模擬戦・ジンVSギャレオ
さて、今の模擬戦を見て興奮している人物が二人ほどいる。
一人は次の対戦相手であるギャレオさん。
「流石でございます、コープス様。私も全力を出させていただきます!」
そして、もう一人はというと――
「おおぉぉぉっ! 凄いではないですか、ジン殿! これは私も本気でやらねば勝ち目はなさそうです! あははははっ! 今から楽しみになってきましたよ!」
……うん、ギャレオさんよりも興奮しているよ。
そのせいでギャレオさんは若干引いており、そして冷静になれたようだ。
「イスコは今の模擬戦を思い返し、自分の糧にするようにな」
「分かりました、ギャレオ先輩! ありがとうございました、コープス様!」
ギャレオさんと僕に頭を下げたイスコさんが騎士が集まっている壁際の方へ戻っていく。
そちらでは健闘虚しく敗れたイスコさんを労って他の騎士が声を掛け合っている。
ああいうのを見ると、体育会系だなと思うのと同時に、青春しているなあと思ってしまう。
僕もまだまだ青春を謳歌したい年頃だけど……いや、やりたい事をしているわけだし、青春真っ盛りなのか?
「どうかしましたか、コープス様?」
「あー、いえ。何でもありません」
「そうですか? では、次は私とです。よろしくお願いします」
軽く頭を下げたギャレオさんが中央へ歩いていくと、僕もそちらへ足を進める。
審判は変わらずオレリアさんだ。
(任せるよ、エジル)
(――はいよ。次はまあまあ楽しめそうだ)
「準備はいいみたいですね。それでは――始め!」
ギャレオさんの右手には直剣が握られている。
まずは小手調べという事だろうか、鋭くも単純な横薙ぎが迫ってくるがエジルはいとも簡単に弾き返してしまう。
それで止まるような騎士ではなく、弾かれることも予想していたのか勢いそのままに二撃目が襲い掛かってきた。
(――へえ、先読みが上手いタイプの騎士だね)
(エジルがどう動くか、予想しているって事?)
(――そういう事。こう弾くだろうから、次はこっちに動こう。その次は……って感じだね。こういう相手は動きが切れないから、持久戦になりやすい)
事実、ギャレオさんの動きは留まることを知らず、まるで踊っているかのような太刀筋で首、胸、腕や足と、様々なところを狙って飛んでくる。
その全てに対処しているエジルなのだから、こいつも先読みが上手いって事になるんだろうな。
「一太刀も届かないとは! ならば、これはどうでしょうか――ファイアランス!」
激しい剣戟を浴びせながら、ギャレオさんは炎の槍を周囲に顕現させる。その数は三本。
素早い剣戟に加えての魔法攻撃。ただでさえ隙が無いのに、そこへ更なる追撃かと、僕なら思ってしまうだろう。
(――だからさぁ。お前は自分の装備をもっと理解しておけっての)
……あ、そっか。僕の装備は銀狼刀だったっけ。
「どう防ぎますか!」
「えっと……防ぎません」
「――っ! ならば、撃たせていただきます!」
僕の言葉を挑発と取ったのか、ギャレオさんは一瞬だけ表情を険しくしたもののファイアランスを解き放った。
だが、銀狼刀には風のヴェールが付与されている。
僕に迫ってきた炎の槍の全てが、届く前に跡形もなく消えてしまった。
「んなあっ!?」
(――隙ありだな)
「うおっ!!」
――キンッ!
(――……へぇ、まだやれるみたいだ)
なんと、ギャレオさんは咄嗟に腰の後ろに下げていた短剣を左手で抜いて、エジルの攻撃を防いで見せた。
驚きの反射神経だが、もしかするとこれがギャレオさんの強い部分なのかもしれない。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……次は、決めます!」
「二刀流ですか?」
「まだ、粗削りですけどね!」
リーチの異なる直剣と短剣を用いての連撃は、先ほどよりも苛烈な攻めになっている。
しかし、粗削りと自分でも言っている通り、このままでは魔法を挟む余裕がないように見えた。
それは僕だけではなく、エジルも同様なのだろう。
先ほどよりも余裕を感じる雰囲気から、一気に視界がブレた。
(――終わりにしようか!)
「消え――はっ!?」
気づいた時には遅かった。
銀狼刀には風のヴェールとは違いもう一つの付与がある。
火属性による熱傷効果なのだが、これが単に熱傷を与えるだけのものではない。
ゾラさんが打ったからっていうのもあると思うけど、その効果は上級魔獣にもダメージを与えるような代物だ。
結果、エジルは全く同じ箇所に刀身をぶつけており、いつの間にかに直剣の方が焼き切れていたのだ。
そうなると、次に訪れる結末としては――
「……参りました」
またしても首のところで剣を寸止めしたエジル――もとい僕の勝ちとなった。
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