スキル鑑定
本部に戻ったその足でゾラさんの私室へ向かった。
僕の退院について聞いていたのだろう、部屋の中にはゾラさんはもちろん、ソニンさんも待っていてくれた。
僕とホームズさん、ガーレッドを加えて四人と一匹になった部屋の中で、まずは僕の退院祝いが告げられた。
「まさかこんな短い期間に二回も入院するとはのう」
「僕も入院したくてしたんじゃないんですよ」
「分かっておるわい。まあ、無事で何よりじゃ」
「その通りですね。本当に退院おめでとうございます」
「ありがとうございます」
そして、ここからが本題のようだ。
前回のケルベロス事件の後、スキルを調べた時に英雄の器についての情報が更新されていた。
今回も同様なことが起こっている可能性があり、それを調べるために集まったのだ。
「鍛冶と錬成スキルは、今回もないだろうなぁ」
「小僧の関心はやはりそこかい」
「そりゃそうですよ! でも、錬成も上手くいってなかったですし、仕方ないですよね。英雄の器について調べるのと、後は一般スキルが上がっていれば御の字ですね」
「コープスくんは、また面白い言葉を使いますね」
「一般スキルは上がっているんじゃないですかね。今回も魔法はだいぶ使っていましたから」
いや、使いたくて使ったんじゃないんだけど。
上がっていれば嬉しいので何も言いませんけどね。
準備された鑑定水晶に両手を広げで触れる。
この光景も見慣れてきたなー、なんて思っていると鑑定は終了した。
やはりゾラさんやソニンさんは呆気にとられているようだけど、もうそろそろ慣れてほしいものだ。
「……これは、何じゃ?」
「……何でしょう?」
「な、何があったのですか?」
ホームズさんの頭には僕の情報は入ってこないので二人の困惑の理由が分かっていない。
……これ、多分エジルのせいだよね。
「憑依、じゃと?」
「前英雄の器所持者を憑依させるって、話に聞いてたやつですよね?」
そこまで聞いたホームズさんも合点がいったようだ。
「あぁ、あの時のことが能力に反映されたのですね」
「それと、まだ説明書きが続いてるみたい。今回は初めてだったから時間が短かったけど、回数を重ねることで制限時間も伸びるみたいだね」
「回数を重ねるって、それはあまりよろしくないのでは?」
「……そうですよねー、危険な場所に行かないと絶対に憑依なんてさせたくないですしー」
エジルには悪いけど、僕は積極的に危険な場所に行くつもりなんてないのだ。
こんなスキルの効果が出たからって、使う機会はそれこそほとんどないだろう。
それよりも一般スキルである。
「今回は水属性と無属性がランクアップしたみたい。ランク三だって」
「……は、早いですね」
「他の属性は……あれ?」
僕としては意外な属性がランクアップしていたので驚いてしまった。
「光属性が、アップしてる?」
「本当じゃのう、二になっている」
「今回の事件の時に使われたのですか?」
「いや、使ってません。錬成の時にしか……」
えっ、もしかしてあれだけの錬成で光属性のランクがアップしたのか?
「普通では考えられませんが、これも英雄の器が関係しているのでしょうか?」
「本来のスキルの十倍の効果になるわけじゃからのう。成長も似たような効果が現れているのかもしれんの」
その可能性は高いかもしれない。
それに錬成は鍛冶と比べて成果は低かったが、一般的な評価でいえば中の上、新人でいえば破格の成果である。
素材としても十分使える素材に仕上がっていたので一から二にランクアップするには十分な成果だったのかもしれない。
「それなら火属性も上がってくれてよかったのにな。鍛冶に使えるから」
「今回は
「……それもそうですね」
水属性も何かと使えるだろうし、無属性は筋力がまだ少ない僕にとっては重要な属性である。どの属性もランクアップするに越したことはないので文句を言っても仕方ないのだ。
「それにしても、小僧。気づいておらんのか?」
「えっ、何にですか?」
他に気にするところなんてあっただろうか。
「固有スキルじゃよ」
「固有……スキル? ……まさか!」
慌てて記憶を遡る。
固有スキルを習得出来るなんて思ってもいなかったから意識から排除していたよ。
そして、意外というか、当然というか、理に適った固有スキルの習得を目にしたのだった。
「……まさか、先にこっちですか!」
「何の固有スキルなんですか?」
興味津々のホームズさん。
ゾラさんとソニンさんは僕を見て呆れ顔である。
「――魔導スキル、習得しちゃいました!」
……あれだけ魔法を乱発したらそうなるよね!
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