元魔王様と世界最強の従魔使い 9

 影丸の成長にレギオンハートが力を貸してくれる事になり、独自の従魔育成方法を伝授してくれるらしい。


「ではナキナと影丸を暫く借りるぞ。」


「暫くと言うのはどれくらいだ?」


「それは分からん、この二人次第だな。1月で終わる事もあれば数年掛かっても終わらない可能性もある。」


 随分と時間の幅がある。

それだけレギオンハートの育成方法は本人達に委ねられているのだろう。


「そ、そんなに大変な事じゃったのか。」


 数年も掛かるかもしれないとは予想外であった。

と言っても簡単に強くなれるよりは、そちらの方が有り難みがあると言うものだ。


「まあ、お前達ならそれ程時間は掛からないと思うけどな。時間を掛けたくないなら直ぐにでも始められるぞ。」


「ならば早速お願いしたいのじゃ。」


「ウォン!」


 どちらも気合い充分と言った様子だ。

それを見てレギオンハートも満足そうに頷いている。


「ならばあちらで待っているといい。もう少し話したら俺も行く。」


 そう言われてナキナと影丸は準備運動がてら模擬戦をして時間を潰す事にした様だ。

ホッコも暫く会えなくなると言う事でまざりにいった。


「と言う事だ王よ。このパンデモニウムで暫く修行してもらう事になる。」


「この島でか?まあ、お前がいるなら危険なこの島でも問題無いか。」


「安心して任せてくれ。」


 高ランクの危険な魔物ばかりが生息する島と言ってもレギオンハートの従魔達の方が圧倒的に強い。

魔物に襲われても誰かしら守ってくれるだろう。


「ではジル様、私達はセダンに戻りますか?」


「こんな魔物しかいない島で過ごすのも嫌ですからね。」


「そうだな。戻って何をするか。」


 浮島の戦力強化に関してはこれで一段落としてもいい。

ナキナと影丸が強くなる為に一時的に浮島を離れる事にはなったが、浮島が攻められでもしない限りは問題無い。


 展開している結界により一早くジルが異変に気付けるので、万が一襲撃されても何とかなるだろう。

ジルにはまだ見せていない奥の手も残っているのだ。


「どうしても暇ならばこれを担当してくれてもいいぞ。」


 そう言ってレギオンハートが取り出したのは紙の束だ。


「何だこれは?」


「邪神教の者が一度でも出入りしているアジトの場所だ。俺に害を齎すかもしれんから、その内捻り潰そうと思って情報を集めていたんだ。」


 敵対する可能性がある邪神教は早々に対処しておきたい。

そう思って従魔達に探らせていたらしい。


 紙を受け取って見てみると国や街、アジトの特徴等の情報が細かく記載されている。

従魔の情報収集能力の賜物だ。


「かなり多いな。」


「各国に伝手がある様だな。かなり大きな組織となっていそうだ。」


 国や街の名前もバラバラであり、数十ものアジトを持っている様だ。

ジルが見た事無いメンバーもまだまだいるかもしれない。


「邪神教ですか。ジル様の障害となるなら私達にとっても敵ですね。」


「既にジル様は何度か交戦しているらしいし、鬱陶しいなら私達で動くのもよさそうね。」


「戻っても暇ですからやりますか?」


「退屈凌ぎにやろっか。ジル様がわざわざ動くまでの事でも無いでしょ。」


 レイアとテスラが邪神教のアジトについて書かれた紙を見ながら今後について話し合う。

暇潰しに邪神教のアジトでも潰さないかと言うレギオンハートの提案だったが、二人も暇をしていたので引き受ける事にした様だ。


「いいのか?お前達はまだ関わっていないのだろう?」


 直接出会っているのはジルだけだ。

わざわざ面倒な連中に絡みに行く必要は無い。


「ジル様の助けとなれるのが側近である我々の望みですから。」


「面倒な雑務は私達に任せていいんですよ。」


「そうか、中々に厄介な者もいるから気を付けるんだぞ。」


 自分の為を思って面倒事を引き受けてくれた二人に感謝しておく。


「っ!ジル様に心配してもらえてる!吸精以外でこれ程の幸福感を得られるなんて!」


「…何と言う破壊力でしょうか。テスラ、全て私達の手で滅ぼしましょう!」


「そうね、それじゃあ早速行ってきますね!」


「ジル様、失礼します!」


 ジルの激励を受けてテンションの上がった二人は人化のスキルを解除して本来の姿に戻り、背中の翼を使って空へと羽ばたいていった。


「相変わらず騒々しい奴らだな。昔から変わらな過ぎて懐かしさを感じる。」


 二人の背中を見ながらレギオンハートが呟く。

騒々しいと口では言っているが、その表情は笑っている。


「人族となった我にまた仕えたいと言ってくれた。あまり二人を縛り付けたくはないのだがな。」


「あいつらは好きでやってるし気にしなくていいだろ。王も自分のやりたい事をして自由にこの生を楽しめばいい。」


「そうだな。時間も出来たし、我もやりたい事をして過ごすとしよう。」


 今世は自分の自由に生きる。

神の定めた役割りも無いので全て自分の為に時間を使える。


「そうするといい。ではナキナと影丸が待っているし、俺は早速訓練を始めるとしよう。」


「終わったら連絡してくれ。」


「分かった。久々に王と話せて楽しかったぞ。またな。」


「ああ、ナキナと影丸を頼む。」


 レギオンハートに後の事を任せて、ジルとホッコはセダンの街へと帰還した。

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