特性と錬成
「ミスリルは多くの武具に使用されている素材です。比較的錬成もしやすくて、鍛冶もしやすいので、錬成師や鍛冶師の間でも人気の高い素材です」
「へぇー、やっぱりそうなんですね」
「知っていたのですか?」
「名前だけなら!」
「……そ、そうですか」
ミスリルって色んなゲームに出てくる素材だからね。可もなく不可もなく、といった感じだろうか。
「アスクードは鉱石にしては珍しく魔素を多く含んでいる素材です」
「魔素をですか?」
「その分、とても硬く刃こぼれがほとんどないと言われています。質の良い素材として冒険者には好まれていますね」
「ですが副棟梁。魔素を多く含んでいるということは、錬成も難しいんじゃないですか?」
「カズチの言う通りです。他の鉱石に比べて錬成の難易度は上がります。ですが、冒険者にあげる武器を打つならこれ以上に良い素材はなかなか見つからないでしょうね」
ソニンさんにそこまで言わせるなんて、アスクード鉱石恐るべしだな。
となれば一つはアスクードで決まりだろう。残るエルフリムがどのような特性を持っているのかが気になるところだ。
「エルフリムは、武器として打つのはあまりオススメしませんね」
「そうなんですか?」
「武器というよりかは、魔導具を作るのに適した素材なのです」
「ま、魔導具ですか?」
たしか、クリスタさんが持っていたペンダントが魔導具だったっけ。
「エルフリムは、魔力をよく通す素材として有名なのです。ですから、魔導具や属性付与を施して錬成することが多いですね」
「そうなんですね」
そうなると自ずと今回使用する素材は決まってしまった。
ミスリルとアスクードである。
「アスクードの錬成はとても難しいので、私がやりましょうか?」
ソニンさんから嬉しい提案が口にされる──が、僕はそれを断った。
「いえ、僕がやりたいと思います」
「失敗するかもしれませんよ?」
「貴重な鉱石だってことは知ってるんですけど、やっぱり自分でやらないと経験値にならないかと思いまして」
「経験値、ですか?」
「ユウキが言ってたあれか?」
以前に魔導スキルの勉強会を行った時にユウキから口にされた経験値という概念。
あるのかないのか、証明はされていないのだが、僕はあるのではないかと思っている。
魔法でもそうだし、錬成スキルでもきっとそうだ。成功させることはもちろん大事なのだが、僕にとっては経験値を貯めることも同じくらい大事なのだ。
「鍛冶スキルは習得できましたから、今度は錬成スキルを習得する為にも、僕がやらないといけないんです」
「……えっ、ジン。お前、鍛冶スキルを習得したのか?」
「そうだけど……そっか、カズチはいなかったんだっけ」
「……マジかよ」
今日のカズチはそればっかりだね。
「カズチ。コープス君を基準にしてはいけませんよ」
「わ、分かってます」
分かってるのかよ! いやまあ、そうだけどさ!
「と、とりあえず、錬成は僕がやります! ソニンさんは横からアドバイスをいただけると助かります!」
「分かりました。錬成はすぐに始めますか?」
「はい!」
ここで時間を潰してしまうのはもったいない。
僕はすぐに返事をして、ソニンさんが準備してくれた椅子に腰掛ける。
目の前には
「リースの発動に変わりはありませんが、錬成を行う中で光属性の魔力を注ぐ量が変わります。その量を間違えてしまうと失敗してしまいますよ」
「一発勝負ですからね、慎重にやります」
鍛冶も一発勝負をやってきたのだ、錬成だってやりきってみせる。
一度深呼吸をして集中力を高めた僕は、意を決して両手を錬成布に載せてリースを発動。
慣れたもので順調に魔力が注ぐと、すぐに錬成陣から光が溢れ出した。
ここで再び深呼吸。
「……いきます」
銅の時のように分解と排除を同時進行しようかと考えたが、すぐに止める。
僕の為だけの練習であれば失敗してもいいのだが、今回はラウルさんとロワルさんの為の錬成なのだから失敗は許されない。
一つ一つのことを確実に行うことにした。
「……鍛冶と同じで、反発力が、強いですね」
「素材の反発力が強いものほど、質の高い素材だと言われています」
銅と比べて、魔力量が三倍……いや、四倍近く消費されている。
これだけでもミスリルがより上質な素材なのだと理解することができた。
そして、その分錬成に成功すれば経験値を多く貯めることができるかもしれない。
今回の錬成は、二人の為でもあるが、僕の為でもあるのだ。
分解が終わり排除に取り掛かる。ここまでは順調に終わり、錬成の大一番である浄化に取り掛かった。
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