贈り物の完成

 ブルーリバーの錬成が終わり、次に赤い鉱石の錬成に移る。

 一度休むかとも聞いたのだが、今は一気に終わらせたい、気持ちが乗っているということで続けてもらう。

 ロットさんは外枠を眺めながら、何度も『凄いな』『素晴らしい』とカズチの腕を認める呟きを繰り返している。


「深く濃い青色に、流線型も美しいよ。カズチ君の腕を疑っていたわけじゃないけど、これは本当に素晴らしい」

「……そ、そんなに褒めないでくださいよ」


 頭を掻きながら準備を進めているカズチを見て、照れている姿は珍しいなと笑みを浮かべる。


「……な、なあ、ジン。この赤い鉱石だけど、なんの鉱石なのかは分かるのか?」

「分かんないよ?」

「……」

「……えっ?」

「……はぁ。いや、なんでもないよ」


 いや、今の言い方は絶対に何か聞きたいことがあるって発言だよね!


「何かあるでしょう!」

「……これ、本当に鉱石かなって思ったんだよ」

「……いや、どう見ても鉱石でしょ」


 他の何に見えるというのだろうか。

 そんなことを考えていると、カズチは何故かガーレッドを指差してくる。


「ガーレッドの時、棟梁と副棟梁が間違えてただろ? ジンが持ってきたから、怪しいと思ったんだよ」

「その理由は酷くないかなあ! 僕だって問題を抱えたいわけじゃないんだけど!」


 それに、ガーレッドの時は僕のせいじゃないし! ゾラさんとソニンさんが気づかなかったからだし、そもそもは業者のせいだからね!


「言っておくけど、本当に大丈夫だからね! この鉱石からは、質の良い鉱石だって反応を感じて購入したんだから!」

「……まあ、俺も同じだから問題はないのか?」

「大丈夫だってば!」


 僕ってどれだけ信用がないのかなあ!


「まあまあ。ジンもカズチも落ち着いてよ。確かに、ジンは問題を運んでくることが多いけど」


 ユウキも酷い!


「生産関係で言えば、間違いはほとんどないんじゃないかな?」

「……確かにな」


 カズチもユウキの言葉はあっさり信用するんだね!


「ジン君はトラブルに愛されてるからねー」

「それ、私も分かります。ようやく皆様に追いつきましたね」


 ……ルルも酷いけど、フローラさんもなかなかの物言いですな。


「えっと……ジン君、本当に大丈夫なのかい?」

「だ、大丈夫ですってば! もう、カズチたちが変なことを言うから、ロットさんが心配になっちゃってるじゃないか!」


 僕の言葉に、カズチたちは顔を見合わせて苦笑している。

 ……もういいよ! さっさと錬成してくださいな!


「でも、確かになんの鉱石なのかは気になるところかな」

「だよなー。調べる方法とかないのかね?」

「ジン君とカズチ君がビビッて来たなら、相当に質の良い鉱石ってことだよね?」

「となると、属性付与ができるような鉱石でしょうか?」


 何やら勝手に考え始めてしまったが、ロットさんとしてはさっさと終わらせてほしいに決まっている。

 僕は横目でロットさんを見てみたのだが――


「そんな凄い素材が小銀貨三枚……いや、実質は五枚か。それだけで購入できるものなのかい?」


 ……食いついてるし!?


「ちょっと、ロットさん!?」

「えっ? あぁ、すみません。なんだか、楽しそうだったから」


 あははと笑っているが、このままでは話が進まないのでカズチたちを落ち着かせる。


「カズチ! 早く錬成を始めようよ!」

「うーん……まあ、考えても分からないのは確かだもんなぁ。仕方ないか」


 そう口にしたカズチは、赤い鉱石をもう一度眺め回した後に、錬成布の中央に置いた。


「さて、それじゃあ始めるか!」


 気合いを入れ直したカズチが目を閉じて集中力を高め、ゆっくりと瞼を開きながら両手をかざした。

 ブルーリバーの錬成時と同じようにスムーズな魔力の流れを目にする。

 瑠璃色のブルーリバーとは違い、赤い鉱石は透明度の高い鮮やかな赤だ。

 光り方も、光の放ち方も、その全てが全く違う。


「……ん? やっぱり、ブルーリバーよりも跳ね返しが強いなぁ」

「厳しそう?」

「まさか。これくらい、やり遂げてみせるぜ――完璧にな!」


 美しい光が徐々に少なくなり、浄化の工程が終わりに近づいていく。

 そして、構築の工程に移っていくと、錬成布の隣に置いていた外枠を横目で見る。

 息をゆっくりと吐き出していくカズチは、目を見開くと酸素を一気に吸い込んで工程を進めた。

 液体になった鮮やかな赤色の鉱石が渦を巻いてせり上がり、細く長くなると外枠の中心、ハートの形に構築されていく。

 その動きを目で追っていた僕たちは感嘆の声を漏らし、カズチの錬成を凝視する。

 特に、ロットさんは自分がデザインした作品が目の前で形になっていく工程を見て、目を輝かせている。

 それが恋人に贈る物なのだから、なおさらだろう。

 そして――数分後には、青と赤の色合いが美しいアクセサリーが完成した。


※※※※

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 2020/12/04(金)より、最新4巻発売中!

 宣伝マラソン6日目です!!

 地元の書店にも、そろそろ並んでくれているだろうか。でも、3日から4日は遅れるからなぁ、こっちは。

 ……気持ちを落ち着けるためにも、書店巡りでも、してみましょうかねぇ。


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■イラスト:椎名優先生

■発売日:2020/12/04(金)


 ぜひとも、よろしくお願いいたします!!

※※※※

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