スキルの勉強

 ホームズさんもせっかくだからと僕のスキルを調べる現場に立ち会いたいと言ってくれた。

 よくよく聞けばゾラさん、ソニンさん、ホームズさんは『神の槌』立ち上げ時のメンバーらしい。

 お互いのことをよく知っているからこそ任せていたし、任されたからにはやり遂げたい、その気持ちが邪魔をして意見を言えず仕舞いだったようだ。

 重要人物同士のすれ違いを修正できたことに満足しながら、僕の心は別のところに飛んでいる。

 それはもちろん、スキル以外にはあり得ない。

 気持ちここにあらずがバレたのか、ソニンが苦笑しながら口を開いた。


「早くスキルを調べたいとは思いますが、まずはスキルについて知ることから始めましょうか。スキルについて覚えていることはありますか?」

「全く覚えていません!」

「……げ、元気があってよろしい。ですが、それは元気に答えるところではありませんよ?」


 んっ? おっと、それもそうだ。どうやら自重が欠けていたようだ。


「スキルには大きく分けて三種類ございます。一つ目が一般スキル。二つ目が固有スキル。三つ目がオリジナルスキルです」

「鍛冶スキルや錬成スキルはどれになるんですか?」

「鍛冶スキルや錬成スキルは二つ目の固有スキルに該当します。……ですが、先に一般スキルから説明させてくださいね?」

「はーい!」


 うむむ、早くスキルを調べた過ぎて空回りしているようだ。自重、自重、自重!


「一般スキルは、いわば属性と言われるものです」

「属性、ですか?」

「属性には八種類あります。火、水、木、土、風、光、闇、無属性です」

「……なんか、魔法みたいですね」

「魔法は覚えているのですね」


 ……あっ、やっぱり魔法なんだ。


「これらの属性を持っていればその属性特有の魔法を使うことができます。火属性であれば指先から火を出したり、水属性であれば水を出す。使い方は色々ありますが、その属性があれば誰でも簡単に使えるのが一般スキルです」


 僕は自然と自分の手に視線を向けて閉じたり開いたりを繰り返している。

 こちらに来てから異世界転生に驚きと共に興奮していたことは事実だ。だけど、異世界特有の話は聞くが実際に体験することはなかった。

 それが、魔法という響きを聞いた瞬間に心臓が鐘を鳴らし、脈拍が加速する。

 --そうだ、これこそが異世界転生というものだ!


「そして、次が固有スキルです。先程もお伝えしましたが、鍛冶スキルや錬成スキルは固有スキルに分類されます」

「はい! ……ちなみに、それ以外にも固有スキルはあるんですか?」

「もちろんです。固有スキルは数多くありこの場で全てを説明することはできませんので特徴を説明しますね。スキルの中で固有スキルだけが修練を積むことで新しく習得することができるのです」

「一般スキルとオリジナルスキルは習得できないんですか?」

「その通りです、オリジナルスキルは後ほど説明しますが、一般スキルはその人が持つ産まれながらのスキルなので増えることもなければ、減ることもありません。ですから、火属性を持っていない人は魔法で火を出すことが一生できないのです。その場合は他の人に頼るか、火を点ける道具を使って補います。全属性を持っている人なんてほんの一握りですから、基本的には皆助け合いながら生きていますよ」


 そうなると、鍛冶スキルには火属性と土属性が必要な気がする。後、可能ならば風属性かな?

 ……うずうずしてきたなぁ。


「そして最後にオリジナルスキルですが……これは、正直よく分かっていません」

「……へっ?」

「生まれた時から備わっているという点では一般スキルと似たようなものですが、その特異性は一般スキルと比べものになりません」


 ふむふむ、ようは必殺技みたいなものだろうか。


「その特異性は様々なものに影響を及ぼします。その多くが戦闘向けのオリジナルスキルですが、中には鍛冶や錬成、それ以外に影響するオリジナルスキルもあるみたいですね」

「生産系のオリジナルスキルが欲しいですね!」

「……そ、そうですね」


 戦闘には興味がないので、切実に生産系のオリジナルスキルが欲しい。

 あっ、でも素材を探しに行くには戦闘系のオリジナルスキルも必要だろうか。

 ……それこそ助け合いだろう。素材探しは冒険者に依頼してしまえば問題なしだ。


「そもそも、オリジナルスキルを持っている奴が少ないからのう。そこはあまり期待せん方がよいぞ」

「えー、でも願うだけならいいじゃないですかー」

「それでなかったら落ち込むぞ?」

「落ち込みません! 何故なら、必殺技はあれば嬉しいですけどなければないで構いませんから。それよりも鍛冶スキルです! それに、鍛冶に使える一般スキル! そこが何よりも大事ですよね!」

「……おぉ、そうじゃなぁ」


 何故だろう、ゾラさんもソニンさんも顔が引きつっている気がする。

 ホームズさんに至っては固まっていた。

 これでも自重しているのです。自重を捨ててしまったら今すぐ調べてと声を大にして駄々をこねるだろう。


 ……だから、皆さん。引かないでいいんですよ?

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