元魔王様と商会長との交渉術 5
直ぐに戻ってきたリュカだが、その手には両手で抱えるくらいの巨大な皿を持っていた。
そしてその上にはこれでもかと言う程に山盛りに積まれたフライドポテトが乗せられている。
確かにこれならば普通に食べていても注目されるだろう。
「はい、お待たせ。」
「凄い大きさだな。」
正に圧巻と言える量である。
昼にも大量に食べたが、それを上回りそうなくらいだ。
そしてそんな量だからこそ、当然周りの客の目も自然と集まってくる。
「ライムちゃんのとスープも運んでくるね。」
そう言ってリュカが戻ったので早速頂く事にする。
「やはり美味いな。」
「全然飽きないのです!」
ジルとシキはフライドポテトの相変わらずの美味しさに大満足と言った様子で食べ進める。
これだけの量があってもあっという間に無くなってしまいそうな速さだ。
隣りで芋の皮を待っていたライムにも試しに与えてみた。
すると心無しかいつもより美味しそうに食べている様に見えなくもない。
スライムは何でも食べると言っても、好物はあるのかもしれない。
「リュカちゃん、あれは料理かい?初めて見るけど。」
一人の客がジル達が美味しそうに食べているフライドポテトを見て尋ねている。
早速初めて見る料理に興味を惹かれた様だ。
「そうだよ、今日からの新メニューなの。あの人達には凄くお世話になったから、あの量はサービスだけどね。」
予めあの量が普通では無い事を言っておく。
あれはジル達に世話になった二人からの礼として出された量なのだ。
「成る程ね、注文する事は出来るのかい?」
さすがにあれ程の量を頼むつもりは無い様だが、食べてはみたいのだろう。
「大丈夫だけど、あれ結構高いんだ。無料の試食用意してあるから先にそっちを持ってくるね。それを食べて気に入ったら注文考えて。」
「成る程、じゃあお願いするよ。」
客がリュカの言葉に頷いて言う。
一食にしてはそれなりに高いので、注文されてから文句を言われては困る。
少ないが試食をしてもらって、その後に客に判断してもらう方が揉め事も起こらないだろう。
「こっちも試食もらえるか?」
「私にもお願い!」
一人の客とリュカのやり取りを見ていた他の客も、ジル達のテーブルを見て気になっていたのだろう、様々な場所から試食を頼む声が上がっている。
新メニューで無料となれば試しておいて損は無い。
「はーい。」
厨房に戻ったリュカが人数分のフライドポテトが乗った小皿を持って戻ってくる。
無料と言っても塩や油がそれなりに高価なので量は少なめだ。
「はいどうぞ、新メニューのフライドポテトです。」
「フライドポテトって言うのか、どれどれ。」
最初に注文した客が早速一口食べてみる。
すると次の瞬間に目を大きく見開いて驚いている。
「う、美味い!」
そう言って次々にパクパクと食べていく。
それは他の客も同じであり、フライドポテトの味に大満足と言った様子だ。
だが試食と言う事もありどのテーブルでも一瞬で無くなってしまう。
「はっ、もう無くなってしまった。リュカちゃん、注文で貰えるかい?」
食べ足りない客は追加でフライドポテトを注文する。
「一皿銀貨3枚だけど大丈夫?」
「銀貨3枚!?随分と高いんだね。」
普通の料理と比べてもフライドポテトの値段は割高だ。
どの客も驚いているがそれも当然である。
「塩と油を沢山使う料理だからね。これでもギリギリなんだ、ごめんね。でも試食の皿よりは多く出せるよ。」
高い事はリュカも知っているので、客に丁寧な対応をしている。
看板娘は可愛いだけでは無く、気配りも上手いのだ。
「それならせっかくの新メニューだし一皿貰おうかな。」
「こっちもくれ。」
「私にもおかわりお願い。」
リュカの説明を聞いても結局皆頼む事にした様だ。
しかし銀貨3枚と聞いても頼むとは、やはりフライドポテトの魅力は中々凄まじと言える。
そうしたやり取りがされた後にきた客達も、ジル達の巨大皿や最初からいた客達が美味しそうに食べている見慣れない料理についてリュカに尋ねている。
そして同じく注文して美味しそうに食べ、後から入った客がまた同じ事を繰り返すと言うループが完成する。
食べ終えて出ていった客に話しでも聞いたのか、いつもよりも客が多く感じられる。
既に席は殆どが埋まりそうであり、全ての席でフライドポテトが注文されている程だ。
「さて、これなら客寄せも充分だろう。」
「皆フライドポテトを頼んでいるのです。」
銀貨3枚と分かっていても、何回かお代わりしている者までいる。
それ程までに美味しいと思っているのだろう。
「後は部屋でゆっくり食べるとするか。」
ジルは無限倉庫のスキルにまだフライドポテトが残っている巨大な皿を仕舞う。
客寄せの仕事は充分果たしたと判断したので、人も多くなってきた事もあり後は部屋に戻る事にした。
ジル達が部屋に戻った後も、客が入れ替わりで入ってくる度に皆がフライドポテトを注文してくると言った流れが閉店まで続いた。
過去最大の忙しさにリュカが大急ぎで走り回り、女将は必死に芋を揚げ続けていた。
芋の用意は事前にしてあり、皮は剥いて切ってある状態だったので後は揚げるだけだったのだが、それでもギリギリと言った様子だった。
閉店となった頃には、二人とも普段からは考えられないくらいに疲れ果てており、その日の売り上げは当然の様に過去最多を叩き出したのだった。
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