情報交換②

 次に指名されたのはメルさんとニコラさんだ。

 二人は魔導師の寄り合いに行っていたみたいなので、何かしら情報を掴んでくれていることに期待したい。


「魔導師の寄り合いでは、本件とは少し異なる情報が入りました。一応、ご報告いたします」

「異なる情報か?」

「はい。カマドの北の森に現れた魔獣に関する情報です」


 メルさんの言葉に、その場にいた全員の表情が険しくなった。


「それってのは、ここに来る間に現れた大量の魔獣についてか? それとも、ケルベロスや箝口令が敷かれたあれか?」

「そのどちらもです、ガルさん。魔導師の寄り合いでは……というよりは、では、確実に城で何かが起きているんじゃないかと言われているようです」

「おいおい、ベルハウンドは本当に大丈夫なのかよ。政権争いが起こってるとは聞いたが、それ以上のことが起こるんじゃないだろうな」


 頭を抱えそうなヴォルドさんだが、僕たちの情報も城に関わる話なので本当に頭を抱えるかもしれない。


「それで、なんで城が魔獣に関わってるなんて噂が流れてるんだ?」

「ベルハウンドの裏門から騎士と魔導師が何度も出入りしている姿が見かけられたそうです。当初は特に気にしていなかったようですが、あまりにも頻繁に出入りがあったので後をつけた魔導師がいたらしいんですが……」

「どうしたんだ?」


 そこまで口にしてメルさんの言葉が途切れてしまった。

 引き継ぐようにニコラさんが話し始めた。


「その人、数日後に死体で発見されたんです」

「……なるほど。それで、死体の発見場所が──」

「はい。私達が通ってきた北の森です。死体は魔獣に食い荒らされていたようですが、身元はギルドカードで判明しました。そして、その体からは魔獣のものではあり得ない切り傷が僅かですが見つかったそうです」


 城の人間が北の森へ向かい何かをしていた。そこを目撃された為に殺されたと考えるのが妥当だろう。

 切り傷に関してはその何者かによっては誤算だったのかもしれない。魔獣に食い荒らされればバレないと考えたんじゃないだろうか。


「俺達はただゾラ様逹を助けに来ただけなんだがな」

「そうじゃのう。まさか、こんなところでカマドが調査している案件が出てくるとは」

「この件に関しては私が預かろうと思います。冒険者ギルド代表として、ギルドマスターに伝えなければなりませんから」

「そうだな。すまんがクリスタさんは後で二人から詳しい話を聞いといてくれ」


 もちろん、魔獣に関しても放っておける案件ではないので対処しなければならない。

 クリスタさんの負担が増えてしまうが、動いているのが冒険者ギルドということを考えれば致し方ないのかな。


「次はガルだな」

「はいよ。俺の報告は情報というより、匂いだな」

「匂い?」


 疑問の声はダリルさんからだ。僕もよく分からない発言に首を傾げている。


「昨日の襲撃では仮面の奴がたくさんいただろう。そいつらの匂いを覚えていたんだが、同じ匂いがそこかしこからしてきやがった」

「ということはやっぱり王都にいた奴が暗殺者をやってるってことか」

「そうだろうな。それによ、その匂いのもとが何処かも確認できたぞ」

「……聞きたくないが聞かなきゃいかんだろうな。何処だったんだ?」


 少しの間をおいて、ガルさんの口からはみんなが想像しているだろう場所の名前が告げられた。


「──城の方向だ」

「……はぁ、やっぱりか」

「そう溜息ばっかりつくなよ」

「変なことに足を突っ込み始めてるんだ、溜息くらい出るだろう」


 ガルさんの鼻は一級品だ。その鼻が城からと言ったのならば十中八九、王派か国家騎士派のどちらかが関わっているのだろう。もしくはその両方か。

 どちらにしても、こちらも有益な情報となった。


「それじゃあ最後は、ザリウスと小僧だな」


 ヴォルドさんの言葉を受けて、ホームズさんが口を開く。


「どちらも噂話程度の内容ですが、二点あります。一つは王派と国家騎士派が対立しており、国家騎士派の動きが活発になっているということです」

「それは、近々何かが起こるってことか?」

「その可能性がありそうです。メルさんとニコラさんの話から、国家騎士が関わっているのは間違いないかと」

「そうか。単なる政権争いだと思っていたが、なんだか面倒臭いことになってやがるな。……それで、もう一つは?」


 ここまでは三人組の冒険者から聞いた内容だ。そして次がゴーダさんから聞いた話であり、ゾラさんとソニンさんに直接繋がる可能性のある噂話。


「ゾラ様とソニン様は、おそらく城に捕らわれています」

「……その根拠は?」

「ゴーダさんからの情報、と言えばどうでしょうか?」


 どうやらゴーダさんは有名人らしい。名前が出た途端にヴォルドさんの表情が険しくなった。


「……そうか。それなら、信じるべきだな」

「まだ噂の段階とは言っていましたが、すぐにでも確証を示してくれるでしょう」


 すごい信頼感。

 ゴーダさん、マジで何者なんだろう。

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