子供の会話
ソニンさんの説教が終わった後、大人たちは仕事があるからとそれぞれの場所へと戻っていった。
ユウキとフローラは病室に残っている。途中で心配してくれていたカズチとルル、そしてガーレッドがやってきたので、病室は子供だけになっていた。
「ピキャキャキャキャー!」
「ごめんよ、ガーレッド。心配かけちゃったね。ほら、抱っこするから怒らないでよ」
ガーレッドは小さな手で僕の体をペチペチと叩いてくる。
それでも左手を叩かないのはそこが重傷だと分かっているのかもしれない。
「しっかし、ジンは毎回何かしら騒動に巻き込まれるよな」
「本当よね。今回も大丈夫かなって心配だったんだから」
「あはは、ごめんねー。でも僕だって騒動に巻き込まれたいわけじゃないんだよ? 騒動から近づいてくるんだから仕方ないよね」
「今回は僕が騒動を呼び寄せちゃったからね、本当に申し訳ないよ」
「私も、すいません」
「もう本当に謝らないでよ。僕たちはもう友達なんだからさ」
笑顔を浮かべてそう答えると、フローラさんも笑顔で頷いてくれた。
そしてその視線はチラチラとガーレッドに向いてもいる。
うん、やはり可愛いは誰にでも好かれるようだ。
「そういえば、他のパーティメンバーとは会えたのかな?」
「あぁ、それがね……」
ユウキが何か言いにくそうにしている。今回のことで何かあったのだろうか。
「……みんな、今回の事件に巻き込まれたのはユウキ様がパーティに入ったからだって言い出しまして」
「はあっ? 何だそれ、酷くないか?」
「私もそう思います。ユウキ様は私たちが無茶な依頼を受けることを知って加入してくれたのに……」
「ユウキ、そうなの?」
苦笑を浮かべながら、ユウキが口を開く。
「まあ、そんなところかな。この時期に王都……いや、北の森に入る依頼なんて危険過ぎるからね。出来れば止めたかったのが本音だけどそれも出来なかったから、ついていくことで何か手助けができればと思ったんだ」
「そのおかげで私は助かったんです。ユウキ様がいなければ悪魔を見た時に殺されていただろうし、ユウキ様がいなければジン様やザリウス様やリューネ様が助けに来ることもありませんでした」
「それは……そうかも。ユウキの今までの行いが繋がりを作って、今に至ったんだもんね」
「あはは、それは大袈裟だよ」
その新人さんたちとは今後の付き合い方を考えたほうがいいと思う。
自分本意の考え方ではいずれしっぺ返しを食らうだろうし、今回のように非常事態となった時に助けてくれる人も少ないだろう。
その点ユウキは礼儀正しいし、基本がしっかりしているから安心だ。
「ねえ、ユウキ。今後はフローラさんと二人でパーティを組んだらどうかな?」
「「えっ?」」
いや、二人して疑問の声を上げなくても。
「フローラさんは今までのパーティに戻るつもりなの?」
「いえ、声を掛けてもらってはいますけど戻るつもりはありません。ユウキ様のことを蔑ろにされましたから」
「ユウキは今後もソロで冒険者をやるの?」
「うーん、今のところはその予定だけど、何かパーティ推奨や必須のものがあった時は臨時で組もうかと思ってるよ」
「だったら、何かあった時のために仮でパーティを組んでいた方がいいと思うんだけどな。お互い時間がある時だけ優先してパーティを組むとかさ」
顔を見合わせて考え始めるユウキとフローラさん。
時間が合う時だけのパーティならばお互いの連携を高めておくことも出来るし、パーティに縛られることもない。
そこから本格的にパーティを組むことだって出来るし、何より安全性を高めることが出来るんだよね。
「僕は構わないよ。フローラさんが良ければだけど」
「わ、私も構いません! 正直、一人で冒険者を続けることが出来るかどうかも悩んでいたところなんです。ユウキ様とパーティを組めるのなら、もう少し頑張れると思います!」
「うんうん、よかったよかった、青春だねぇ」
「……お前、何言ってんだ?」
「うん? いやいや、何でもないよ!」
とりあえず丸く収まってよかった。だけど、警戒も必要かもしれないな。
「ねえ、パーティを組んでた人たちからは今も連絡は来るのかな?」
「ずっと断ってるから少なくなってるけど、顔を合わせるたびに言われるかな」
「……ユウキ」
「分かってるよ。嫌がらせがあるかもしれないんでしょ? 何かあればダリアさんに相談するつもりだから安心してよ」
さすがはユウキである。先のことを考えているし、大人を頼ることも知っている。
ケルベロス事件の時の僕とはえらい違いだよ。
「カズチとルルは今日は休み?」
「副棟梁がこっちに行くってなったから休みになったんだ。戻ってもやることがあるだろうって言ってたしな」
「……お手間を取らせます」
「私は料理長に休みにしてもらったんだ。友達のお見舞いなら気にするな!だって」
「ミーシュさんなら言いそうだね」
またしばらくはミーシュさんの料理が食べられなくなるのは悲しいけど、戻ったらたくさん食べてやろう。
……勝手に大盛りにされるのは勘弁だけど。
その後もしばらくは世間話に花を咲かせ、日が傾き始めた頃に解散となった。
ガーレッドだけは僕から離れようとはせず、霊獣なら構わないと先生も言ってくれたので残ってくれている。
さて、これから暇な時間が続くのでガーレッドと久しぶりに遊ぼうかと思っていると扉がノックされた。……誰だろう?
「どうぞー」
僕の声に反応して扉が開くと、そこには帰ったはずのユウキが立っていた。
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