元魔王様と浮島の第一住民 5
シキは無限倉庫から魔法道具を一つ取り出す。
魔王時代に孤独となってから暇潰しの為に随分と魔法道具を作ったが、殆ど作ってそのまま無限倉庫に放置していた。
今取り出された物もその一つである。
「有用そうな魔法道具は使わないと勿体無いのです。」
「それは何の魔法道具なんだ?」
「自分で作ったのに覚えていないのです?」
「随分と前の事だからな。」
シキが少し呆れた視線を向けてくる。
転生前に作った物は何かに役立てると言うよりは暇潰し目的だったので殆ど記憶に無い。
作っただけで満足して使っていない物も多いのだ。
「ならば説明するのです。これは中の時間を進める事が出来る魔法道具なのです。」
「時間を進める?」
ナキナが魔法道具を見て首を傾げる。
見た目は普通の箱にしか見えない。
「この箱には時空間魔法が付加されているのです。箱の中に入れた物は時間の進みが早くなり、世界と時間の進む流れが違うくなるのです。」
時空間魔法は希少魔法である。
使い手が少ないのでこう言った魔法道具自体も珍しくて価値がある。
「ほう、凄そうな機械じゃのう。」
「実際にこれは凄い道具なのです。そこでこれなのです。」
そう言ってテーブルに並ぶ果物とドライフルーツを指し示す。
「成る程、元々は同じ果物であるからドライフルーツを作れるかの実験か。」
「そう言う事なのです。この道具を使ってドライフルーツが作れれば、長い時間を使って作る食べ物は大体作れる様になるのです。」
「水分を飛ばす作業は時間が掛かるだろうしな。」
果物を乾燥させた物がドライフルーツとなる。
時間を早められる魔法道具で果物を乾燥させる時間を短縮出来ればと今回シキが目を付けたのだ。
「この箱がもう少し大きかったら薪作りにも使えたかもしれないのです。でもシキは美味しい食べ物が作れればこの大きさで問題無いのです。」
苗木等の育成促進にも使えるかもしれないと考えていたが、残念ながら箱は小さくて高さも無い。
便利そうな能力だが形状から使用用途は限られてくるのだ。
「早速試してみてくれ。」
「了解なのです。ナキナ、果物を適当な大きさに切って中に入れてほしいのです。」
「了解じゃ。」
ナキナが果物を素早くカットしていく。
シキの護衛として慣れてきたので、これくらいなら楽々とこなせる。
「これで良いかのう?」
「そしたら蓋を閉めて多少の温度設定やら時間の進む速度を決めたらスイッチオンなのです!」
箱に取り付けられたボタンで色々と調節する。
蓋を閉めて起動させれば後は少し待つだけだ。
ボタンで決められた時間が直ぐに終わりアラームが鳴る。
「完成なのです。」
「もうよいのか?1分も経っておらんぞ?」
「もう箱の中だと半日以上経過しているのです。」
1分の間に箱の中は半日以上も時間が経っていた。
その証拠に入れた果物の見た目が随分と変わっている。
「本当じゃ!先程とはまるで別物じゃ!」
「買ったドライフルーツと同じ様な見た目だな。」
テーブルに乗っているドライフルーツと見比べる。
元々が同じ果物で同じドライフルーツになるかの実験だったが、多少の違いはあれど見た目はかなり似ている。
「後は味なのです。」
三人は今自分達で作った方を食べてみる。
「美味い。」
「美味しいのじゃ。」
「これなら大成功なのです。早速色んな果物で量産するのです。」
実験は成功なのでシキはこれを量産していく事にした。
「そんなに沢山作ってどうするんだ?」
「これを売って金策なのです。過程は見せられなくても物は時間さえ掛ければ誰でも作れるから売っても問題無いのです。」
一番面倒な時間と言う部分を魔法道具で短縮出来れば量産も難しくは無い。
単純な作業で金策になりそうなネタを手に入れる事が出来た。
「普通に作るとなれば他にも色々と必要な物が出てきそうじゃな。この魔法道具の力は凄いのじゃ。」
見た目は小さな箱にしか見えないが立派な魔法道具である。
「コスト削減は大事なのです。こう言った便利な魔法道具が無限倉庫にはいっぱいあるから浮島でどんどん活用していくのです。」
人目を気にしなくていい浮島はそう言った物を使うには絶好の場所だ。
せっかくジルが魔王時代に作った魔法道具も、かなりの数がシキによって封印指定を受けて無限倉庫の中で眠っている。
しかしそれを仕分けたシキ自身が前々から勿体無いから使用したいと考えていたのだ。
そう言った事情から自分達だけが自由に過ごせる場所を求めて浮島の計画を話し合ってきたのである。
「他の者達には見せられない秘密の浮島になりそうだな。」
「この浮島だけ文明が違い過ぎるのう。」
生活が豊かになるのはジルやナキナも嬉しいので、シキが便利な魔法道具を大量に使用しようとしているのを止める気は一切無かった。
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