ダンジョン五階層・VSベヒモス②
『ブモモオオオオォォオオォォッ!?』
砂煙をあげている場所に視線を向けると、どうやら右前足の外皮が破れて激痛に苛まれたようだ。
右前脚に攻撃を仕掛けていたのは――マギドさんだった。
「やるじゃないか!」
「すごいです、マギド様!」
「ひゅ~! やっるーっ!」
「……いえ、これはラスフィードとバルスカイのおかげです!」
マギドさんは元から実力の高い騎士だった。
そこに僕が渾身の二振りを贈ったことで、その実力をさらに上げたのかもしれない。
「そのままリューネの助けに行ってくれ!」
「わかりました!」
「おっ! わかってるー!」
……なるほど、そういうことか。
どうやら僕が作った武器を持っているか否かで、ベヒモスへのダメージが変わっているみたいだ。
ユウキはブレイヴソードを持っている。無属性魔法と風属性が付与されていることでベヒモスの攻撃を回避しながら的確に攻撃を加えており、切れ味抜群とあって見た目にも外皮に亀裂が広がっている。
ガーレッドとフルムは二対一の状況を上手く使って耐えながらも攻撃を加えているが、リューネさんだけはそうもいかなかった。
精霊魔法で身を守りながら攻撃を加えようとしているが、精霊魔法に攻撃魔法は存在しない。精霊が他者を攻撃することを嫌っているからだ。
普通の属性魔法も使えるが、それだけではベヒモスの外皮にダメージを与えることができていなかった。
ここにマギドさんが加われば、前衛と後衛で役割を完全に分けることができる。
元々は一人で右前足を破壊したのだから、リューネさんのサポートがあればさらに効率的に攻撃できるだろう。
「みんな、あと少しだ! 一気に行くぞ!」
「「「はい!」」」
エジルの号令に合わせて、全員が一気に動き出す。
ユウキが変わらず攻撃を加え、マギドさんとリューネさんが巧みな連携を見せてくれる。
ガーレッドとフルムは僅かに攻撃へシフトチェンジしたようで、左後ろ足から熱風と雷光が広がっていく。
『ブモオオオオッ! ブモオオオオォォオオォォッ!!』
「ははっ! 痛みを感じたのは初めてか、ベヒモス! 次は今以上の痛みを与えてやるぞ!」
『ブモモォォ……ブオオオオオオオオォォォォオオォォッ!!』
エジルの発言は事実だったのだろう。
ベヒモスは人間の言葉を理解しているかのように怒りの大咆哮をあげると、広いフロアの壁や天井が大きく震え、パラパラと欠けた破片が零れ落ちてくる。
遠く離れた壁や天井でもそうなのだから、間近で大咆哮を聞いた僕たちにも衝撃波は伝わっていた。
「結界!」
直後、リューネさんの結界魔法が僕たちを包み込んだ。
一度に四ヶ所同時に結界を顕現させたリューネさんの技量にも驚いたが、衝撃波に対して欠けてしまったものの最後まで耐え抜いてくれた。
一度にどれだけの強度の結界を展開できるんだよ、リューネさん!
「助かった!」
「でも、ごめん! これ以上の魔法は難しいかも!」
「問題ない! ここは任せて下がってください!」
「僕も問題ありません!」
エジルがお礼を口にすると、リューネさんは疲労困憊といった感じで答えた。
そこにマギドさんとユウキから声が飛び、一気呵成に攻撃を加えていく。
すると、ユウキが攻撃していた左前足から大きく血が噴き出した。
『ブモモオオオオォォッ!? ブモ、ブモモオオオオォォオオォォッ!!』
そこから数秒後にはマギドさんの双剣が右後ろ足を切り裂き、ガーレッドとフルムが左後ろ足を焼き焦がした。
『ブモオオォォォォ……オオオオオオオオォォォォッ!!』
動けなくなったベヒモスは、ついにエジルが警戒していた攻撃を繰り出そうと声をあげた。
「させるわけがないだろう?」
しかし、エジルはすでに動き出していた。
視界がブレ、ベヒモスの正面からいつの間にか頭上に飛び上がっている。
「かまいたち! からの~――斬!」
首をもたげることしかできなくなっていたベヒモス。
その首筋に大量のかまいたちを殺到させて傷を作ると、そこめがけて渾身の一振りを振り下ろした。
――ザンッ!
断末魔が聞こえてくることもなく、ベヒモスの首は一閃されて地面に転がった。
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