今後の予定について

 ロットさんと会話をした後、僕たちはユウキとリューネさんの案内で色々な場所を見て回った。

 間者であるロンの襲撃があるのではないかとも思っていたのだが、そのような事も特になく楽しいものだった。


「あれ? そういえば、ポーラ騎士団長とオレリアさんって、僕たちの護衛じゃなかったっけ?」


 模擬戦を終えてから普通に訓練場を後にしてしまったが、特に何かを言われる事もなかった。

 これは仕事放棄に当たらないのだろうか。


「父上が言うには、リューネさんがいれば問題はないだろうと、その場で任務を解いていましたね」

「ユウキ君もいるし、フローラちゃんもいるから大丈夫でしょう!」

「わ、私は足を引っ張らないようにしますね」


 ……いやいや、それもどうかと思うんだが。一応、狙われているのは僕なんだけど? 僕の許可というか、そういうのは必要ないの?


「護衛して欲しかったの?」

「……そう聞かれると、邪魔だと思ってたかも」


 今後もまた模擬戦に引っ張られていく可能性を考えると、いない方が何かと楽だ。


「それに、三人と連続で模擬戦をして圧倒しちゃったジン君の護衛って言われても……ねぇ?」


 いや、ねぇ? って聞かれても。

 ……なんでユウキとフローラさんは大きく頷いているのだろう。


「実際に動いているのがエジルとはいえ、自衛ができると父上にも騎士団にも判断されたんだよ」

「国家騎士にそう判断されたのですから、これは凄い事ですよ!」

「僕自身は何もできないんだけどねー」


 …………あれ? どうしてそこで黙っちゃうの、三人とも?


「……そ、そろそろ、屋敷に戻る?」


 僕の言葉に、何故かもの凄くながーい溜息をつかれてしまい、そのまま屋敷へと戻っていった。


 ※※※※


 屋敷に戻ると、僕はすぐにカズチに声を掛けてロットさんが喜んでくれたことを伝えた。


「本当か! そっか……はぁ、安心したわぁ」

「心配だったの?」

「誰が買うのかわからない商品だったら作った後もすぐに気持ちを切り替えられるんだけど、オーダーメイドになると相手の反応がどうしても気になるんだよ」

「それじゃあ、反応が聞けて良かったね。彼女さんも嬉しそうだったよ」


 報告を終えた僕たちは、少しだけ雑談を挟んで夕食に向かう。

 その途中でユウキと合流したのだが、軽く今後の事についての話になった。


「ロンの事が片付くまではベルハウンドにいる予定なんだよね?」

「うーん、それなんだけどねぇ。観光も十分できたし、ロンに関しては迷惑を掛けそうだし、近いうちに出発するのもありかなって思ってる」

「そうなのか?」

「うん。それに、ここにいたら模擬戦にまた引っ張り出される可能性もあるから」

「それは……うん、面倒だな」


 生産職のカズチなら分かってくれるだろう。僕も生産職なのだから。


「でも、ジンなら問題ないだろう?」

「なんでそうなるの!?」

「問題から寄ってくるし、それに飛び込んでいくのもジンだろう?」

「僕は問題になりたくはないんだよ!」

「説得力なさすぎだろう?」

「それは言えてるかもね。ベルハウンドを出ること自体が問題に飛び込むことになりそうだし」

「ぐぬっ!?」


 ……ぐ、ぐうの音も出ないよ。

 食堂に到着すると、すでに他の面々も集まっており、ユージリオさんとレイネさんも席に着いている。


「遅くなりました」

「構わないよ。ユージェインとユセフもまだだしね」

「お仕事が忙しいんですか?」

「この前の間者の件も調査を進めているからね。今回の間者は、我が国と長年対立しているゼリングランドの者だというところまでは調べがついた」


 ゼリングランド……あー、そういえば、名前だけは聞いたことがあるな。

 王様を助けて応接室で話をした時にオシド近衛隊長の口から出てきた名前だ。


「恐らく、王都襲撃が成されなかった事で、この国には多くの間者が侵入しているだろう。我々もあの日から警備を強化しているが、国境線を全て強化する事は難しい。関係を良好にできれば一番なのだが、それができなければ今のような状況の繰り返しになりそうだよ」


 頭を抱えながら口にしているが、それは僕たちに教えてしまっていい内容なのだろうか。


「コープス君は当事者だからね。それに、ロンはいまだにコープス君の正体には気づいていないはずだ。気づかれてしまうと、自らの命と引き換えにでも仕掛けてくるかもしれない」


 命と引き換えにと聞いて、僕はごくりと唾を飲み込んだ。

 王都襲撃は、それだけゼリングランドが覚悟を決めて行った襲撃だったという事だろう。


「分かったかい、ジン。そういう事だから、すぐにベルハウンドを発つとか考えないでね?」

「ちょっと、ユウキ!」

「ん? それはどういう事かな、コープス君?」

「いやー、あのー、そのー……あははー」

「ジン君、詳しい話を聞かせてくれるかなー?」


 ユージリオさんだけではなく、レイネさんにまで睨まれてしまい、僕は説明後に懇々と説教をされてしまうのだった。

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