娯楽とは

 小腹も満たされたことで、お昼時の五の鐘が鳴ったものの、僕たちはそのまま行動することにした。

 予定でいえば娯楽を探すことになっているのだが、どのようなものがあるのだろうか。

 そもそも、ユウキとフローラさんはそのような場所を知っているのかも分からない。


「この後は娯楽を探すんですよね?」

「そうなんだけど……」

「あっ、ユウキは分からないんだね」

「あまり遊ぶことにお金を使ったことがなくてね」


 色々な依頼をこなし、ギルドや冒険者からも少しずつ信頼を得ているユウキだから、少しは懐も潤っているだろうけど、そこはしっかりと管理しているようだ。

 やっぱり、できる子は違うんだねぇ。


「たまには遊ばねえと、気が滅入っちまうぞ?」

「……悪い大人の例ですね」

「誰が悪い大人だ!」


 冗談半分、本気半分の意見だったのだが、真面目にとらえられたようだ。

 それにしても、ユウキが知らないのでは娯楽を探しようがない。どうしたものか。


「でしたら、私が息抜きをしているところに行きませんか?」


 そこに声を掛けてきたのはフローラさんだ。


「何処かあるんですか?」

「はい。お金も掛からず、とても良い気分転換ができる場所です」

「面白そうですね、僕は行ってみたいです」

「他に当てもないし、そうするか」

「言い出しっぺのヴォルドさんが何も考えてないのがいけないんですよ?」

「俺の行く場所だと、大量の金が──」

「はいはい、さっさと行きましょー!」


 この人は子供の目の前に何を言おうとしたのだろうか! 僕の勘違いならいいけど、もし大人のお店とかならヴォルドさんの方が非常識だよ!

 この人、本当にみんなから信頼されているのだろうか。今日一日だけで、不安になってきたよ。


「なんだ、何を考えていたんだ?」

「なんでもありませんよ!」


 首を傾げるヴォルドさんは置いておき、僕はフローラさんに案内をお願いする。

 笑みを浮かべながら歩き出したフローラさんについていくと、向かった先は僕が行ったことのなかった東地区。

 何があるのだろうかと考えていると、その答えが向こうから駆け足でやって来た。


「あー! フローラおねえちゃんだ!」

「ほんとうだ!」

「お、お久しぶりです、フローラさん」

「みんな、久しぶりだね!」


 駆け寄ってきたのは、僕よりも小さな子供たち。同い年くらいの子もいるのだが、それでも幼いことに変わりはない。

 周囲に目を向けるとあまり栄えていない区画のようで、遠くの方から喧騒がわずかながら聞こえてくるくらいだ。

 子供たちがやって来た先に目を向けると、少しボロボロになった教会が目に入った。


「フローラさん、この子たちは?」

「教会の神父様がお世話をしている子たちです」

「教会の神父様が?」

「あー、ジンはそのことも知らないのか」


 頭を掻きながらヴォルドさんが呟く。

 僕は知らない。だけれど、想像はついている。


「この子たちは、教会で保護している孤児なのです」

「すげー! ほんもののぼうけんしゃだー!」

「こら! フローラさんも冒険者だよ!」

「でもでも、フローラおねえちゃんはおおきくないよ?」

「あのおっちゃん、おおきいな!」

「あれかわいい!」

「ピキャー?」


 どんどんと子供たちが増えてきたのでどうしたものかと思っていると、教会の方から神父と思われる男性が駆けてきた。


「フローラさん、すみません。子供たちがご迷惑を」

「ご迷惑だなんて、そんなことありませんよ」

「こらこら、みんなは教会に戻りなさい」

「俺がつれていきますね」

「助かります、シル」


 同い年くらいの男の子はシルと呼ばれていた。

 シルくんは年長さんなのか、神父様に頼られているようだ。


「それで、今日はどうしたのですか? お客様をお連れのようですが?」

「私が息抜きできる場所を教えに来たんです」

「……えっ?」


 まあ、そうでしょうとも。いきなりそんな風に言われても伝わりませんよね。

 ユウキは神父様と面識があるのか、軽く挨拶を交わしたあとに事情を説明してくれた。

 話を聞くと、神父様は笑顔で僕たちを迎え入れてくれた。


「もし、時間があれば子供たちの相手をしてあげてください。みんなもきっと喜びますから」

「ですって、ヴォルドさん」

「なんで俺に言うんだ?」

「だって、この中では一番の強面ですから。遠慮しないようにと思って」

「ガキの相手だろ? 慣れたもんだよ」

「そうなんですか?」


 ちょっとした疑問を感じつつ、僕たちは神父様の案内で教会へと向かった。



 ※※※※

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