閑話:マリベル・ヴィヴィルド

 いやはや、ケヒートさんから護衛依頼も久しぶりだったけど、今回の依頼も楽して稼げそうだなー!

 ラドワニまでってのがちょっとだけ面倒臭いけど、野営さえ我慢すれば道中の魔獣も下級ばっかりだし余裕余裕!


「私にはハピーもいるもんねー」

「ブルヒヒヒンッ!」


 うふふ、本当に可愛くて手触りの良いモフモフなんだからー!

 後はだーれが一緒に行くかなんだけど、そこはケヒートさんところの新人君が知り合いに頼むとかどうとか。

 ってことは、下級かよくて中級だろうなぁ。

 ……うーん、面倒臭いかも!

 でもまあ、使えなければ私がちゃちゃっとやって終わらせるし、使えるならこき使ってみようではないか。

 というわけで――


「やっほー!」

「遅いですよ、マリベル。待ち合わせ場所を指定したのはあなたでしょう?」


 か・お・あ・わ・せ!

 初めての相手といきなり護衛依頼だなんて面倒臭いことこの上ないもの、一度顔を合わせて実力さえ把握できていれば楽ができるってものだわねー。

 ……うん、大正解!

 ユウキ君って下級冒険者は相当使えるじゃないの! この子、実力だけなら中級冒険者並にあるんじゃないの? ってか、なんで下級なの?

 フローラちゃんも魔法をスムーズに使えるみたいだし、何より回復魔法は貴重よね。

 ……これ、絶対に冒険者ギルドに進言した方がいいわね。カマドに戻ってきたら推薦でもしておきますか。


 それにしても、ブルベアーよ、ブルベアー! 高級肉が手に入ったのはラッキーだったわ!

 それもジン君が魔法鞄マジックパックを持っているとは思わなかったわ! ケヒートさんが持っていなかったことも予想外だったけど、終わりよければすべてよしよね!

 自分用とハピー用! 後は売ってお金にして、とりあえず貯金かなー。


「ハピーもそろそろゆっくりしたいでしょ?」

「ブルフンッ!」

「まだやれるって? でも、もう年じゃないのかな?」

「ブルフッ! ブルフフンッ!」

「あー、分かった、分かったから怒らないでよ!」


 ハピーはまだやれると言うけど……出会った頃よりも速度だって遅くなっているし、食べる量も減っている気がする。

 霊獣に詳しい人に診てもらったけど、病気とかでもないってことだったから、加齢じゃないかって思ったんだけど……でも、霊獣の寿命ってとても長いって聞いたこともあるんだよねー。

 私と出会う前にどれだけの年数が経っているかは分からないけど、加齢じゃなかったら何なんだろう。

 ジン君にユウキ君も霊獣と契約しているから何か知っているかな? でも幼獣だったしなー。

 ……まあ、機会があれば聞いてみようかな。それにハピーもやれるって言うから無理やり休ませるわけにもいかないか。


「あんまり無理はしないでよね、ハピー」

「ブルヒンッ! ブルッフフーッ!」


 任せろだって? ふふ、可愛い奴め!

 首の方に顔を埋めながら馬車を馬を借りる為に貸し馬車屋へと向かったんだけど……あー、もう、やっぱりいたわ。


「おう、マリベルではないか、どうしたのじゃ?」

「……暇なんですか、ゴルドゥフさん」

「楽しそうな依頼もなかったからのう。ここで護衛依頼をしていた方が身になるわい」


 身になるわいって、ただボーっとしているだけじゃないですか。


「主人はいますか?」

「屋敷にいるぞ。それで、護衛依頼でも受けたのか?」

「はい。ケヒートさんから頼まれて、東のラドワニとラトワカンまで」

「ほほう、ソニンからか。……おい、マリベル。その依頼はジンも一緒に行くのか?」


 んっ? なんでここでジン君の名前が出てくるんだろう。

 ……あぁ、王都に行った時にゴルドゥフさんも行っていたんだっけ。


「行きますよ。確かジン君に魔獣素材の取り方を教える為にわざわざラドワニとラトワカンまで行くって言ってましたし」

「……ほほう、そうかそうか」


 ……なんだろう、とても嫌な予感しかしないんだけど。


「その依頼、儂が御者をやらせてもらおう!」

「お断りします!」

「お主に断る権利はないぞ、マリベル」

「なんでですか! 私が馬車を借りに来たんですけど!」


 この人は、いったい何を企んでるんですかね!

 私にはゴルドゥフさんを雇うお金なんてないし、その為にケヒートさんからお金を請求するなんてできないからね!


「そんなお金ありませんよ!」

「安心せい、これは儂が楽しみたいだけじゃから金なんぞいらんわい」

「問題はお金じゃなかったか!」


 あー、もう! めちゃくちゃだな、この人は!


「それではさっさと馬車を借りて来るぞ」

「な、なんでゴルドゥフさんが仕切ってるんですか!」

「なんなら馬車の代金も儂が出してやるぞ? 馬車代と御者代が浮けば、十分に儲けが出るのではないか?」

「……し、仕方ないですね。今回だけですよー?」


 ま、まあ、お金が浮くならいいんじゃないかしら?

 その分、依頼料に上乗せしてもらえるようケヒートさんに交渉もできるわけだし?


「……本当に、簡単な奴じゃのう」

「何か言いましたか、ゴルドゥフさん?」

「何も言っておらんわい」


 さーて、早速馬車を借りて明日に備えなきゃね!


 ※※※※

 宣伝マラソン五日目です!

 本日2020/02/05(水)が『カンスト』3巻の発売日ですよ! やっほーい!!

 これも皆様の応援のおかげでございます、本当にありがとうございます!

 そして、本日はドラゴンノベルスが創刊してちょうど一周年となります。

 このタイミングで3巻を出させていただけることとなり、本当にありがたく思っております!

 web版とは大きく違うストーリーも含まれておりますので、ぜひ書籍版を手に取っていただけると幸いです、よろしくお願いいたします!


『異世界転生して生産スキルのカンスト目指します!3』

 ■作者:渡琉兎

 ■イラスト:椎名優先生

 ■出版社:KADOKAWA(レーベル:ドラゴンノベルス)

 ■発売日:2020/02/05(水)

 ■ISBN:9784040734934

 ■価格:1,300(税抜)

 ■B6判

 ※※※※

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