【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

元魔王様と成り行きテイム 3

「そんなのやってみないと分からないでしょ！」

　当然ルルネットも知識にはある事だ。

それでもこの可愛い魔物をテイム出来たらと淡い期待をしてしまう。

「過去に挑戦した者はそれなりにいたが成功例は零なんだぞ？」

「無意味な事はせずに探索に戻るべきです。」

「ううう、こんなに可愛いのに…。」

　二人の言葉が正しいと分かってはいるが、それでも可愛い魔物なので未練がましく見てしまう。

「我らにはどうしようもない。レア素材を期待して諦める…ん？どう言う事だ？」

　ディバースフォクスを万能鑑定で見たジルは首を傾げながら小さく呟く。

「マスター、どうかされたのですか？」

「タイプC、ディバースフォクスを解析してみろ。」

「畏まりました。」

　ジルが何かに気付いた様であり、タイプCも言われた通りに解析能力を使って情報を得ようとする。

「おや、おかしいですね。ダンジョンで生成された魔物は名前にダンジョンと言う文字が付け加えられる筈なのですが、この魔物はただのディバースフォクスとなっています。」

　本来であればダンジョンディバースフォクスと言う名前になる筈なのだ。

それなのに付いていないと言う事は答えは一つしかない。

「つまりどう言う事？」

　ルルネットは初めての経験で理解していない様子だ。

「この魔物はダンジョンでは無く、外から迷い込んできた魔物と言う事になるな。」

「つまりはダンジョンのルールに縛られていないのでテイムも可能と言う事です。」

「本当！？」

　二人の言葉を聞いてルルネットの表情は一気に明るくなる。

テイム出来る可能性があるだけでも嬉しいのだろう。

「しかしここでルルネット様に再び残念なご報告を。ディバースフォクスは高ランクの魔物であり、テイムされたケースが非常に少ない魔物でもあるのです。」

　タイプCはシキ程では無いがサポート役としてそれなりの知識を与えられている。

その知識の中には魔物毎のテイムの難易度もあり、ディバースフォクスはかなり難易度が高い方であった。

「この子高ランクの魔物なの？」

「尾の数が一つの段階でもCランクです。そして尾の多さと使える魔法の種類によってランクは大きく上がります。」

　尻尾の数が増える度に魔法の適性も増えていくが、何を使える様になるかは運次第だ。

なのでディバースフォクスそれぞれで強さや戦い方も全く変わってくるのである。

「確かSランククラスのディバースフォクスも見た記憶があるな。」

　魔王時代の話しではあるが尻尾の数が六もあり、派生魔法や特殊魔法と強力な魔法ばかりを覚えた個体を見た事がある。

そのレベルとなると強さを表す最高峰のSランクにまで辿り着いたりするのだ。

「Sランク！？」

　その言葉を聞いてルルネットは驚いている。

人にしても魔物にしてもSランクと言うのは枠組みから逸脱した規格外な存在と言う認識があり、常人では辿り着けない領域なのだ。

「そう言った規格外な力を秘めている魔物は総じてテイムが難しいのです。」

　初期状態でもCランクあり、Sランクにまで成長する可能性を秘めているとなるとテイムの難易度が高いのも当然だ。

「見た目だけでテイムしたいって思ったけど、Sランクになるかもしれない子ってなるとさすがに厳しいわよね。」

　まさかルルネットもそこまで高ランクの魔物とは思わなかった。

今の自分がディバースフォクスに見合うともはっきり言えない。

「可能性は零では無い。試してみる価値はあるんじゃないか？」

　テイムは魔物側に委ねられる部分も多い。

何かが嵌って簡単にテイム出来る可能性もあるにはある。

「そうよね、何事も挑戦しなきゃ始まらないわよね！」

「それにルルネット様はまだ幼いのですから、巡り合わせはこれから先幾らでもあると思いますよ。」

「うん、駄目で元々当たって砕けろよ！」

　ルルネットは意気込んでテイムをする事に決めた。

一先ずディバースフォクスは足を怪我していたので、ルルネットはジルから貰ったポーションで治療を行った。

怪我が治れば攻撃や逃走の可能性もあるのでジルは一応警戒していたがそれは杞憂に終わった。

　ディバースフォクスは知能が高い魔物としても知られている。

なので怪我を治してもらった自覚がある様で、目の前にいるルルネットに敵意や殺意は向けていない。

これで準備も整ったのでテイムの為に色々と試していった。

「ディバースフォクス、私と従魔契約を結んで！」

「クォン！」

　ルルネットの差し出した何度目かの手をディバースフォクスが尻尾でペシンと叩いて払う。

つまり失敗であり主と認めてもらえない。

「わあーん、テイム出来無いじゃないの～。」

　ルルネットはディバースフォクスの前で座り込んで肩をがっくりと落として言う。

既にディバースフォクスをテイムする為に色々と試した。

　怪我をしていたのと傷つけたく無いと言うルルネットの心情から直接戦ったりはしていない。

代わりに自分の実力を示す為にタイプCとの模擬戦を見せたり、餌を与えたり、従魔となった後のメリットを語ったりとアピールは行った。

　それでも残念ながら主とは認めてもらえず、既に十回以上手を差し出しては尻尾で叩かれて拒否されると言う行動を繰り返していた。