無いとでも思っているのだろう。
「門が閉まるまでに間に合わないでしょ?それに私達は他の依頼の途中で駆け付けたから、それの為にも戻る必要があるのよね。」
ワイバーンの卵の依頼が終わって直ぐに駆け付けたので依頼の処理が終わっていない。
ミラに預けてきたので卵は問題無いと思うが早く帰ってそれも済ませたいのだ。
「そうだったのか。闘姫達が来てくれなければ俺達も生きてはいなかっただろう、感謝する。」
魔物の猛攻に耐えるのだけでもギリギリだった。
森にいた高ランクの魔物や影丸がきていれば一気に戦線は崩壊していただろう。
「ギルドには話しを通しておくから明日報酬を受け取りにいくといいわ。」
「了解した。」
ミラから直接依頼を受けたジル達とは違って冒険者達は偶然居合わせただけだ。
それでも村を守る為に働いたのだから報酬は出る。
「それと魔物についてだけど少し譲ってほしいのよ。幾らか欲しいのよね?」
「ああ、そうだな。」
ラブリートに尋ねられてジルが頷く。
魔物の素材が欲しいと言ったのを覚えてくれていた。
「幾らか貰っていってもいいかしら?」
「大半は闘姫達が倒したんだ、好きなだけ持っていくといい。命を救われているんだ、誰も文句なんて言わないさ。」
その言葉に皆が頷いている。
ウルフ系の魔物の死体はそこら辺に大量に落ちている。
全て売ればどれだけの値段になるか分からない。
「それなら遠慮無く。」
ジルは万能鑑定で視ながらスキルを確認していく。
ライムが持っていないスキルを持つものだけを無限倉庫に収納する。
これでライムを更に強化出来る。
「まだこんなにあるのにいいのか?」
ジルが思ったよりも回収しなかったので冒険者が確認してくる。
ジル達が倒した数を考えれば少な過ぎるのだ。
「欲しいのは貰えたから充分だ。後はお前達で分けるといい。」
スキルを持たない魔物でも買い取りしてもらえれば金になるが低ランクの魔物は一匹一匹が安い。
だがスキル持ちは総じて高ランクなのが多く、売却額も高いのでそれを貰ってしまった分、他の魔物を大量に残す事にしたのだ。
「冒険者だけでは持て余す量だから村の修繕にも当ててちょうだい。」
「おおお!それは助かります!」
ラブリートの言葉に村長は頭を下げる。
今回の襲撃で村や畑が荒れたり家が壊れたりと少なくない被害が出ている。
直していくのにはとにかくお金が必要だ。
「それじゃあ私達は行くわね。」
「本当にありがとうございました。」
村人と冒険者達に見送られてジル達は村を後にして、そのままセダンの街を目指して走った。
魔法を使わなくても魔装して走れば充分門が閉まるのに間に合うだろうと言う判断だ。
「速いのです!モフモフなのです!」
「影丸がいてくれて助かったのじゃ。」
ジルとラブリートが走る横を影丸も同じく走っている。
その背中にはシキとナキナが乗っている。
シキは感触を楽しむ様に撫でており、ナキナは寝そべって一息付いている。
最初はナキナも二人と共に走って向かっていたのだが、直ぐに離されて置いていかれたので影丸に乗せてもらっているのだ。
「ナキナちゃん、鍛錬が足りないわよ。この程度で根を上げるなんて。」
「体力作りと魔装の鍛錬が今後の課題だな。」
ナキナは今でも冒険者の中ではかなり強い方だろう。
それでもこの二人と比べてしまうと遥かに劣る。
そもそもこの二人レベルの者なんて殆どいない。
「妾とていつまでも甘えるつもりは無い。しかし今だけは影丸の世話になるべきじゃろう。」
ナキナは背中に寝そべったまま撫でる。
影丸も撫でられて気持ち良さそうにしながら走っている。
「私達に付いてこられるのも中々の身体能力よね。」
影丸を見ながらラブリートが言う。
ウルフ種は総じて足が速い魔物だが、Aランクのシャドウウルフともなるとその中でも身体能力が更に優れている方だ。
逆にそんな影丸と並んで走れる二人の方が異常である。
「見えてきたわね。」
「門も開いているな。」
どうやら門限に間に合った様だ。
これで野宿する必要は無さそうである。
「お前達無事だったか!」
「事情はギルドから聞いている、終わったのか?」
そう言って門番達が出迎えてくれる。
門を出る時は急いでいたので処理をギルド任せにして通過した。
ミラが手回しをしてくれたらしく門番もジル達の事情を知っている様だ。
「バッチリよ。魔物の群れはちゃんと討伐してきたわ。」
原因も排除したし近隣に被害がこれ以上広がる事は無い。
「そうか、セダンから遠くない村だと聞いたから警戒していたんだ。」
「さすがはSランク冒険者と期待の新人冒険者達だな。」
それを聞いて門番達も一安心と言った様子だ。
村の次はセダンの街がターゲットとなって責められる可能性も少なからずあったので心構えをしていたのだろう。
「それじゃあ私達はギルドに報告もあるから失礼するわね。」
「ああ、門番として脅威となる魔物を倒してくれた事に礼を言うぜ。」
「ありがとうな。」
門番に見送られてジル達はギルドに向かった。
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