将来に向けて
さて、食事も終わり部屋に戻ってきた僕は今後のことについて考えていた。
というのも、ラドワニの冒険者ギルドからの入金もあり結構な額の貯金が貯まったことになる。これは一職人が持つには多すぎるくらいの金額だ。
持っているのはクランを運営しているような棟梁クラスくらいなものだろう。
「でも、そのおかげで資金繰りの目処はつきそうだな」
キャラバンを作り旅に出る。その為の資金繰りにはもっと月日が掛かると思っていたのだが、これなら一年と待たずにお金の工面だけはできそうだ。……そう、お金の工面だけはな。
「そこから馬車の準備、販売する武器の作成。その辺りは買ったり作ったりで問題はないんだけど、一番の問題は人員だよなぁ」
僕一人で馬を引き、護衛をして、交渉をすることだって可能だけど、子供一人で
全てをこなしては怪しまれてしまう。そもそも買ってくれるお客さんがいないだろう。
代わりに交渉を引き受けてくれる人が必要だろうし、護衛にしても全て一人でやるのも面倒臭いしなぁ。
護衛に関しては冒険者を雇うのが一番手っ取り早いんだけど……信頼できる人なんてユウキとフローラさん……あとは上級冒険者の人たちにしか知り合いがいないんだよなぁ。
「ユウキとフローラさんが受けてくれたら嬉しいんだけど、それはカマドを離れることにつながるからなぁ」
冒険者なら護衛依頼も受けてくれるだろう。だが、これが長く続く依頼となれば話は別だ。もしかしたら一年以上拘束することになるかもしれないんだし。
「……でも、話す機会があれば一度くらい聞いてみてもいいかな」
ダメで元々、もし受けてくれたらありがたいという気持ちでいいかな。
ただ、仮にユウキたちが受けてくれたとしても結局は全員が子供であることに変わりはない。
「大人に関しては……だーれも当てがないんだよなぁ」
『神の槌』の人間に声を掛けるのはダメだ。それではゾラさんやソニンさんに迷惑を掛けてしまう。そもそもついて来てくれるかも分からないしね。
「まあ、今すぐにってわけじゃないし、これから時間を掛けて信用できる人を探せばいいか」
ベッドに横になって天井を見上げる。
仕事もできるようになってきたし、『神の槌』にも少しずつお返しはできているだろうか。それにリューネさんやダリアさんにも迷惑を掛けてきたし、何かお返しがしたい気持ちもある。
「リューネさんには適当に僕が打ったものをあげれば……って、ダメだよね。ちゃんと考えなきゃ」
ちゃんと心を込めて作ったものなら売ったりしないだろう……たぶん。
どうせならダリアさんとお揃いの何かをあげてもいいかな。錬成だって見習いから卒業したわけだし、アクセサリーでもいいかも。
「……ちょっと考えておこうかな」
なんならお世話になった全員に作るのもいいかも。何せ、カマドの人たちはみんな優しい人ばかりだからね。
「ミーシュさんにカミラさんやノーアさん、ソラリアさんにサラおばちゃん、先輩たちもいるなぁ」
それぞれにあったアクセサリーや置物を作って手渡し、そして見送ってもらおう。
「……まだまだやることはたくさんあるな」
「ピキャー?」
僕が一人で考え事をしていたからか、ガーレッドが心配そうに顔を覗き込んできた。
そんなガーレッドに笑みを浮かべて優しく抱きしめる。
「大丈夫だよ、ガーレッド。お世話になってるみんなのことを考えているんだ」
「ピピー?」
「うん、本当だよ」
「……ピキャーキャー!」
どうやら安心してくれたみたいだ。
「……あれ? でも、ガーレッドが成獣になったら馬車とかいらないんじゃない? っていうか、荷物だって
……う、うん。なんか、根本的なところから考え直さないといけないかも。
「でもまあ、良い方向に考え直せるわけだし問題はないか」
「ピピキャーキャー!」
「早く成獣になるって? あはは、ありがとう。でも、無理はしなくていいからね。今すぐじゃないしさ」
「ピキャン!」
……分かったのかな、分かってくれたよね? これでまた長い眠りについちゃったら嫌なんですけど。
「えっと、本当に大丈夫だからね? 本当だよ、絶対だからね?」
「ピキャン! ピキャピキャン!」
「あっ! ちょっと、怒らないでよ! 分かった、信じるからそっぽ向かないでよ!」
あぁぁ、ガーレッドを怒らせちゃったよー!
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