ダンジョン・二階層から三階層
どうやら僕は、
非常に手強いダンジョンだと思っていたのだが、苦戦する事もなく順調に階層を突破してしまっている。
二階層に至っては進出してから一時間も掛からずに攻略してしまったのだから驚きだ。
もちろん、僕は何もしていない。ガーレッドやフルムだけではなく、ユウキたちが先頭に立って頑張ってくれているからだ。
エジルは不満の声をあげていたが、対魔王に備えて僕の体力を温存してくれているのだから文句は言えなかった。
「うーん、なかなか下に進む階段が見つからないなぁ」
しかし、三階層に入ってからはユウキの言葉通りで階段を見つける事ができず、足止めを食っていた。
「リューネさん。精霊たちは何も言ってこないの?」
「おかしいわねー。精霊たちも階段がないって騒いでいるのよ」
「どういう事でしょうか? まさか、ここが最下層というわけではあるまいし」
僕の問いにリューネさんは困ったように答え、マギドさんも首を捻っている。
まだ見ていないフロアがあるとはいえ、精霊でも見つけられない階段を僕たちが自力で見つけられるとは思えない。……まあ、魔獣は全く問題になっていないんだけど。
「それにしても、上級魔獣も相手にしないなんて、みんな強くなったねー」
「私の場合はジン様が作ってくれたラスフィードとバルスカイのおかげですがね」
「それは僕も同じだよ。ブレイヴソードがなかったら、さすがにきつかったかな」
「あーあ! こんな事なら私も何かジン君に作ってもらうんだったわよ!」
「いやいや、それは錬成師の分野なのでお断りします」
「ジン君は錬成師としても一流じゃないのよ! ……まあ、カズッチのおかげで私も強くなれたけどねー!」
リューネさんは僕にあっかんべーをしているが、魔法を使うための触媒にカズチが錬成した魔獣素材を使っている。
貴重な素材だったようだが、ソニンさんが餞別でくれた素材だったのでキャラバンのために使ったのだ。
なんでも、注いだ魔力が微量に増幅されるらしく、魔力を温存したり強い威力で発動する事が可能になるのだとか。
僕が作ると言ったら売るとかなんとか冗談を言っていただろうけど、カズチが作ると聞いた時は真面目に感謝の言葉を口にしていた。……この違いは何なんだろうか?
「何か特別な条件を満たさないと階段が出てこないとか、そういう事なのかな?」
「それなら何かしらヒントがありそうだけど、それも見つけられないのよねー」
「困ったなぁ。まさかいきなり足止めを食らうなんて」
「とはいえ、まだ見ていないフロアもありますし、少しずつ調べていきましょう」
僕たちが相談をしていると、奥の方へ進んでいた二匹から合図があった。
「ビギャギャー!」
「アオオオオォォン!」
「おっ! 前のフロアが片付いたみたいだね」
「僕たちもだけど、フルムとガーレッドも強くなったよね」
「貴重な魔晶石をおやつ代わりに食べさせていたのが功を奏したかな?」
「ふ、普通はしませんけどね、そんな使い方」
呆れたようにマギドさんが口にしたが、僕たちとしてはそれが魔晶石の使い方だったので特になんとも思わない。
……いや、最初の頃のユウキはもったいないと口にしていたけど、フルムのためだと思えたらすぐに気持ちを切り替えていたっけか。
そんな事を考えながら二匹が待つフロアへ向かうと、僕たちは意外なものを見つけて顔を見合わせてしまった。
「……は?」
「……なんでこんなものが?」
「……これって、あれだよね?」
「……た、立て看板?」
フロアの奥には何故か立て看板が設置されており、二匹の戦闘に巻き込まれたはずなのにどこも焦げたり欠けたりしていない。
いや、そんな事はどうでもいいとして、どうしてこんなところに立て看板があるのだろうか。
とりあえず何が書かれているのか読んでみると、僕たちはさらなる困惑と戦う事になってしまった。
「「「「……ちょっと早すぎるから、少しだけ待て?」」」」
……僕たちの攻略速度って、魔王様的にも予想外だった、とか?
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