魔法生命体達と浮島防衛戦 2
ジル達の拠点である浮島が浮いているのは魔の森の上空だ。
セダン上空だとこう言う事が起きた時に被害を及ぼしてしまう可能性があるので少し離れた場所で浮いている。
「腕が鳴ります!久しぶりの実戦!久しぶりの高威力魔法!」
魔法の制限を解除されたタイプDが嬉しそうに言う。
浮島で暮らす条件として高威力の魔法や得物の杖の使用を禁止されていたので久々の登場だ。
「興奮するのは構いませんが私達の浮遊力の維持は任せましたよ?」
「タイプDの魔法が切れた瞬間に私達は地面に真っ逆さまですからね。」
現在メイドゴーレム達はタイプDの重力魔法によって自由に空に浮かべている。
解除されてしまえばタイプBとタイプCは地面に落ちてしまうのでタイプDには気を付けてもらわなければならない。
「これくらい意識していなくても問題ありません!数時間は自由に浮いていられるので私から離れても問題無いですよ!」
魔法に関してだけは誰よりも優っていると自負している。
二人に魔法を使いながら天使と戦闘を行うくらい簡単な事だ。
「それは助かりますね。それと再度忠告ですが、マスターの浮島を傷付けない様に気を付けるのですよ?」
「分かっています!」
「地上に多大な影響を与える魔法も使用してはいけませんよ?」
「分かっています!」
本当に分かっているのかと不安な二人だが、ある程度は許容するしかない。
三人で何十倍もの数の天使族を相手にする必要があるのだ。
広範囲への攻撃手段を持つタイプDの火力には期待せざるを得ない。
「それでは固まっていても非効率ですから散会して天使族を撃破しましょう。」
「やったりますよ!」
「タイプD、当然の事ですが私達を巻き込むのも気を付けるのですよ?」
天使を倒す為とは言え、自分達も巻き添えを受ける魔法は勘弁だ。
前にジルも魔の森で巻き込まれそうになったと聞いたので注意しておく。
「獲物発見!いざ勝負!」
「聞いていませんね。」
既にタイプDの眼中には天使族しかない。
飛んでいってしまったので自分達の方で気を付けるしかなさそうだ。
「私達がタイプDの間合いに入らなければいいだけでしょう。タイプC、足を引っ張らないで下さいね。」
「タイプB、その台詞はそのままお返しします。きっと私の方が活躍するでしょうから。」
天使族を前にしていつもの煽り合いを始める二人。
ジルがこの場にいたらそんな事をしていないで早く戦えと言われていただろう。
「ならば天使の撃破数で勝負しますか?」
「望むところです。」
「ふっ、大差を付けて圧勝してあげましょう。」
「その油断が足元を掬われるのですよ。」
二人も自分の獲物に狙いを定めて飛んでいく。
「天使の皆さん!わざわざお出迎えに来てあげましたよ!」
タイプDが天使族が多く集まる場所へと向かいながら声を掛ける。
「ん?何だお前は?」
一人の天使族がタイプDに反応する。
明らかに周りの天使達とは違って強そうだ。
「知らずに攻めていたんですか?貴方達が攻撃しているところに住んでいる者です!」
「と言う事はジルとか言う人族の仲間か?」
「私のマスターですね!マスターに喧嘩を売るなんて種族を滅ぼしたいお馬鹿さんなんですか?」
タイプDが首を傾げながら尋ねる。
これは純粋な疑問だ。
元魔王であるジルに敵対行動を取ると言うのは、自らが滅びる事になると言うのと同義だとタイプDは思っている。
「馬鹿は貴様らの方だ。人族一匹にビクビクしているライエルも気に食わん。俺達天使族と敵対した事を後悔させてやる。」
「それはそれは楽しみですね!是非私を後悔させて下さい!来たれ、魔杖・夢現!」
自分の背丈をも上回る長杖が現れる。
美しく滑らかな木で作られた杖の先端には、様々な色が渦巻く不思議な球体が取り付けられている。
制限を解除された事で使用を許可されたタイプDの得物だ。
「殺す前にお前の名前を聞いておいてやる。」
「私の名前ですか?タイプDと言います!」
「変わった名前だな。」
「そう言う貴方は?誰を殺したのか分からないとマスターへの報告が出来ません!」
「貴様の様な者に殺されはせんが、自分を殺す者の名前くらいは冥土の土産にしたいか。俺は聖天司教団体序列14位のゲイエルだ。死の間際まで覚えておきやがれ。」
名乗ったゲイエルと言う天使族の手の甲には聖痕がある。
周囲にいる有象無象の天使達と違ってナンバーズの強者である。
「ゲイエルさん、楽しませて下さいね!特にナンバーズの天使族が使うと言う聖痕の力には期待していますよ!」
タイプDが魔杖を構えて交戦的な笑みを浮かべた。
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